目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第80話 お宝部屋②

 ──その無機質な声とともに、巨大な赤い宝石の塊が光出す。


 俺たち全員が驚く中、赤い宝石の塊が浮かび上がり……


 辺り一面、赤い光で包まれる!!


「何だぁッ?!」

「眩しいねえ!?」

「前が、見えねえぜ!?」

「ちょっとこれ、まさか……?!」


 暫くすると、光が収まった。だがしかし、直後、周りの様子が……


「な、なんか“宝が浮かび上がってないか”だぜ?」

「辺り一面の宝が、浮かび上がってるねえ……」

「それが、赤い宝石の塊の近くに寄って行って……」

「ねえ、嘘でしょ? ねえ!?」


 すると、この部屋にあった金銀財宝が、全て浮かび上がり。

 赤い宝石に纏わりついていく。

 だんだんと、巨大な塊になっていき……“まるで、人の姿のように形取る”



『Guuuuuuuuu────ooooooooOOOOOOOOOOO────ッ!!』



 それは、“財宝で出来た巨人”だった。

 財宝を素材とした、巨大なゴーレムになったのだった。


「ちょっと待って、何だぜあれ────ッ?!!」

「財宝で出来たゴーレム、と言った所だねえ。サイズが桁違いだけど」

「嘘でしょ、何でー?!!」

「どういう事だ!? さっきの狼がボスって訳じゃ無かったのか!?」

「ま、まさか……」


 すると俺の言葉に、シルフィが何かに気づいたような声を上げる。

 どうした!? まさかって!?


「ま、まさか。あの狼って、“ただ単に普通の狼の一体があそこにいただけ”……? つまりボスとは関係の無い個体だった?!!」

「──ええええええ?!!」


 嘘だろ!? あのサイズでボスじゃ無いって?!!

 その予想に俺達は驚愕する。

 するとDr.ケミカは冷静に。


「ふむ。不思議じゃ無いねえ。この部屋の宝の量を考えると、実際はこっちが深層部。となると、あの狼がいた部屋は一歩手前。“こっちが本当のボス部屋”と考えれば、辻褄があうねえ」

「じゃあ、俺達は全然違うやつ倒して喜んでいたって事!?」

「多分そうなるねえ」


 マジかあ?!!

 完っっっ全に油断した!!

 おい、しかもこの場にユウカいねえぞ!?

 このまま戦いになったら、完全に不利だぞ?!!


「こうしちゃいられねえ! 全員一回逃げるぞ!? ユウカのところまで!!」

「そうしたいんだけどねえ……」

「カイトのにーちゃん! あれ!?」


 あれって!? そうしてショー君が指差した方角を見ると……

 いつの間にか、“大量のお宝が壁の穴を塞いでいた”。

 俺たちが入って来た入り口を、だ。


「ちょっとちょっと?!! 閉じ込められたって事?!!」

「逃すつもりは、無いって事だねえ……」

「マジかよ!? ユウカこの場にいないんだけど?!!」

「金髪のねーちゃーん!?」


 メインアタッカーかつ、戦闘経験豊富な前衛がいねーんだけど!?

 おい、このメンツ俺以外後衛だらけだぞ!? 嘘だろ、このメンバーで戦わなきゃならねーの?!!


 それは、かなりの絶望感だった。

 サイズで言えば、四天王より遥かにでかい大ボスが相手。

 俺達は全員、戦闘のプロというわけでは無かった。

 それを相手に、ユウカ抜きで戦えと……。


 ──無理じゃね?


「…………“ロードするか?”」


 俺はポツリと、そう呟く。

 この絶望的な状況、もはや覆しようが無いだろう。

 と、なれば。素直に諦めてロードすることも視野に入る。


 そうだ、冷静に考えればロードしてやり直せば全く問題ない。

 幸い、最後にセーブした状況は昨日の夜だ。大して戻らない。

 そうすれば簡単にこの状況から逃げ出せて、いくらでもやり直せる。

 この部屋に入らないようにすれば良いし、もしくは今度こそユウカを連れて来るようにすれば、まだ挑みやすいだろう。

 そう、無理する必要は……



「────やったぜ!! やり甲斐のある相手だぜ!!」


 ……すると、俺の思考を遮るように、ショー君のそんな声が聞こえて来た。

 え……?


「正直、さっきのでボスが完全に倒れたと思い込んじゃってたから、不完全燃焼だったんだぜ!! こうして全力で挑めそうで、楽しみなんだぜ!!」

「──まあ、確かにさっきまで肩透かしではあった。ここからが本番だというなら、気合が入るねえ」

「──あーもう!! 冗談じゃ無いわ!! ここまで大量の金銀財宝が目の前にあるのよ!! そう簡単に諦めてたまるもんですかッ!!」


 それは、予想外の声だった。


 ショー君はカードを構え。

 Dr.ケミカは薬を構え。

 シルフィは弓矢を構えていた。


 俺がやり直しを考えている間、ショー君達は気合が十分入っていたようだった。


 …………そっか。


 俺は、逃げ腰だった頭を考え直す。


「……やり直し自体は、いつでも出来る、か」


 ──なら、このまま挑戦するのも、“あり”だろう。

 ユウカがいない? だからなんだ。ユウカに頼り切らないと何も出来ない存在になりたいのか、俺は。

 実際完全にユウカに任せきりにしたから、家が燃えるという結果になったんだろうが。その反省をしていないのか俺は。


 それに、3人とも気合十分だ。

 だったら、やり直しで水を刺すより。この勢いに乗せたまま、挑む方が気分が良いかもしれない。


「──良し!!」


 俺は自分のほっぺを両方叩く。

 パンッパンッ! っと、気合を入れる。


「全員、行けるか!?」

「準備万端だねえ」

「いつでも行けるぜ!!」

「任せなさい!!」


【侵入者。直ちに排除します】

『Guuuuuuuuu────ooooooooOOOOOOOOOOO────ッ!!』


「よっしゃ!! じゃあいくぞおッ!!」


 こうして、俺たちにとって真のボス戦が始まったのだった……


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?