目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第81話 対決、トレジャーゴーレム①

「“エネミーブック”、起動!!」


 真っ先に動いたのはシルフィだった。

 懐から例の本を取り出して、ページを開いてそこから光が放たれる!


「解析開始!! ──名称判明!! 個体名・“トレジャーゴーレム!!” それ以上の詳細な情報は、予想時間10分は掛かるわ!」

「なるほど、らしい名前だな!!」

「ふうむ、解析は破格の時間ではあるが、戦闘中と言うことを考えるとかなり長く感じるねえ」

「それなら、その前にある程度攻撃するまでだ!!」


 情報収集が完了するまで待っていられない。

 ショー君の行動も一理あるとして、誰も止めなかった。

 ショー君が一歩前に出る。


「まずは俺からだ!! こい! 召喚、“フレイム・ドラゴン”!! “ウォータードラゴン”!! “サンダー・ドラゴン”!! “ロック・ドラゴン”!!」


『『『『GYAAAOOOOOOOOOッッッ────』』』』


 そのショー君の掛け声とともに、昨日見た4種のドラゴンが現れる。

 今回は、前回と違って合計四体で少なめだが、それでも十分な戦力だ。


「全員、ブレスで攻撃だぁ!!」


『『『『GYAAAOOッ────!! GRUOoooooooooooッ────!!』』』』


 その合図とともに、4種のドラゴンのブレスが放たれる。

 トレジャーゴーレムに対し、火、水、雷、岩のブレスが襲いかかる!

 これだけでも十分な威力! それを……


【攻撃反応。ガードします】

『GoooOOOOOOOO────ッ!!』


 “巨大な、宝の手”が形成される。

 この部屋にあった金銀財宝で構成されたそれは、トレジャーゴーレムの腕をより更に、大きく拡張した。

 その両腕を持って、構えるような体勢を取り、ブレスに対してガードしてくる!


「あー!? お宝がー?!!」

「今は細かいこと気にしてる場合じゃないねえ、それより……」

「ブレスが、全然通ってねえぜ!?」


 そう、あの“宝の手”で防がれたブレスは、そこで完全に止められていた。

 いや、表面だけなら削って入るだろう。いくつか金銀が炎で溶け出してるように見えたり、岩で破片が飛び散っているのが見える。

 しかし、それだけだ。表面を削っても、また新しいお宝で腕を再構築され続けている!?


【敵性反応。排除します】

『GaaaOOOOOOOO────ッ!!』


『『『『GYaaGYaaッッッ────?!!』』』』


「ドラゴン達ッ?!!」


 トレジャーゴーレムが片手でブレスを防ぎながらもう片方の腕で、まるで飛んでる虫を振り払うような素振りの動作で、ドラゴン達をなぎ払う!!

 ドラゴン達は回避も出来ず、四体とも“宝の手”で横なぎに叩かれ、壁に叩きつけられてしまった!!

 やられたドラゴン達は、ショー君のカードに戻っていく!!


「嘘だろ!? 上級クリーチャーじゃないとは言え、一撃で!?」

「単純に、質量が段違いだねえ。あの攻撃、直撃したらヤバイだろうね」

「って、言ってる側から近づいて来てる!? 」


 トレジャーゴーレムは、今度は俺達に狙いを定めたようで、いつの間にかノッシノッシと近づいてくる!


「させるか!! 近づけさせねーぜ!! トラップカード・“不自由の鉄球”!!」

「私も!! “ワイヤー・ショット!!”」


 そうして、トレジャーゴーレムの足元に巨大な鉄球がついた手錠と、ワイヤーが巻きついていく!!

 これは事前に相談して考えていた、ショー君とシルフィのコンボだ!!


「これで移動は封じたぜ!!」

「そのままその場所に固定されなさ──」


【再構築。移動続行】

『GoooOOOOOOOO────』


 すると、トレジャーゴーレムは“するりと手錠とワイヤーをすり抜けて”、俺たちの方に向かって来た。

 あー……


「って、ええ?! 何でーッ?!!」

「まあ、あの体って“複数の宝の集合体”なだけだからねえ……粘土みたいな物さ。形を一部崩せばすぐにすり抜けられるだろうね」

「せっかく考えたコンボだったのにー!!」

「普通のゴーレムならこれで止まってたのに!! もー!!」


 目論見が失敗した事に、ショー君達はショックを受けていた。

 クソっ、考えてみれば、俺達は元々狼のボスを想定して作戦を立てていた。

 あんな宝の集合体のボスなんて想定していないから、いくつか用意した戦術が使えなくなってる!!

 Dr.ケミカの毒薬なんかまさにそれだ、あいつに毒なんて効きそうにねえんだけど!?


「振り下ろしが来てるわよー?!!」


 そして十分な距離になった後、その大きな片手を俺達に振り下ろして来た!!

 回避は、間に合わない!!


「全員、後ろに回れ! “マジック・シールド・メダル!!”」


 今度は俺が前に出て、マホから貰った魔法のシールドを展開する。

 振り下ろされた“宝の手”は、そのシールドに阻まれてバキャキャキャンッ!! と甲高い金属音を響かせながら、弾かれたように離れていく!


「よっし! ナイスよ、カイト!!」

「けど、長くは持たねえ!! 後数回が防ぐの限度だ!!」

「なら、今の内に!! “ワイバーン・ドラゴン”を召喚!! 更に装備カード、“龍装具”を発動だぜ!!!」


 俺がシールドを出している間に、ショー君が昨日のみんなを乗せてくれたドラゴンを用意してくれた。

 今度は最初から人が乗るところを付けてくれているようだ。

 俺達は隙を見て、ワイバーン・ドラゴンに乗り込んで飛翔する!


「ワイバーンドラゴン! 常に動き続けるんだぜ!!」

『GYaaOOooo────!!』

「よっし! これなら狙われにくいわね!」

「いや、来るぞ!?」


【逃走確認。撃ち落とします】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


 その警告音と共に、都レジャーゴーレムは“宝の手”を両手で広げる。

 まるで拍手をするかのように、“宝の手”の両手はワイバーン・ドラゴンを潰そうとする!!

 やべえ、両側からじゃシールドが足りねえ!?


「トラップカード!! “身代わり人形”!! クリーチャーへの戦闘を一回だけ身代わりするぜ!!」


 その宣言と共に、デフォルメされたようなドラゴン人形がポンッと現れた。

 そちらに対して、“宝の手”は誘導されてジャキィキィキィイキィッ!! と、甲高い炸裂音を響かせた。


「ギリギリ回避できたわね!!」

「けど、スピードが根本的に足りねえぜ!! 天井も思ったより低いから、攻撃から逃げられねえ!?」


 そう、この部屋はまるで体育館だと例に出したが、あの疾レジャーゴーレム相手だと、全然距離が取れない。

 これじゃあ空中に逃げても、全然逃げきれねえ!


「ふむ、ちょっといいかい?」

「何だぜ、白衣のねーちゃん!?」

「“筋力増強薬”、このワイバーン・ドラゴンに飲ませてみても良いかな?」

「っ!! よっし、分かったぜ! 飲め、ワイバーン・ドラゴン!!」


 そうして、Dr.ケミカがフラスコの瓶を空中の前に投げ入れる。

 それを支持されたワイバーン・ドラゴンがフラスコごと噛み付いて、飲み込んだ。


『────っ!? GYaaOOOOOOOOOOOO────!!』

「おお!! 元気になったねえ!?」

「ありがとうだぜ!! スピードアップだ!! みんな、しっかり掴まれ!!」


 その言葉と共に、ワイバーン・ドラゴンの飛行速度が大幅にアップした!!

 それを“宝の手”がはたき落とすように追いかけてくるが、それらを全て回避する!


「よっし!! 攻撃を避けられるようになったわ!!」

「これなら、今のうちに次の攻撃準備を出来るな!!」

「カイトの兄ちゃん! これを!!」


 そうして出来た余裕の時間に、ショー君が何枚かカードを手渡して来た。

 え、これ……!?


「今のうちに何枚か渡しておく! 必要な時に使ってくれだぜ!」

「良いのか? と言うか、俺が使えるのか!?」

「ああ! 念じればカイトの兄ちゃんでも発動出来るぜ!」

「そっか、なるほど了解! ありがたく使わせてもらうな!」

「ねえ、私は? 私にはないの?」

「もちろん、ねーちゃん達にもちゃんと良いの上げるぜ!!」


 こうして、俺達はショー君からカードをありがたく受けとった。

 それを見てDr.ケミカはふむ、と言って。


「ならば、私も“筋力増強薬”を渡しておこうかねえ。はいどうぞ」

「えー……いやまあ、仕方ないか。ちょっと怖いけど、ありがたく貰っておく。必要な時に飲むよ」

「そうだねえ。いやー、思わぬところで実験が出来そうだ!」

「やっぱ返して良いか?」


 とは言え、やれることは全てやるべきか。

 そう我慢して、初めてのDr.ケミカの薬だが、いつでも飲めるようポケットに入れておく事にした。


【敵、逃走続行中。撃ち落とします】

『GuuuOOOOOOOO────ッ!!』


「っ!! また追って来たぜ!!」

「けど、このスピードなら追いつかれないは──」


【レーザー。発射】


 は?

 と、言う前に。その光線は、頭部の赤い宝石から発射された。

 気づいた時には、ワイバーン・ドラゴンが撃ち貫かれていた。


『────っ!? GYa──aaaAAAAAAAAAAッ??!!!』


「ワイバーン・ドラゴンッ?!!」


 しまったあ?!! そう言えば、道中のゴーレムも極太レーザーを撃って来たんだった!!

 なんとか乗っている俺達にはあたらなかったが、ワイバーン・ドラゴンは致命傷!!

 強制的にカードに戻される!!


「おああッ?!」

「きゃあああッ?!」

「落ちるねえ!?」

「うわああああッ?!!」


 こうして、俺達は空中でワイバーン・ドラゴンから投げおとされたのだった……


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?