ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に揺られながら、私は小さくため息をついた。
今日は特別な7時出勤。普段なら9時出勤で余裕のある通勤時間だが、クリスマス当日は混雑を見越して早めの集合が必要だった。
久しぶりのラッシュアワーにすっかり飲み込まれ、身動きもままならない状況に少しばかり疲れを感じていた。
「女性専用車両に乗ればよかった…」そう思った瞬間、電車が駅に到着するタイミングで急ブレーキがかかった。その衝撃で、隣に立っていた中年男性が私にぶつかってきた。
「っ…!」首に走る鋭い痛み。「グキッ」という音が脳内で響いた気がして、思考が一瞬止まった。立ち尽くす私をよそに電車が再び動き出し、違和感はどんどん強くなっていく。
「嘘でしょ…」額にじんわり汗が浮かび、視界がぼやけてきた。足元がふらつき、身体が倒れそうになる。「ここで倒れるわけには…!」必死に踏ん張りながら前屈みになると、かすかに視界が開けた。
なんとか近くの座席までたどり着き、端に座る人に向かって絞り出すように声をかけた。
「あの…すみません、気分が悪くて…席を譲っていただけませんか…」
声は震え、意識が遠のきそうになる。もう立っているのも限界だった。すると、顔を上げる間もなく、優しい声が聞こえた。
「大丈夫ですか?座ってください。」
驚いて目を向けると、そこにはスーツ姿の男性が私の前で立ち上がり、席を譲ってくれていた。その目は心配そうに私を見つめている。
「あ、ありがとうございます…」なんとか礼を言いながら座る。
電車の振動が体に響くたびに首の痛みがじわじわと増していく。隣の人が心配そうに声をかけてきてくれたが、私はただうずくまるようにして深く息をついた。
「どうしよう…今日の勤務…」
涙がこみ上げてくるのを必死にこらえながら、私は再び動き出した電車に揺られていた。
首の痛み、めまい、そして勤務への不安が押し寄せる中、クリスマスの朝はいつもより長く感じられたのだった。