「んー、
「本当に?」
「うん、大丈夫。通常は2週間だけど、もし必要なら1ヶ月でも休めるよ?」
「いや…それはちょっと職場に申し訳ないから、2週間でお願いしようかな…」
れんさんの優しい言葉に、ずっと心配していた気持ちが少しずつ軽くなっていった。彼がこんなにも私を気遣ってくれることが、胸の奥でじんわりと温かさを広げていく。
「今日は帰ってゆっくり休みな」彼が真剣な眼差しでそう言う。その眼差しの中には、私を大切に思う気持ちがしっかりと込められていて、思わず胸が高鳴った。
会計を待ちながら、診断書の写真を撮り、チーフに送る。
「2週間の安静が必要です」と記されたその文字が、重く感じたけれど、送信ボタンを押すと、心が少しだけ軽くなった。
チーフからはすぐに返信が来た。「承知しました。無理せず、安静にしてください。」その言葉に肩の力が一気に抜ける。
しかし、職場のグループラインは次々と通知が届き、慌ただしい状況が伝わってきた。スマホが何度も振動し、呼び出されるけれど、私はそれを一時的に非表示にして、静かな時間を少しだけ楽しむことにした。
2週間もの休みは久しぶりだ。
入社以来、毎日忙しくて、休みの日でもラインが届き、仕事から離れられない日々が続いていた。それだけに、正直なところ、解放された気分で嬉しい自分がいた。
診察が終わった後の、れんさんの言葉を思い出す。「ごめん、送ってあげられなくて。でも、タクシー代渡すから、タクシーで帰りなね。仕事、今日は早めに終わらせるから、後で家に行くわ。」
「うん」
その言葉を聞いた瞬間、胸がキュンとした。今日はなんだかれんさんが全く別人のように見える。とても頼りがいがあって、少し照れくさいけど、どこか嬉しい気持ちでいっぱいになった。
こんなにも気を使ってくれる彼が、実は遊戯王カードが趣味のオタクだなんて、誰も想像できないだろうな、ここでは私だけしか知らない。そんなことを思いながら心の中でひとり微笑んだ。
今日は、ちょっと大変な一日だったけれど、知らなかった彼の一面をまたひとつ知ることができて、素敵な日だったな。
そんな気持ちで、タクシーに揺られながら私は静かな満足感に包まれたのだった。