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第95話 到着、メタルマンの部屋

「っと、到着ー」

「あっという間ですね」

「まあ、窓をくぐっただけだからなあ」

「一瞬なのは、当然だね」


 そして、俺達はメタルマンの世界に足を踏み入れた。

 と言っても、本当に窓を通っただけなので、一瞬過ぎて実感がわかない。

 あれだ、県境の所を一歩踏み入れて、他県に入った実感がわかない感じだ。


「とりあえず、ここがメタルマンの世界なのは間違い無いんだけど……」

「なんだろここ? 部屋?」


 そう、窓を潜り抜けて出た場所は、とある部屋だった。

 パッと見、俺の家のリビングに近いルームだったが……


「なんですかこれ? “ガラクタが一杯転がっている”んですけど」

「うん、金属製の何かの部品がたくさん転がっているね」


 マホの言うとおり、何かの機械のパーツらしきものが沢山転がっている。

 ネジやボルト、鉄板と言った細かいものも沢山だ。

 明らかに機械のメンテナンス部屋、と言った感じだ。

 おかげでこの部屋がリビングだと一瞬分からなかった。


「この雰囲気、俺の家のガレージを思い出すなあ。メタルマンに貸してる場所」

「ああ。そういえばあそこ、メタルマンさんが使ってたんでしたっけ。どうりで見覚えがあると思ったら、確かにあそこもゴチャゴチャしてましたね。以前掃除したから分かります」


 そういえば、マホがメタルマンと初めて会った時って、確かマホがガレージを勝手に掃除した事に怒ってたんだっけ?

 確かそこら辺にある道具の配置を勝手に弄るなとかどうとか……


「あ。と言う事は、そこら辺に転がってるように見えるものも、弄ったらメタルマンにバレるってことか?」

「少なくとも、テーブルらしき物の上に置いてあるやつは弄らない方が賢明だろうね。設計図らしきものも置いてあるし、触ったらすぐ違和感に気づかれそうだ」


 ユウカの指差した先には、メンテナンス台らしきものが鎮座していた。

 細かいパーツが沢山置かれており、確かに弄ったら直ぐに分かりそうだ。


「そういえば、肝心のメタルマンは? こっそり来たと言っても、この部屋でばったり会う可能性もあったんだけど」

「うーん。見たところいませんね? 留守でしょうか?」


 マホが軽く部屋を見渡して、俺達以外誰もいない事を確認した。

 広さはそこまで広く無い。

 マンションの一室、と言ったあたりだろうか?

 キッチンとかもあるし、ここにメタルマンが住んでいる、と言う事だろうか?


「と言う事は、俺達普通にメタルマンの家に侵入してるって事か? ……うわ、やべえ。我が家に深夜の侵入嫌だって理由で来たのに、逆に思いっきり俺達がメタルマンに似たような事やってる事に……」

「しょーがない、切り替えていきましょう切り替えて」


 俺が自分のやってる事に気づくと、ちょっと人のこと言えないと言う事に落ち込んでいると、ソラが慰めるようにそう言ってくる。

 あとでちゃんとメタルマンに誤っておこう、と本気で考えておく。


 ふと、気づく。


「そう言えばソラ。メタルマンの世界で俺がロードしたら、俺がロード地点に戻されるのは分かるんだけどよ。“俺達がいる状態でメタルマンがロード”したら、俺達はどうなる?」


 そう、俺のロードは本当に全てをやり直すものだ。

 だが、メタルマンのロードなら、メタルマンの世界だけやり直す。

 その場合、その世界に異物である俺達がいた場合だとどうなるんだ?


「そう言えば、試した事は無かったね? カイト達がいる状態でロードした経験は無かったっけ」

「え? まさか、私達がこの世界に取り残されてしまうなんて事は……?!」


 その可能性に思い至り、マホが怖がるような表情に変わっている。

 それを聞いてソラはなんて事ないように。


「ああ、大丈夫大丈夫。その場合、“私達もカイトの家のセーブポイント前に飛ばされる”わ。強制的に追い出される形ね」

「あ、そうなんですね」


 良かったー、とマホは胸を撫で下ろす。

 少なくとも世界に取り残される、と言う心配は無いそうだ。


「正確には、メタルマンの世界に私たちがいる場合、メタルマンがロードを実行した時、先に私たちがカイトの家に飛ばされる。その後、メタルマンの世界のリセットが行われる形ね。だから変に取り残される、と言う事はないわ」

「へー、そう言う仕組みなんだね」

「そう。安全上の仕組みね。カイトと違って、あなた達のロードって“本来の想定と違う動作”だから、一応そうしていて……」

「本来の想定と違う? どう言う事だ?」

「あー、気にしなくていいわ。ただ“カイトがセーブポイントの管理者だと言う事が関係してるだけ”だから」


 ソラの言葉に、少し気になる点はあったがとりあえず納得する。

 俺のロードがユウカ達の世界ごと巻き戻る事は、差異として既に実感している。

 それが俺がセーブポイントの管理者と言う点が理由ならば、確かにうなづける。


「なるほど、とりあえず分かった。ありがとう」

「どういたしまして」

「と言う事は、もしメタルマンさんが今この瞬間にロードしようとしたら、私たちもお兄さんの家に戻されるって事ですか?」

「そうね。戻されるって言うか、世界に“追い出される”って行った方がイメージあってるかも知れないけど……」

「この世界に来て、すぐ戻される形になるなんて、もしそうなったらちょっと笑っちゃうね」

「確かに」


 あはは、とユウカ達と一緒に笑っていると……


【──侵入者、発見】


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