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第82話 対決、トレジャーゴーレム②

「くっそ! “エア・フロートシューズ”!!」


 俺は、以前メタルマンから貰った浮遊するブーツを起動する。

 それで空中で体勢を立て直し、周囲を一瞬で確認。

 一番近いのは……!


「ショー!! つかまれ!」

「カイトのにーちゃん!?」


 俺は近くにいたショー君を抱え込んで、キャッチする。

 あとは、シルフィとDr.ケミカ……!!

 二人の位置は!?


「あっぶなあ!? “ワイヤー・ショット!!”」


 その声と共に、シルフィの腕に取り付けた装置から、フックが射出される。

 それは壁にめり込んで、しっかり固定される。


「もういっちょ!! “ワイヤー・ショット!!”」

「おおっと! 悪いねえ!」


 そして、もう片方の腕から更にフックを射出し、Dr.ケミカの白衣にひっかける。

 そしてワイヤーを巻き取って、Dr.ケミカを引き寄せている。

 Dr.ケミカを抱えたシルフィは、そのままワイヤーに引かれるまま壁にダンッ! っと着地して、ぶら下がっていた。


「こっちは無事よ!!」

「よっし! なんとか全員助かったか……!」


 とりあえず、空中から投げ出される状況からは解放された。

 しかし……!


【敵、一体消失。残りを撃ち落とします】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


「っ!! とにかく一回降りるぞ!! この状態じゃ上手く動けねえ!?」


 子供とは言え一人抱えた状態じゃ、エア・フロートシューズの機動力が激減する。

 シルフィも同様だろう。

 急いで俺達は、地上に着地する。

 しかし、その場所に“宝の手”の振り下ろしが!!


「やっべえ!? 出力アップ!!」

「もう一回、“ワイヤー・ショット!!”」


 俺とシルフィは、それぞれ抱えたまま互いに反対方向に避けていった。

 って、しまった!? シルフィ達と分断しちまった!?


【迎撃、続行】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


 トレジャーゴーレムは……シルフィ達に狙いを定めた!?

 シルフィはそれに気づいて、再度“ワイヤー・ショット”で逃げようとしているが……間に合わない!!

 シルフィ、Dr.ケミカぁ!!


「わ、“ワイヤー……”!!」

「ふむ、交代だねえ」


 え?

 シルフィが気付くと、いつの間にか抱えていたDr.ケミカに、逆に抱えられていた。

 Dr.ケミカの口には、例の“筋力増強薬”のフラスコが加えられている。


「人一人くらいなら、訳ないさ」

「きゃあああああッ?!!」


 そうして、遠目で見るとDr.ケミカがもの凄い瞬発力で、シルフィを抱えたまま“宝の手”から逃げ続けている!!

 ケミカ、すっげえ!? 薬飲んでるとは言え、抱えたまま逃げられ続けるのかよ!?


「カイトのにーちゃん! 今のうちに、俺達であいつを倒そう!!」

「ああ、分かった!!」


 そうして、俺はショー君を一旦降ろす。

 Dr.ケミカ達が引き付けてくれている間なら、大丈夫だ。


「ショー! 俺が決めにいくから、何とかしてあいつを攻撃して押さえ込んでくれるか?」

「そうか? 分かったぜ! 止めは任せた!!」


 俺はひとまず、相手の弱点はある程度予想出来るため、ショー君にサポートをお願いした。

 そうしてショー君は、カードをデッキから引く。


「よっし! イベントカード・“サクリファイス・サモン”を発動だぜ!」


 その言葉と共に、トレジャーゴーレムの足元に、“大きな魔法陣”が現れる!

 何だ!?


「この効果により、“相手クリーチャーを一体リリースして、生贄として上級クリーチャーの召喚コストに出来る”ぜ!!」

「っ!? おい、それって……!」


 つまり、“ボスを生贄にするって事”!?

 おいおい、それもしかして通ったら、これ一発で決着が付くんじゃねーの!?

 カードゲームあるあるコンボだけど、なんてチートカードだよ!?


「ただし、“相手プレイヤーはこの効果を拒否する事が出来る。その場合、現在ライフを1/4支払わなければならない”!!」

「あ、流石にそこまで無法じゃなかったか……」


 やっぱりあっさり決まらないよな……

 と言う事は、ショー君の狙いは最初からライフ削りか。

 任意効果とは言え、この状況じゃ実質ほぼ強制だ。

 相手のライフを1/4確定で削られるなら、大分大きい!!


 そして、魔法陣が光り……


【選択要求確認。効果決定】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


 その音声の後、魔法陣は消えていった。

 トレジャーゴーレムはそのまま残っている。

 おそらくライフが削られたのだろうが……


「ッ?! え……?」

「どうした、ショー?」


「リ、“リリースが成功扱いになってる!?” あいつ、生贄の方の効果を選びやがったんだぜ!?」

「っ?! はあ!?」


 それは、予想外の選択だった。

 と言う事は、あいつは自分を生贄に捧げる事を受け入れたと言う事だが……


【攻撃。続行】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


「でも、あいつ普通に健在だぞ!? 何か変わったようには見えない!?」

「わ、分かんねえぜ!? どうやって生贄自体は既に成立してる筈だから、成功してるなら消えるか倒れてる筈なのに……!?」


 ショー君は混乱の最中にあった。

 やっぱり、ボスだから一筋縄じゃいかないのか……!?

 それにしても、どうやって回避、いや受け入れた状態で健在なのか分からないから不気味だ。


「……しょうがねえ!! このまま通常戦闘で倒してやる!! 生贄は成立した! 上級クリーチャー、“バーニング・ドラゴン”を召喚だ!!」

『GYaaOOOOOOOOOOOO────!!』


 その言葉と共に、赤いドラゴンが現れる。

 見た目は、“フレイム・ドラゴン”の強化形態みたいなドラゴンだった。


「イベントカード・“バーニング・ブレス”を発動!! この効果で、攻撃力2000のバーニング・ドラゴンの攻撃を、2000アップする!!」

「ん? 昨日のイフリート・ドラゴンの時に使ったコンボ、あっちは合計5000じゃなかったっけ? そっちの方がいいんじゃ……」


 今は絶好の攻撃チャンスだ。

 最大火力を叩き込むべきだと思うのだが……


「まあ見てなって!! このイベントカードの追加効果!! “バーニング・ドラゴンのブレス攻撃に貫通を与える!!”」


 その宣言と共に、“バーニング・ドラゴン”はブレス発射体制になる。

 そして、ブレスが発射される!!


『GoooOOOOOOOOOOOO────!!』


【攻撃確認。ガード。──失敗、防ぎきれません】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!?』


 攻撃に気づいたトレジャーゴーレムが、振り返って“宝の手”でガード体勢をとる。

 が、その腕ごと“炎が貫いた”!!


「へへーん!! どうだ! 純粋な炎としての火力アップだぜ!! お宝ごと、溶かしてやったぜ!!」

「すっげえな!? サンキュー! よし、今のうちだ!!」


 こうして、俺は相手が怯んでいる隙に“エア・フロートシューズ”で飛び上がる。

 一人だから、十分機動力も速度も出せる!

 そうして、高く高く飛び上がり、あのトレジャーゴーレムの頭と同じくらいの所まで上がった。

 目標の、頭の“巨大な赤い宝石”まで、訳40m!!


「いただきます!!」


 そうして、俺は念のため“筋力増加薬”を飲み込んだ。

 これで決めるためだ。──!! 体が熱くなり、力が漲る!!


「ぷはあっ! いっくぞお!!」


 そうして、俺は一気に距離を詰める。

 それに気づいた都レジャーゴーレムは、例の光線を放とうとする!!


【空中に敵確認。撃ち落とし──】

「“マジック・シールド・メダル!!”」

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


 俺は先打ちで、シールドを発生させて防いだ。

 すぐに体をずらして、再度距離を詰める──着いた!!

 そこで俺は、ユウカからもらった“勇者のナイフ”を取り出した!

 そして、もう一枚! ショー君から借りたカードのうち一枚も!!


「イベントカード・“ビックリビック”を発動!! 対象、“勇者のナイフ”!!」


 そして、俺はユウカのナイフを巨大化した!!

 片手で持てるサイズから、俺の身長大ほどの巨大なナイフに変わる!!


「どうせ、その“赤い宝石”が弱点なんだろうよ!!」

【迎撃。続──】

「おせえ!! オラアァァァッ!!!」


 そうして、俺は赤い宝石を────切り裂いた。

 巨大なナイフによる一閃で、綺麗真っ二つに。


 これで、決まった──




【──迎撃。続行】


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