──そこは巨大な部屋だった。
手前の狼のいたボス部屋より、遥かに広く。天井も思った以上に高い。
まるで学校の体育館と同じぐらいの広さと思っても良いくらいだった。
「あ! カイトのにーちゃん!」
「君も来たのかい。あれ、ユウカ君は?」
すると、そこにショー君とDr.ケミカが予想通りいた。
やっぱりさらに奥の部屋にいたのか。
「ああ、それなんだけど……」
「うっひゃああああ────ッ♪!!」
すると、俺が説明しようとするとシルフィの声でかき消された。
なんだなんだと、視線を向けると……
「宝よ、宝の山よー♪!! これだけの量、見た事ない!! 最高よ、最高ー!!」
すると、部屋の端に確かに金銀財宝がまるで山の如く積まれていたのが見えた。
それを見てシルフィが黄色い悲鳴を上げていたらしい。
「はーッ! 確かに、あれはスゲーな……漫画くらいでしか見た事ないぞ、あの量」
「まさに夢のようだぜ!! 何回レストラン行けるかな!?」
「これは流石に、お宝自体にはそこまで興味が無かったつもりの私でも、テンションがあがるねえ……」
そのバカみたいな量に、俺達は全員感嘆の声を上げる。
これだけの量があるなら、俺の家の弁償代を差っ引いても十分以上にお釣りが出る。
まあ、俺の世界で直接売るのは少し手間かもしれないが、それでもやりようによっては十分収入は発生するだろう。
シルフィも、借金返済よ~♪ と、喜びの声を上げている。
「にしても、お宝無事だったんだな。てっきり金髪のねーちゃんの攻撃で、消し飛んでるかと思ったぜ……」
「いや、“実際一部は消し飛んでる”ねえ。この部屋をグルリと壁伝いに、金銀財宝が並んでいるから、ユウカ君の攻撃が通った箇所は綺麗さっぱりなくなってるね」
あ、やっぱり吹っ飛んでたんだ。あの攻撃で。
やっぱり楽をしようとした分、損してたんだな。
今度から、もうちょい考えて相談してからユウカに撃ってもらうようにするか……
それでも、残った量としては充分すぎる。
とてもじゃないが、一度では持ち帰り切れないだろう。
おそらくは、全員で手分けして複数回に分けて俺の家に持ち運んで……
って、そうだ。ゆっくりしてる場合じゃ無かった。
「全員、聞いてくれ。ユウカから伝言だ。ここに動物やゴーレム達が集まって来そうだから、一度戻って来てくれだって。ユウカが足止めしてくれてる」
「マジか!? それは大変なんだぜ!?」
「おやおや、もしかしてさっきの攻撃の音のせいかい? 凄い轟音だったからねえ」
「きゃー♪ ……って、そうなの? それじゃあ急いで全部運ばないと!!」
そう言って、シルフィが懐から大きな袋を取り出して、お宝をかっ込んでいく。
気持ちは分かるけど、到底その袋のサイズじゃ全然追いつかないだろう。
「どうする? とにかく一度ユウカと合流して、動物やゴーレム達を蹴散らしてから改めてここに来るか?」
「嫌よ!! 目を離したら、このお宝達が全部なくなっちゃうかもしれないじゃない!!」
「俺たち以外にいないんだから、そうすぐにはなくならないと思うんだぜ……」
「完全に目が眩んじゃってるねえ」
まあ、無理もない。
これほどの量の金銀財宝だ。一生どころか、何世代も豪華に暮らせるだろう。
それほどの宝を前にして、一度手放すという選択はし辛い気持ちはよく分かる。
「ほら!! あそこにも“巨大な赤い宝石”があるじゃない!! あんなの持ち帰らないと損じゃない、損!!」
「そりゃそうだけどさあ……」
……って、ん?
なんか違和感。ていうか……
「どうしたんだい、カイト君?」
「なんかあの宝石、見覚えが……?」
「あー、確かに俺も何故かあるぜ? なんでなんだぜ!? 」
「何よ。あなた達もしかして元から金持ち? あんな宝石見慣れてるって訳?」
いやそうじゃなくて、つい最近。
具体的にいうと、昨日だったような……
ああっ!!
「思い出した!! あれ、道中にいた“ゴーレムの頭にあった宝石”だ!!」
「ああ、なるほどだねえ!! 通りで見覚えがあった訳だ!」
「スッキリだぜ!!」
「ああ、なるほどゴーレム。……ゴーレム?」
そこまで言って、シルフィが突如固まる。
どうした?
「いや、ちょっと待って。……その宝石って、傷が付いてる?」
「あ、傷? ぱっと見、綺麗な宝石だけど」
「いや待つんだぜ。よく見ると、“複数の小さな赤い宝石が塊ってる”んだぜ」
あ、本当だ。よく見ると、ショー君のいうとおり、赤い宝石が大量にくっついてるだけだった。
それによって、大きな一塊に見えてるだけらしい。
「どうかしたのかい?」
「いや、見間違いなら良いんだけど……もし本当にゴーレムの宝石なら、“壊さないとゴーレムが復活する”んだけど……」
「そうなのか? でもあのサイズ、複数集まってるとはいえ、あの時のゴーレムより遥かにデカい……」
【──侵入者、発見】