「くっそ! “エア・フロートシューズ”!!」
俺は、以前メタルマンから貰った浮遊するブーツを起動する。
それで空中で体勢を立て直し、周囲を一瞬で確認。
一番近いのは……!
「ショー!! つかまれ!」
「カイトのにーちゃん!?」
俺は近くにいたショー君を抱え込んで、キャッチする。
あとは、シルフィとDr.ケミカ……!!
二人の位置は!?
「あっぶなあ!? “ワイヤー・ショット!!”」
その声と共に、シルフィの腕に取り付けた装置から、フックが射出される。
それは壁にめり込んで、しっかり固定される。
「もういっちょ!! “ワイヤー・ショット!!”」
「おおっと! 悪いねえ!」
そして、もう片方の腕から更にフックを射出し、Dr.ケミカの白衣にひっかける。
そしてワイヤーを巻き取って、Dr.ケミカを引き寄せている。
Dr.ケミカを抱えたシルフィは、そのままワイヤーに引かれるまま壁にダンッ! っと着地して、ぶら下がっていた。
「こっちは無事よ!!」
「よっし! なんとか全員助かったか……!」
とりあえず、空中から投げ出される状況からは解放された。
しかし……!
【敵、一体消失。残りを撃ち落とします】
『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』
「っ!! とにかく一回降りるぞ!! この状態じゃ上手く動けねえ!?」
子供とは言え一人抱えた状態じゃ、エア・フロートシューズの機動力が激減する。
シルフィも同様だろう。
急いで俺達は、地上に着地する。
しかし、その場所に“宝の手”の振り下ろしが!!
「やっべえ!? 出力アップ!!」
「もう一回、“ワイヤー・ショット!!”」
俺とシルフィは、それぞれ抱えたまま互いに反対方向に避けていった。
って、しまった!? シルフィ達と分断しちまった!?
【迎撃、続行】
『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』
トレジャーゴーレムは……シルフィ達に狙いを定めた!?
シルフィはそれに気づいて、再度“ワイヤー・ショット”で逃げようとしているが……間に合わない!!
シルフィ、Dr.ケミカぁ!!
「わ、“ワイヤー……”!!」
「ふむ、交代だねえ」
え?
シルフィが気付くと、いつの間にか抱えていたDr.ケミカに、逆に抱えられていた。
Dr.ケミカの口には、例の“筋力増強薬”のフラスコが加えられている。
「人一人くらいなら、訳ないさ」
「きゃあああああッ?!!」
そうして、遠目で見るとDr.ケミカがもの凄い瞬発力で、シルフィを抱えたまま“宝の手”から逃げ続けている!!
ケミカ、すっげえ!? 薬飲んでるとは言え、抱えたまま逃げられ続けるのかよ!?
「カイトのにーちゃん! 今のうちに、俺達であいつを倒そう!!」
「ああ、分かった!!」
そうして、俺はショー君を一旦降ろす。
Dr.ケミカ達が引き付けてくれている間なら、大丈夫だ。
「ショー! 俺が決めにいくから、何とかしてあいつを攻撃して押さえ込んでくれるか?」
「そうか? 分かったぜ! 止めは任せた!!」
俺はひとまず、相手の弱点はある程度予想出来るため、ショー君にサポートをお願いした。
そうしてショー君は、カードをデッキから引く。
「よっし! イベントカード・“サクリファイス・サモン”を発動だぜ!」
その言葉と共に、トレジャーゴーレムの足元に、“大きな魔法陣”が現れる!
何だ!?
「この効果により、“相手クリーチャーを一体リリースして、生贄として上級クリーチャーの召喚コストに出来る”ぜ!!」
「っ!? おい、それって……!」
つまり、“ボスを生贄にするって事”!?
おいおい、それもしかして通ったら、これ一発で決着が付くんじゃねーの!?
カードゲームあるあるコンボだけど、なんてチートカードだよ!?
「ただし、“相手プレイヤーはこの効果を拒否する事が出来る。その場合、現在ライフを1/4支払わなければならない”!!」
「あ、流石にそこまで無法じゃなかったか……」
やっぱりあっさり決まらないよな……
と言う事は、ショー君の狙いは最初からライフ削りか。
任意効果とは言え、この状況じゃ実質ほぼ強制だ。
相手のライフを1/4確定で削られるなら、大分大きい!!
そして、魔法陣が光り……
【選択要求確認。効果決定】
『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』
その音声の後、魔法陣は消えていった。
トレジャーゴーレムはそのまま残っている。
おそらくライフが削られたのだろうが……
「ッ?! え……?」
「どうした、ショー?」
「リ、“リリースが成功扱いになってる!?” あいつ、生贄の方の効果を選びやがったんだぜ!?」
「っ?! はあ!?」
それは、予想外の選択だった。
と言う事は、あいつは自分を生贄に捧げる事を受け入れたと言う事だが……
【攻撃。続行】
『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』
「でも、あいつ普通に健在だぞ!? 何か変わったようには見えない!?」
「わ、分かんねえぜ!? どうやって生贄自体は既に成立してる筈だから、成功してるなら消えるか倒れてる筈なのに……!?」
ショー君は混乱の最中にあった。
やっぱり、ボスだから一筋縄じゃいかないのか……!?
それにしても、どうやって回避、いや受け入れた状態で健在なのか分からないから不気味だ。
「……しょうがねえ!! このまま通常戦闘で倒してやる!! 生贄は成立した! 上級クリーチャー、“バーニング・ドラゴン”を召喚だ!!」
『GYaaOOOOOOOOOOOO────!!』
その言葉と共に、赤いドラゴンが現れる。
見た目は、“フレイム・ドラゴン”の強化形態みたいなドラゴンだった。
「イベントカード・“バーニング・ブレス”を発動!! この効果で、攻撃力2000のバーニング・ドラゴンの攻撃を、2000アップする!!」
「ん? 昨日のイフリート・ドラゴンの時に使ったコンボ、あっちは合計5000じゃなかったっけ? そっちの方がいいんじゃ……」
今は絶好の攻撃チャンスだ。
最大火力を叩き込むべきだと思うのだが……
「まあ見てなって!! このイベントカードの追加効果!! “バーニング・ドラゴンのブレス攻撃に貫通を与える!!”」
その宣言と共に、“バーニング・ドラゴン”はブレス発射体制になる。
そして、ブレスが発射される!!
『GoooOOOOOOOOOOOO────!!』
【攻撃確認。ガード。──失敗、防ぎきれません】
『GuuuOOOOOOOO────ッ!?』
攻撃に気づいたトレジャーゴーレムが、振り返って“宝の手”でガード体勢をとる。
が、その腕ごと“炎が貫いた”!!
「へへーん!! どうだ! 純粋な炎としての火力アップだぜ!! お宝ごと、溶かしてやったぜ!!」
「すっげえな!? サンキュー! よし、今のうちだ!!」
こうして、俺は相手が怯んでいる隙に“エア・フロートシューズ”で飛び上がる。
一人だから、十分機動力も速度も出せる!
そうして、高く高く飛び上がり、あのトレジャーゴーレムの頭と同じくらいの所まで上がった。
目標の、頭の“巨大な赤い宝石”まで、訳40m!!
「いただきます!!」
そうして、俺は念のため“筋力増加薬”を飲み込んだ。
これで決めるためだ。──!! 体が熱くなり、力が漲る!!
「ぷはあっ! いっくぞお!!」
そうして、俺は一気に距離を詰める。
それに気づいた都レジャーゴーレムは、例の光線を放とうとする!!
【空中に敵確認。撃ち落とし──】
「“マジック・シールド・メダル!!”」
『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』
俺は先打ちで、シールドを発生させて防いだ。
すぐに体をずらして、再度距離を詰める──着いた!!
そこで俺は、ユウカからもらった“勇者のナイフ”を取り出した!
そして、もう一枚! ショー君から借りたカードのうち一枚も!!
「イベントカード・“ビックリビック”を発動!! 対象、“勇者のナイフ”!!」
そして、俺はユウカのナイフを巨大化した!!
片手で持てるサイズから、俺の身長大ほどの巨大なナイフに変わる!!
「どうせ、その“赤い宝石”が弱点なんだろうよ!!」
【迎撃。続──】
「おせえ!! オラアァァァッ!!!」
そうして、俺は赤い宝石を────切り裂いた。
巨大なナイフによる一閃で、綺麗真っ二つに。
これで、決まった──
【──迎撃。続行】