バイサーに映る情報は全て真っ赤。
残弾:0
バッテリーの残り:2%
完全に詰んじまった。
どう考えても、目の前の「敵」は倒せねぇなぁ…
せめて一発殴るパワーでも残ってりゃよかったが、パワーアシストスーツもバッテリー切れでそれもできない。
-倉庫番の「おっさん」の言うこと聞いて、体力は付けておいた方がよかったかもなぁ-
今さらながらそんなことを考えていたオレの目の前に、「敵」が迫ってくる。
そして腕を振り上げて、オレに殴りかかってこようとする。
残念だが今のオレには、それを弾き返すほどの力は残ってない。
『もはやこれまで』と、思わず目を閉じてその瞬間を待つ…
が、いつまで待ってもオレを殴りつける衝撃が襲ってこない。
目を開けると、オレの目の前に立ち塞がって「敵」の一撃を受け止める、パワーアシストスーツの姿があった。
「待たせたな、追加納品だぜ」
そいつは「敵」の一撃を片腕で抑えながらそう言った。
「…おっさん」
オレは思わず口を開く。
「ほれ、これがないとヤバいんだろ?倉庫から持ってきてやったぜ」
おっさんはそう言いながら、空いている片腕から予備のバッテリーを放り投げた。
「で?何分あればいい?」
バッテリーを受け取ったオレに、おっさんが聞いてくる。
「あ…あぁ、3分もあれば」
オレが答えると、
「よし、じゃあそんだけ持ち堪えりゃいいんだな」
と、見えないはずのバイサーの向こうでニヤリと笑ったように見えた。
とは言ったものの。
「3分…ね」
俺は呟く。
時間に関係なく、あと一発殴られる分くらいしか耐えられねえな…
-これだったら、チャカの使い方くらい教わっときゃよかったかな-
そんなことを考えたが、いまさらだと少し後悔した。
だが「敵」は、そんなの知ったことじゃない。
また腕を振り上げて、俺を殴りかかりにくる。
「…悪りいな、ちょっとダメそうだわ」
そう呟きながら「敵」の一撃を受けようと身構えた次の瞬間。
目の前の「敵」が吹っ飛んだ。
「ようおっさん。待たせたな」
あいつがそう言いながら、構えた銃を下ろしながらそう言った。
「早くねえか?」
俺が聞くと、
「おっさんが辛そうだったから、急ぎで二発分だけ充電した」
と、ニヤリと笑いながら答えた。
「オレはあと一発しか撃てない。おっさんは何発殴れる?」
「…あと一発かな」
「じゃあオレが一発撃つからおっさんは一発殴る。それでいいか?」
「年寄りに無理させんなよ」
「まぁまぁ、ほんじゃ一発」
「ぶん殴りに行くかあ!」