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第44話 期末⑥

 正直言おう。今日が佳境だ。


「やべぇ、論表何言ってるか分かんねぇ。」

「あんなん分かるもんとちゃうやろ。勘や、勘。」

「はぁ、ひい君みたいに勘で点数取れたらな。あぁ、今回欠ったらやばいのに。」

「そうそう、それは私も。」

「おい!そこの天才2人!なんで俺だけに回してん。」

「「今勉強中。」」

「おい!そこで組むな!」


俺も結構やばいんだっちゅーの。じゃなくてマジでやばい。どれくらいかって?ん〜、millennium paradeと川谷絵音がプロデュースしてるバンドが集まるくらい。


 いやね、君たちもやばいと思うんですけどね、俺も俺で平均以上取らないと安心できない性格なんですよ。ね。


「はあぁぁぁ、何で君たちは昨日RINEで聞いてこないんですか?」

「あっ、その手があったか。」


奏が分かりやすく手を叩く。だろうなとは思っていたが、やっぱりか。


「しょうがねぇから30分までに聞きたいこと全部聞け。」

「はい!ひい君!範囲を教えてください!」

「次は?」

「ひい君、酷い!酷すぎる!」

「お前にそれ言われても何とも思わんねんな。残念ながら。」


きいは明らかに不服そうな顔をしてる。自業自得だ。


「じゃあ、次私ね。ここが何で4にならんのか分からんねんけど。」

「それはな…」

「なるへそ。じゃあ、ここは?」

「えっと、そこは確か…」

「そゆことね。じゃあ私は奏にパスして自分の勉強に戻るわ。」

「家庭科ヤバいんだってな。頑張れよ。」

「おう!」


海南さんは今日の教科の2/3が追認の可能性があるらしい。本当に頑張れ。


 奏の方に目をやると、何やら必死に問題集に書き込んでいる。問題を解いているのか?


「奏は?」

「何となくわかるから大丈夫。俺が分からんとこも楓と同じやったから、隣で聞いてた。ありがとな。」

「お、おう。」


若干、声に尖っているものがあったが、そういうことだろう。たぶん。


「俺もやるか。」

「ひい君、私は?」

「関係詞と比較だ。自分でやれ。」

「けちー。」


俺は知っている。きいが家でほぼパーフェクトまで仕上げてきていることを。どうせ問題集は10回近くやってきているんだろう。今回はガチとか言ってたし。


「これ乗りきったらアニメ解禁!」


そんなことを呟いて、俺は問題集を見ていた。


 カリカリとシャーペンが削れる音とペラっと紙をめくる音。俺は終わったが、みんなはまだやっているのか。


―キーンコーンカーンコーン


テストが終わった。時間は11時40分。昼に掛かり着ているが、空腹は感じない。テストが終わった安心感と睡眠欲に満たされていた。


「んぐぐぐぐぐ。」


固まりそうな体を伸ばす。首とか肩甲骨とか腰とかがピキピキ言っているが、それだけ頑張ったんだなって思う。


 この後はテスト返却が少しある。そんなこともお構い無しに俺たちは集まっていた。


「春休みどうする?」

「やっぱり来ると思った。」


この会議が開かれるのは俺の机。いつもの事だが。


「じゃあ、行きたいとこみんなで言おうか。」

「だね!じゃあ行っくよー。せーの!」

『花見キャンプ!』


珍しく、全員一致だった。なかなかこのグループでこういうことがなかったから、少し嬉しいような気が。


「あと、普通に花見もしたくね。」

「確かに、聖地巡りとか。」

「なら京都か。」

「Q、そういうことには詳しいね。」

「だろ。」


俺の印象、オタクになっているのか。悪い気もしないでもないけど。


 先生が入ってくる。手に4つの封筒を抱えて。


「じゃあ、詳しいことはKYUKA組で。」

「おけ。」


俺たちは一旦解散。テスト返却の注意事項を聞いて、テスト結果を貰いに行く。


 俺は今回も『一日目のジンクス』が発動し、KYUKA組の中では、きいと海南さんを除いたら現在最下位である。あと8教科。




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