――上映終了。映像を通常通りに切り替え。
聖奈、モニター設備の前から振り返り、入り口上部角の監視カメラを確認。
「ノーベル賞受賞当時、博士が講演しに来日した際のニュースね。こんなところにあるはずない記録だけど、勝手に映しだされた時点でやぼなツッコみか」
聖奈がパネルを操作。監視カメラの映像を閲覧。
「所内に残ってるのはあたしだけみたいね。すると根本の仕様から異変に換装されたか、従来のままか。……
システムが聖奈の呼び掛けを感知。合成音声にて応答。
『はい、発言をどうぞ』
「ログイン情報を確認。あたしは誰?」
『あなたは、スケーリーフット社パリ支部研究所名誉副所長、詩江里聖奈です』
「監視カメラで中央ホールを映して」
『アクセス拒否。セキュリィティはロックされています。現在、スケーリーフット社パリ支部研究所はH102によって統合管理されており、レベル5の領域に許可なく介入することはできません』
「使えないわね。あたしがH102よ、って言ったらどう?」
『アクセス不可。H102の声紋認証が可能なエリアは中央ホールに限定されています』
「ふーん、いい度胸ね。来いってことか」
聖奈、警備室の端末を操作。
「所長室の鍵があればいいんだけど……。COM。あたしがこの部屋に入って以降、所内に目立った変化はない?」
『一階、裏口に侵入者が一名。――ただいま退去しました』
「え、開かなくなってたのに。記録映像はある?」
『はい』
「それ、モニターに表示して」
『了解。中央モニターで再生します』