10分ほど経ったころ、れんさんがホームに姿を現した。その瞬間、私は目を疑った。
「えっ…白衣?」
そう、れんさんは白衣をまとい、私の前に立っていたのだ。
「大丈夫?」
少し息を切らせながら、彼がそう問いかけてくる。
「う、うん…でも、首が…グキッてなって動けなくて…」
「どれ」
れんさんは私の言葉を聞くと、すぐに膝をつき、私の顔と同じ高さになるように身をかがめた。そして、迷いのない手つきで私の首にそっと手を当て、優しく触れながら状況を確認し始める。
「ここはどう?痛い?」
「少し…」
「じゃあ、ここは?」
れんさんの手が触れるたび、その動きの確かさと穏やかな声に不安が和らいでいくのを感じた。
「うん、ひねっただけみたいだな。大丈夫だと思うけど、念のためにレントゲン撮っとくか。」
そう言うと、れんさんは私の肩に手を置き、軽く支えるようにして立ち上がった。そして、「さあ、行くぞ」と言いながら、私を駅近くの病院へと連れて行ってくれた。
到着したのは、ビルの中にある新しくて清潔感のある整骨院だった。扉を開けると、待合室には平日にもかかわらず大勢の患者さんが順番を待っている。受付の女性たちが一斉にこちらを見て、ざわつき始めた。
すると、受付にいたベテランらしい女性が駆け寄り、れんさんを軽く叱り始める。
「一ノ瀬先生!急に抜け出すなんて困ります!患者さんが待ってるんですから!」
その瞬間、すべてがつながった。
慣れた手つき、受付の人が呼ぶ「先生」という言葉…。そういうこと?
「えっ、れんさんってお医者さんなの?」と思わず聞くと、彼は何とも言えない表情で目をそらす。
「まあ、そうだな。」
衝撃で呆然とする。そんなすごいエリートじゃん!なんで隠してたの?!
「まあ、それよりレントゲン撮るぞ?」
え、ちょっと待って。今、私の脳みそ完全にフリーズしてるんだけど。まだ状況が整理できてないけど、れんさんに言われるままに動いてる自分がいる。
初診の受付を済ませ、待合室でじっとしていると、診察室かられんさんが姿を現した。
「お待たせ」
白衣姿のれんさんが視線をまっすぐこちらに向けて歩いてくるその姿は…もう、なんていうか…
正直、めちゃくちゃかっこいい!!
やばい、今までで一番、れんさんにときめいてる気がする。
――白衣ってズルい!白衣マジック強すぎ!
私はまるで、またれんさんに恋に落ちたかのように、彼の前で緊張しまくっていた。自分の声が自然と高くなり、れんさんの顔をちらちら見てしまう。ビジュ良すぎ!!!これで医者だなんて、どうなってるんですか?!
「じゃあ、扉を入ったらまず検査着に着替えてね。その先の扉の中に入ったら、放射線技師が指示してくれるから。」
(あ、れんさんがレントゲンを撮ってくれるわけじゃないんだ…でも、わざわざ来てくれたんだ)
その瞬間、れんさんの優しさに胸がキュンとした。
レントゲンを撮られる間は、ただひたすら、れんさんのことを考えて、心臓がドキドキしっぱなしだった。
放射線技師の人が「はい、息を吸って」と言っても、私の頭の中は「れんさん、めちゃくちゃかっこよすぎ!」って、恋愛脳全開で浮かれていた。
私の彼氏、こんなにカッコよくていいの!?