「メタルマンの世界に?」
「うん。カイト達が、ボクの世界にやって来たようにさ」
ユウカからその提案をされて、俺は少し驚いた。
まさかユウカが“こっそり”と言う提案をしてくるとは思っていなかったから。
「メタルマン本人に話を聞くのもいいけど、彼素直に話してくれなさそうじゃないかい? それなら、一旦先にボク達が彼の世界の様子を実際見るのも悪くないんじゃないかと思うんだ」
「ふーむ……」
俺はユウカの提案をよく考えてみる。
確かに一理ある。ただ単に話を聞くより、直接彼の世界の状況を見て確かめるのも一つの手だろう。
メタルマンがいない状態で、メタルマンの世界に行く事は問題無い。
以前炎の四天王騒動の時、ユウカがこっちの世界にいない状態から、俺が単独でユウカの世界に行く事は出来たから。
マーカーの使用については問題ない筈だ。
ただ……
「けど、メタルマンさん怒りそうじゃないですか? 勝手にメタルマンさんの世界に行って、何をやってるんだー! って……」
「そうなんだよなあ……」
想像に固く無い。
俺達が勝手にメタルマンの世界に行ったら、物凄く起こりそうだアイツ。
まあ……
「その時は、“またカイトがロードすればいい”のよ! そうすれば無かった事になって、情報収集だけして戻ってこれる! さっきのホラー作戦の時と一緒よ!」
「あ! なるほど、その手がありましたか!!」
そうして、マホはポンっと手を叩いてソラの意見に賛成する。
確かに、その方法ならいざメタルマンにバレたとしても、バレる前の状況にリセット出来る。
ある意味、卑怯な手かもしれないが……まあ、今回は仕方ないと目を瞑ってもらおう。
本当に何も問題無かったなら、メタルマンにゴメンなさいだ。
「と言うわけでカイト、もう一回セーブして」
「ん? まあいいけど」
ソラにそう言われて、俺はさっきしたばかりだが、もう一度セーブクリスタルにセーブする。
「よし! ──じゃあカイト、メタルマンの世界の事分かった?」
「は? ……ああ、そう言うことか」
一瞬訳が分からなかったが、俺はすぐに納得する。
要は、“この俺がメタルマンの世界を経験してロードして来た”んじゃないかと確認したのだろう。
よくよく考えてみればそうだ。
さっきのホラー作戦の時の結果報告だって、ソラ達にとってはまだ実施していない作戦の結果を俺が急に話し出したように見えただろう。
その時と同様に、メタルマンの世界を先に経験して来たんじゃないかと聞いて来たんだ。
「いや、悪いけどまだだな。俺にロードした記憶はねえ」
「そう。じゃあこれから実際に向かうしかないわね」
「にしても、ちょっと不思議な気分だね。ボク達のロードの場合だと、“カイト達の記憶は無くなってなかった”から、なんだかちょっと違和感を感じるね」
「そういえばそうですね?」
そうだ。ユウカ達のロードって、ユウカ達の世界はリセットしても、俺の世界の時間まではリセットされていなかった。
けど、俺のロードの場合は、俺の世界の時間が巻き戻るだけでなく、“ユウカ達の時間の進捗”も全てリセットされていた。
つまり、俺のロードは本当に異世界ごと全て戻している事になるだろう。
「ふと思ったんだ。これがロードされる側の気持ちなのかなって。知らない間に、なんだかカイトに置いていかれているようで、ちょっと悲しい気分になるね」
「そうですねー。お兄さんが一人だけ先に経験して来てるようで、寂しい気分になっちゃいますねー」
「う……まあ、そうだな」
俺はそれを聞いて、ちょっと心が痛くなった。
確かに、ホラー演出を一緒に考えていたあの時間。
あの時の経験が、ユウカ達には無くなっている。
あの作戦は、大失敗に終わったけれど。けど、あの時間を一緒に過ごしたと言う事実が無くなったようで、俺自身ちょっと物悲しい気持ちになっていたのは事実だった。
さっきはメタルマンの世界の事はロードして全てリセットすればいい、とは話たが、正直あまりやらない方がいいかもしれない。
「まあ、とにかく。メタルマンの世界に行かない事にはどの道話にならないわ。とりあえず、出来る限りメタルマンに気づかれないように、彼の世界を見に行きましょう。それでいい?」
「ああ、そうだな」
「うん。ボクも異論は無い」
「私も、ちょっと楽しみですー」
こうして、俺達は気分を入れ替えて、メタルマンの世界に意識を向ける。
「ようし、それじゃあみんな準備して来てー」
その声とともに、俺達は各自準備をすませ……
「全員、準備はいいわね?」
「ああ」
「うん、いいよ」
「はい!」
「よし! それじゃあ、全員行くわよ! メタルマンの世界へ!」
こうして、俺達は窓を通って、メタルマンの世界へ向かったのだった……