「れんさん、私のどこを好きになってくれたの?」
ふと、思いついたように聞いてみた。別に深い意味はない。ただ、付き合い始めてしばらく経つから、どうして彼が私を選んでくれたのか気になっていた。それだけのこと。
「んー?」
れんさんは少し首をかしげて、照れ隠しなのか、いつもの癖で頭をガシガシとかいた。その仕草が、なんだか子どもみたいで微笑ましい。
「人当たりがいいところかな?」
ぽつりと呟いた言葉は、少し照れくさそうで、でも嘘のない優しい響きだった。
胸がきゅっと鳴った。こんなふうに褒められるなんて、意識したことがなかったけど、やっぱり嬉しい。
「まあ、仕事柄ね。人と接するのには慣れてるから」
素直に喜ぶのが恥ずかしくて、ついそっけなく返してしまう。
れんさんは、ふっと目線を天井に向けた。そして、いつになく真剣な顔で言葉を紡ぐ。
「いや、それだけじゃないよ」
「え?」
驚いて顔を上げると、れんさんがじっと私を見つめていた。
そのまっすぐな視線が熱くて、思わず目をそらす。けれど彼の声は、私の心の奥深くまで届いた。
「どんな相手でも、ちゃんと向き合おうとするところが好きなんだ。簡単なことじゃないと思うよ」
その一言に、胸がじんわりと温かくなった。
「……そんなの普通だよ」
思わずそう返してしまう。気恥ずかしくて、言葉が素直に出てこない。でもれんさんは、そっと私の手を握り、静かに首を振った。
「普通じゃないよ。そういうとこに惹かれた」
れんさんの手の温もりが、心にそっと染み渡っていく。この人は、私のことをこんなふうに思ってくれているんだ。
「……ありがとう」
ようやく紡いだ声は小さくて、でも彼にはちゃんと届いたみたい。れんさんはふっと笑顔を浮かべた。
「改まるとちょっと照れるけど、たまにはこういう話もいいよな」
「そっちこそ、普段言わないくせに」
そう笑って返すと、れんさんは鼻を触って、また少し照れくさそうに目を逸らした。
こんな何気ないやり取りが、どうしようもなく愛おしい。
このぬくもりが、ずっと続いてくれたら――そう静かに願わずにはいられなかった。