うちの家にはフライパンは小さいのしかない。だから、カレンの家から持ってきてもらおうと思ったが、カレンの家のも小さいらしく、どうしようか悩んでいた。
「聞いたことあんねんけど、キャンプとかだったらホットサンド包むやつで焼くみたいやで。」
「うちにそんなんあると思う?」
「無いよなぁ。」
フライパンを入れている所を探しても、私があまり食べる人ではないから、小さい大きさのものしかない。
「まぁ、これで手返し良く焼くか。」
「そうだな。」
フライパンに油をしき、餃子を並べて水を入れる。そのまま蓋をして2〜3分。待っている間に皿を準備して、蓋をとって水分を飛ばしたら完成。皿にひっくり返して第1弾の12個が完成した。
「「いただきます。」」
手を合わせてから、ひとつつまむ。タレにつけてご飯の上でワンバウンド。口の中に放り込むと、肉汁が広がっていった。
「なかなかいけるね!冷凍食品って感じはちょっとするけど。値段を考えたらいいんじゃない。」
「音羽ちゃん、もうちょっとカリカリに焼いてくれへん?まだ焼き目の部分がもちってしてる。」
「マジで?」
そう言って、2個目を取る。
「ほんとだ。ごめん。」
「ええで、美味しいし。」
第1弾は私は5個食べて、もう一度キッチンに戻る。
「次はもうちょっと水分を飛ばして。」
さっきと同じ手順で焼き始める。今度は水分を飛ばす時間をちょっと長く。いい感じの色になったら皿にひっくり返す。
「はい、第2弾〜!」
「うおぉぉ!」
また座って、ひとつつまむ。今度は上手くできていた。
「うんうん、このカリカリがいい!何か、餃子って感じがするわ。」
「さっきはしなかったってことかな?」
「ちゃうちゃう、こっちの方がってこと。」
「ホンマに?」
「ホンマやって!」
何気ない会話をしながら食べ進める。さっきよりもペースが早い。
「次、カレンが焼いてみなよ。」
「えぇ〜っ。」
「自炊するんでしょ。これくらい出来ないと。」
「分かった。」
カレンは立ち上がってキッチンに向かう。私はその後ろ姿を見るだけ。何やら説明書を読み込んでやっている。手順通りやっていたらまぁ問題ないだろう。
「あっつ!」
カレンの叫び声が木霊した。
「どしたん?」
「蓋の金属んとこ、手当たった。」
「はぁ〜、これで冷やしな。」
保冷剤を差し出す。カレンはそれを手に当てて冷やしながら焼けるのを見ている。
「アンタ、そんなんで自炊できてるの?」
「バレたか。インスタント生活です。」
「不健康め。丁度いいや。簡単な料理ぐらいだったら教えてやるわ。感謝しなさい。」
「マジで!音羽ちゃん、マジ神!」
「よせ、照れる。」
結局、第4弾は私が焼いて、餃子パーティはお開きになった。隣のうるさい住民とも何か約束したし、今年の夏休みは暇にならなさそうだ。