目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第32話 互いの戦慄

「──くっ! 攻撃が全然届かないね!!」


 ボクはユウカ。

 ここまでの攻防を通し、思うように攻めあぐねているのをそう呟いてしまっていた。

 一人は空中を自由自在に移動して、もう一人は防御の魔法を使いこなしている。

 遠距離攻撃手段が飛ぶ斬撃くらいしかないボクにとっては、この二人の相手はかなりキツイ状態だった。


 過去にも、飛行する魔物の討伐は行ってはいる。

 だから相手が飛ぶ分には、そういう能力持ちもいるだろうと割り切れる事は出来るのだが……魔物に比べて、空中の彼は回避能力がかなり高い!!

 しかも突撃ではなく、その距離を維持したまま充実した武装で攻撃をしてくるのがとても嫌らしい!


 対して、地上にいる少女の方!

 彼女に対しては、おそらく魔法特化の使い手だろうとは見ただけで予想出来るけど……防御が異様に高い!!

 こちらの飛ぶ斬撃をバリアのようなもので1発も通さず防いでくる!

 おそらく攻撃を通すには、接近戦を挑んで翻弄するしか無いと思われるが……ボクが近づこうとすると、途端に一定の距離を保とうとしてくる。

 これでは決め手が一向に放てない! こちらもなかなかの実力者という事が窺える……!


 そもそもボク自身、“思考する相手”との戦いの経験が浅いと痛感する!

 自分と堂々の思考能力を持つ人間相手は、国の兵士との模擬戦くらいしかなかった。

 普段は比較的理性の無い魔物相手が多く、比較的こちらの攻撃が当たる事前提の戦いしかしてこなかったツケが、この場になってやって来ていた!

 思考する人間同士の戦いの厄介さ……その困難さを、嫌と言うほど実感し続けていた。


「これが、ボクと同じ異世界のセーブポイント使用者……! まったく、実力者揃いで困ってしまうね……!!」


 ある意味、このメンバーを選んだソラリス様の慧眼が冴えていると言えるのだろう。

 目の前の二人とも、自身とほぼ同等の実力者と言えそうな強さだった。

 そんな二人を同時に相手しなくてはならない、その事実にボクは多少冷や汗を掻いていた……


 ☆★☆


「──くそう! なんだあの女どもは!? 私がここまで攻めあぐねているなど!!」


 私はメタルマン。

 地上にいる黄金鎧の女と、フリフリした姿をした少女を見て、そんな愚痴を吐いてしまっていた。

 というか、本当になんなんだこいつらは。

 同じセーブポイントの使用者とは聞いてはいたが、パワードスーツも無しにここまで戦えているのか!?


 私はてっきり、特にあの黄金鎧の女の方は、あの鎧がパワードスーツになっていると思ったのだ。

 だから戦闘中解析を掛けていたのだが……まったくのシロ。

 というか以前、私が解体した鎧とまったく同じだったため、本当になんの特殊効果も無いただの金属部品だという事がよく分かった。

 つまり、飛ぶ光の斬撃や私のミサイルなどを素で斬り落として行っているのは、ほぼ本人の実力という事になるが……嘘だろう?


 そして、もう一人の少女の方。

 フリフリ衣装で、もう防御とか何も考えていないのでは無いか? と言いたくなるような戦場に似つかわしく無い格好をしている方に対しては……予想に反して、それこそ防御が硬かった。

 私のメイン火力であるビーム砲すら、透明なバリアのようなものを展開して防いでいた。

 おそらく小型の武装を隠し持ってると思って、こちらも解析を掛けた結果……こっちもシロ。機械のキの字も無かった。

 いや流石にそれは嘘だろう!? 素手で透明なバリア出せるか!? そう叫び出したい程だった。


 ……つまり。認めたくは無いが、これが“魔法”というものなのだろう。

 そう、納得せざるを得ない状況になっていた。


 まだカイトの世界は、化石のような発展レベルだったが、技術形態は私の世界にそっくりだった。

 ソラというイレギュラーすぎる少女の事をガン無視すれば、まだ納得出来る範疇だったのだ。

 それが、ここに来て“魔法”という科学に喧嘩を撃ってるような能力を持った女達……

 理解はしたく無いが、これこそ“異世界”という別世界の力の証明になっているのだろう。


「まったく、インベーダーでさえ手を焼いているのに……異世界にこんな奴らもいるとはな……!!」


 私自身、母艦のエースだという自負はある。

 それなのに、そのエースである自分が攻めあぐねているこの状況。総合的には、ほぼ拮抗するかもしれない二人に対して、恐れという恐怖が湧いて来ていた。


 もしこいつらが、私の世界にやって来て暴れてしまったら……!!

 そんな事を考えただけでも恐ろしい!


 少なくとも、ここで釘を差しておくべきだ。

 私の世界に襲いにかかろうとしたら、痛い目を見るぞという認識を、与える為に……!!

 もはや喧嘩という元々のこの状況の建前を捨てて、私は全力で目の前の二人に対して攻撃を仕掛けるのであった……


 ☆★☆


「うわーん!! この二人強いですー!? 異世界人ってこんな人達ばっかなの!?」


 私はマホ。

 つい目の前で飛ぶ斬撃やらビームやら撃ってくる二人に対して、そんな言葉を叫んでいた。

 さっきからそれらをバリアを中心に貼って防いでいるけど、バリアだってただじゃ無い。

 こうしている間にも、魔力がどんどん減って行っている! 私の世界の悪の組織相手にもバリアを張る事はよくあったけど、こんなに一気に魔力が減って行くのは経験した事がない!!


 というか、私のお菓子という甘味の楽しみを奪ったあの女の人。

 とっても綺麗ですけど、戦い方が普通に信じられないんですけど。

 なんですか、私の攻撃魔法を切り裂くって。飛ぶ斬撃って。

 いや、飛ぶ斬撃の方は分かりますよ? 私の魔力とは違うっぽいですけど、微かに近い同じようなものが込められているのが感じるので、アレも魔法の一種なんだと分かります。

 けど、攻撃を切り裂く方は知りません。あれ素の実力です。魔力使ってないっぽいです。

 私自身、攻撃魔法は苦手だとは思っていますが、それでも魔法を切り裂くなんて、あり得ないと思います。

 私自身魔法に頼った戦い方をしているからこそ、魔法に頼らない技術で戦っているというのが信じられません。


 そういう意味では、空中のあの人も信じられないですね。

 元々、お兄さんの家で会った時は態度が横暴だなあとは思っていましたけど、あちらこそ剣の女の人より信じられません。

 なんてったって、魔力ゼロです。あの人、一切魔法に頼ってません。

 私の世界でも、架空のお話でロボットや機械で戦うー、と言った創作はあるし、ヴィランが似たような技術を使って戦ってくる事はあったので、そこまで意外と思うほどではないですが……

 それでも、空を飛ぶ事を初め、あの高火力なミサイルやビーム、あれを大量に搭載しているという桁違いな技術に大いに驚きです。

 明らかに、私の世界の科学技術だけでは説明出来ない程の高度な技術があのスーツには詰め込まれています。


「うう、正直ワクワクしないかで言ったら嘘にはなるけど……でもそんな事言ってる場合じゃない!!」


 少なくとも、私の楽しみを奪った事や、あの横暴な態度を取り続けている人に対しては、反省して貰わないと!!

 そう誓って、私はより防御の魔法の精度を高めて行くのだった……


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?