駅に降り立つと、私はホームのベンチに座り込んで、呆然とした。なんとか電車から降りて職場の最寄駅に辿り着いたものの、首の痛みがひどすぎて、足が動かない。
どうしよう、家族は遠くに住んでいて頼れる親戚も近くにはいない。平日の朝だし、友人もみんな仕事中だろう。
「とりあえず、チーフに連絡しよう」
痛みに耐えながら、チーフに状況をLINEで伝えると、すぐに既読がつき、電話がかかってきた。
「橘さん?!大丈夫?」
チーフの声に、少しホッとした。
「は、はい…」
「今の状況じゃ、今日は仕事に来れそうにない?」
「…はい」
「わかった、みんなには報告しとくから、病院行って、治るなら来てほしいわ」
「…え?」
思わず言葉が出なかった。
「周りにもっと注意を払わないとね。怪我なんて、気を引き締めていれば防げるよ」
その言葉に、どこか冷たいものを感じて、胸がざわっとした。
電話を切った後、チーフからのメッセージが届く。「病院に行ったら、すぐに連絡して。」なんだか、首の痛みがさらに増したような気がした。
「どうしよう…」
涙が溢れそうになり、思わずれんさんに電話をかける。こんな時間だから、きっと出ないだろうと思っていたけれど、予想に反してすぐに電話が繋がった。
「…はい?」
声が出なかった。胸の奥から込み上げる感情があふれそうで、必死にこらえた。
「れんさん…助けて」
震える声でやっと絞り出した言葉。瞬間、電話の向こうで静かな息遣いが聞こえた。
「…どこ?」
彼の声は、まるで私を抱きしめるように温かくて、私の痛みを少しでも和らげてくれるようだった。
「〇〇駅のホーム…」
「すぐに行くから、動かないで待ってて。」
その一言に、私の心は軽くなり、涙が溢れそうになった。どうしてこんなにも心強いのだろう。胸がぎゅっと締め付けられるような、温かい気持ちで満たされていった。