首の痛みはわずか5日で治った。それでも、怪我をしてからというもの、れんさんは毎晩仕事帰りに私の家に顔を出してくれるようになった。疲れているはずなのに、その素振りすら見せず、私のそばにいてくれる彼の姿がたまらなく愛おしい。
「今日はピザでも頼むか。何がいい?」
「んー、トマトとチーズのやつが好き!」
「じゃあ、マルゲリータにするか」
れんさんはそう言いながら手際よく電話で注文を済ませた。ついでにポテトとナゲットまで追加している。スリムな見た目に反して、彼の食べっぷりはなかなかのものだ。外食に行くと、いつも「ご飯大盛りで」と頼むのがお決まりになっているくらい。
「やったー、楽しみ!」と喜びを隠せない私が思わず彼の腕に飛びつく。れんさんはくしゃっと私の髪を撫でて、「ピザが届くまでちょっと横になろう」と提案した。2人でベッドに並んで横になり、ピザを待つ時間さえ愛おしい。
宅配ピザを彼と一緒に食べる時間が私は大好きだ。ただの食事なのに、2人でひとつのピザを分け合うだけで、特別な絆が深まった気がするから。注文するときの「どれにする?」という会話ですら、じんわりと心が温かくなる。
30分ほどしてからピザが届くと、早速2人で黙々と食べ始めた。
「やっぱりおいしいね!」
「最高だな」
食べることに夢中なれんさんは、会話よりも味わうのが優先らしい。でも、それも彼らしいなと感じる。初デートのとき、この姿を見て少し不安に感じたことを伝えたら、それ以来「ちゃんと話すように気をつけるよ」と言ってくれたっけ。
彼が夢中でピザを口に運ぶ横顔をふと見つめる。こんなふうに「一緒に食べる」ただそれだけの行為で、どうしてこんなにも心が満たされるのだろう。
ピザの箱を片付けながら、心の中でそっと思う。
宅配ピザがこんなにもおいしくて幸せだなんて、 れんさんに出会うまでは知らなかったよ。