「お前ら、どんだけやるつもりだったんだよ!? もうあそこの廃墟ボロボロで、危うく帰れなくなるところだったじゃねーか!?」
ボクはユウカ。
あれから時間が経って、目も耳もある程度見える様になって、聞こえる様に戻っていた。
そんなボク達に対して、カイトはあろう事か全員正座する様指示して、ボク達は彼の前で小さく縮こまっていた。
カイト曰く、ソラ様がマーカーに指定した廃墟の扉が先ほどの大技のぶつかり合いで大きく破損していたらしく、このままだと修復不可で危うくこの世界に閉じ込められる恐れがあったとか。
それは確かにやり過ぎた、とボク達は反省していた……
「ったく、俺とソラに迷惑がどうとか言ってたらしいけどなあ。言っておくけど、全員既に迷惑掛けているから!! どいつもこいつも50歩100歩だから!! お前ら互いに人の事言えねえからな!?」
「ちょっと待ってくれ、ボクもかい!?」
「ユウカ……普段のお前はそれほどでもないんだが、今回の喧嘩の余波はちょっと……」
そう言ったカイトは、目をそらして額に手を当てていた。
ガーンッ。
「おい、私はそんなに迷惑かけてなぞ……!!」
「うっせえ!? お前はその態度が一番問題なんだよ!! 自覚しろや!!」
「えー、私はそんなに!?」
「お前は遊園地以外に、スカイツリーやらアイドルのコンサートやら買い過ぎだ!! ソラに頼んで勝手に予約してるの知ってるんだからな!!」
「バレてる!?」
そうして、ボク以外にもカイトの怒涛のツッコミに、反論出来ないでいる二人がいた。
「あっはは!! 全員しょぼくれてるわねー! ざまあみなさい、ちゃんと己のやった事を振り返るよーに……って、いひゃいっいひゃいっいひゃい?!」
「お、ま、え、が!! 普段一番迷惑かけてんだよ幼女女神がああああああああッ!!」
そうして、ボク達を笑おうとしたソラ様に対しても、カイトのグリグリが炸裂していた。
「──というわけで、喧嘩両成敗。お前ら散々暴れてスッキリしただろ。これでもう、互いの遺恨は無くしたろ? 無くした事にしろ、な? ……よし、帰るぞー」
夜ご飯作ってやるから、大人しくしろよ。そう言って、カイトは振り返って彼の家につながる場所に向かって行った。
ソラ様もグリグリされた箇所を押さえながら、涙目で立ち上がり。
「あー、痛かった……まあ、さっきの戦いは面白かったわよ? けど、これでおしまい。──あなた達は、私が選んだ人材なのだから、ちゃんと仲良くしてね?」
それじゃあ、落ち着いたら帰って来てねー。
そう言って、ソラ様もカイトを追って帰ってしまった。
『…………』
残されたのは、ボク達3人のみ。
とりあえず、正座をやめて立ち上がってみる。
「……あの」
「……ふん」
「……むう」
残りの二人は、不満げな表情をしたままだった。
しかし、ひとまずは大きくぶつかり合った事で、初対面の時よりは互いに顔が見れていると思う。
「……改めて聞くけどさ。君たちは、カイト達に世話になって、感謝してるんだよね?」
「……ああ。まあ、そうだな」
「うん、そうだねー」
ボクの問いに、二人はそう正直に言ってくれた。
「……ボクも、君たちの事はまだよく知らない。例え信頼しあえ、って言われても、すぐには信用出来ないと思う」
「当然だな」
「まあ、そうだねー」
だったら……
「──ボク達は、“互いじゃなくて、カイト達の事を信頼するのは如何だろう?” お互いが直接信頼し合えなくても、カイトを信頼するもの同士として。……それなら、ある程度は信用出来ないかい」
「……ほう」
「おー……」
つまり、カイトという後ろ盾を見て信用するやり方。
互いを直接ではなく、彼らを信じるもの同士として、彼らを通して協力し合う程度の関係になるのだ。
「……ま、それならまだ納得は出来るか」
「うん、しょうがない。いいよ、それで」
「ああ、そうしてくれると、ありがたい」
これで、ボク達自身、納得出来る関係の構築が完了した。
「──改めて自己紹介だ。ボクは勇者。“ユーカ・ラ・スティアーラ”。ユウカって呼んでくれ」
「──私は、“メタルマン”。見ての通り、パワードスーツを装着している」
「──私は“マホ”って言います! 魔法少女です! よろしくね、二人とも!」
こうして、自己紹介は完了した。
あとは……
「……君の大切にしているお菓子を、食べて済まなかった」
「……勝手に片付けちゃって、ごめんなさい」
「……鎧を素材にして、悪かった」
ボク達の、今回の騒動の原因となった事を、全員謝った。
これでようやく、互いの事を少しは見れる様になったかもしれない。
「……とは言ったものの、蒸し返す様で悪いが……」
すると、メタルマンがそう言い出して。
「──原因、あの少女だよな。ソラという少女の、管理不足」
「「それは、そう」」
うん、とボク達は全員頷いていた。
ソラ様に謝っては貰ったけれど、それはそれ。
「……まあ、本質は互いを信頼出来ない相手、というものだったから、これはこれで必要な事だったと思うよ?」
「まあ、スッキリはしましたねー」
「ふん。まあ、信頼出来ないと言い出したのは俺だから仕方ない、か……」
よし、それじゃあ……
「カイトが夜ご飯を作ってくれるらしいし、早速戻ろうか」
「ああ、そうだな」
「賛成ー!」
こうしてボク達にとって初めての、カイト達以外との異世界人との交流は、最終的にいいところに着地出来たのだった……