「ご主人様、起床の時間です」
朝7時。
『バディ』が俺を起こしにきた。
「あぁ、ありがとう。今日も正確だね」
「それが私の役目ですから」
『バディ』は俺のその言葉に対して「それが当たり前」であるかのように、特に感情のこもっていない言葉を返した。
まぁ、変に感情がこもっていない方が、こちらとしても扱いやすくて助かるのだが…
所詮は『バディ』なのだから。
『バディ』。
正式名は『サポート・バディ』。
数年前から出回り始めた、何かと忙しい者のために用意された「個人サポート」を役目とした存在。
昔でいうところの「お手伝いさん」のようなものだ。
『バディ』は勤勉で正確な仕事、そして一切余計なことを言ったり考えたりせず、自身に命じられたことだけを忠実にこなす。
『バディ』は比較的安価で手に入れることができるので、中には「仕事用」「家事用」と言った感じで、用途に応じて複数の『バディ』を持っている奴もいる。
最近はそういう連中が増えてきて『バディ』の調達に難儀しているとも聞くが、俺は特にそれほど忙しいわけではないので、「家事用」のバディだけを所持している。
掃除に洗濯、買い出しなどなど。
俺が仕事に行っている間、『バディ』は家の仕事を全て片付けてくれる。
それだけでも俺にとっては大助かりだ。
帰宅後、その日『バディ』がしたことの報告を受ける。
今日は「『ある施設から数年ぶりに出てきた者』が、何の役にも立たなさそうな物を強引に売りに来た」そうだが、「警察を呼んでお引き取り願った」とのことだ。
「そうか、よくやったね」
俺がねぎらいの言葉をかけると、
「ご主人様にそれを買うよう、命令されていませんでしたので」
そんな『バディ』らしい返事が返ってきたが、どことなく言葉の端に「頑張りました」といった雰囲気が少し感じられて、微笑ましい気分になった。
そんなやりとりを交わしているうちに、寝る時間になった。
「じゃあ、そろそろ寝るかな。君もいい感じで切り上げて、明日に備えるように。明日は6時半に起こして」
俺は『バディ』にそう言うと、寝室に向かった。
「かしこまりました。それではおやすみなさいませ、ご主人様」
と、『バディ」は相変わらず感情のこもっていない言葉を返してきた。
…きっと『バディ』は残りの家事を片づけて、今から遅めの食事を摂って明日に備えるんだろうなぁ…
俺はそんなことを考えながら、明日のスケジュールをコピーしながらスリープモードに移行した。