──その無機質な声とともに、巨大な赤い宝石の塊が光出す。
俺たち全員が驚く中、赤い宝石の塊が浮かび上がり……
辺り一面、赤い光で包まれる!!
「何だぁッ?!」
「眩しいねえ!?」
「前が、見えねえぜ!?」
「ちょっとこれ、まさか……?!」
暫くすると、光が収まった。だがしかし、直後、周りの様子が……
「な、なんか“宝が浮かび上がってないか”だぜ?」
「辺り一面の宝が、浮かび上がってるねえ……」
「それが、赤い宝石の塊の近くに寄って行って……」
「ねえ、嘘でしょ? ねえ!?」
すると、この部屋にあった金銀財宝が、全て浮かび上がり。
赤い宝石に纏わりついていく。
だんだんと、巨大な塊になっていき……“まるで、人の姿のように形取る”
『Guuuuuuuuu────ooooooooOOOOOOOOOOO────ッ!!』
それは、“財宝で出来た巨人”だった。
財宝を素材とした、巨大なゴーレムになったのだった。
「ちょっと待って、何だぜあれ────ッ?!!」
「財宝で出来たゴーレム、と言った所だねえ。サイズが桁違いだけど」
「嘘でしょ、何でー?!!」
「どういう事だ!? さっきの狼がボスって訳じゃ無かったのか!?」
「ま、まさか……」
すると俺の言葉に、シルフィが何かに気づいたような声を上げる。
どうした!? まさかって!?
「ま、まさか。あの狼って、“ただ単に普通の狼の一体があそこにいただけ”……? つまりボスとは関係の無い個体だった?!!」
「──ええええええ?!!」
嘘だろ!? あのサイズでボスじゃ無いって?!!
その予想に俺達は驚愕する。
するとDr.ケミカは冷静に。
「ふむ。不思議じゃ無いねえ。この部屋の宝の量を考えると、実際はこっちが深層部。となると、あの狼がいた部屋は一歩手前。“こっちが本当のボス部屋”と考えれば、辻褄があうねえ」
「じゃあ、俺達は全然違うやつ倒して喜んでいたって事!?」
「多分そうなるねえ」
マジかあ?!!
完っっっ全に油断した!!
おい、しかもこの場にユウカいねえぞ!?
このまま戦いになったら、完全に不利だぞ?!!
「こうしちゃいられねえ! 全員一回逃げるぞ!? ユウカのところまで!!」
「そうしたいんだけどねえ……」
「カイトのにーちゃん! あれ!?」
あれって!? そうしてショー君が指差した方角を見ると……
いつの間にか、“大量のお宝が壁の穴を塞いでいた”。
俺たちが入って来た入り口を、だ。
「ちょっとちょっと?!! 閉じ込められたって事?!!」
「逃すつもりは、無いって事だねえ……」
「マジかよ!? ユウカこの場にいないんだけど?!!」
「金髪のねーちゃーん!?」
メインアタッカーかつ、戦闘経験豊富な前衛がいねーんだけど!?
おい、このメンツ俺以外後衛だらけだぞ!? 嘘だろ、このメンバーで戦わなきゃならねーの?!!
それは、かなりの絶望感だった。
サイズで言えば、四天王より遥かにでかい大ボスが相手。
俺達は全員、戦闘のプロというわけでは無かった。
それを相手に、ユウカ抜きで戦えと……。
──無理じゃね?
「…………“ロードするか?”」
俺はポツリと、そう呟く。
この絶望的な状況、もはや覆しようが無いだろう。
と、なれば。素直に諦めてロードすることも視野に入る。
そうだ、冷静に考えればロードしてやり直せば全く問題ない。
幸い、最後にセーブした状況は昨日の夜だ。大して戻らない。
そうすれば簡単にこの状況から逃げ出せて、いくらでもやり直せる。
この部屋に入らないようにすれば良いし、もしくは今度こそユウカを連れて来るようにすれば、まだ挑みやすいだろう。
そう、無理する必要は……
「────やったぜ!! やり甲斐のある相手だぜ!!」
……すると、俺の思考を遮るように、ショー君のそんな声が聞こえて来た。
え……?
「正直、さっきのでボスが完全に倒れたと思い込んじゃってたから、不完全燃焼だったんだぜ!! こうして全力で挑めそうで、楽しみなんだぜ!!」
「──まあ、確かにさっきまで肩透かしではあった。ここからが本番だというなら、気合が入るねえ」
「──あーもう!! 冗談じゃ無いわ!! ここまで大量の金銀財宝が目の前にあるのよ!! そう簡単に諦めてたまるもんですかッ!!」
それは、予想外の声だった。
ショー君はカードを構え。
Dr.ケミカは薬を構え。
シルフィは弓矢を構えていた。
俺がやり直しを考えている間、ショー君達は気合が十分入っていたようだった。
…………そっか。
俺は、逃げ腰だった頭を考え直す。
「……やり直し自体は、いつでも出来る、か」
──なら、このまま挑戦するのも、“あり”だろう。
ユウカがいない? だからなんだ。ユウカに頼り切らないと何も出来ない存在になりたいのか、俺は。
実際完全にユウカに任せきりにしたから、家が燃えるという結果になったんだろうが。その反省をしていないのか俺は。
それに、3人とも気合十分だ。
だったら、やり直しで水を刺すより。この勢いに乗せたまま、挑む方が気分が良いかもしれない。
「──良し!!」
俺は自分のほっぺを両方叩く。
パンッパンッ! っと、気合を入れる。
「全員、行けるか!?」
「準備万端だねえ」
「いつでも行けるぜ!!」
「任せなさい!!」
【侵入者。直ちに排除します】
『Guuuuuuuuu────ooooooooOOOOOOOOOOO────ッ!!』
「よっしゃ!! じゃあいくぞおッ!!」
こうして、俺たちにとって真のボス戦が始まったのだった……