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ヘレナ・アーカイブ2

 ――ワープにより、詩江里家の一戸建て住宅前に帰還。

 ……時空間の歪曲を感知。大異変が発生中。


「うおおおおおおおぉーーっ、つかまってたまるかあああああぁーーっ!!」


 南方祝馬の音声を聴取。


「あっ、ヘレナだよなっ! 助けてくれぇーー!!」


 声の主。聖奈の言うところのやぼったい私服姿で、住宅街の数ブロック先より自転車に乗って急速接近中。


 ――祝馬の背後に異変を検知。

 グローバルネットを検索……完了。〝口裂け女〟と認識。

 危機的状況と判断。救出のため、発言します。


「ドレス型ウェアラブルスーツ正常。修正ナノパッチ論理科学分類作動、システムオールグリーン、セーフティロック解除、対ショック対異変防御オン、異変エネルギー充填120%」


 真横を祝馬が通過、背後で転倒。わたしは生成した〝べっこう飴〟を手に握り、口裂け女に向けて腕を振りかぶります。


「――局所的異変発動!!」


 ――標的との距離、数ミリメートル。

 べっこう飴を投棄。

 標的、消し飛びました。


 ……エネルギーの高さのため観測可能範囲の宇宙も消滅しましたが、局所的異変の制御により修復。標的以外への被害はなかったことにしました。


「あ、ありがと」


 後ろで転んでいた祝馬、起き上がりつつ発言。衝撃で若干壊れた自転車をそのままに、息を整えつつこちらに歩み寄ります。


「いやあ、修正パッチ入りの汗が後ろに飛んでたお蔭か追いつかれなかったけど、倒すには足りなくて困ってたよ。で、さっきのなに? なんか一瞬、とんでもないこと起きた気がしたけど」


「はい」返答します。「グローバルネットで検索し、口裂け女への有効な対策手段とされていたべっこう飴を破壊不能の状態で構成。通常物理法則で最速の光速でぶつけました。対象は妖怪ともされますが人間ともされるため実体も持っており、効果はあったようです」


「……それ、べっこう飴の必要なくね?」


 詩江里宅の玄関扉開閉。


「なに、なんの音よ?!」


 そこから、聖奈が発言しつつ表に出てきました。慌てているようです。


「あ!!」こちらに感づきました。「ヘレナ、あなたどこ行ってたの!?」


 応答します。


「はい、ギュスターヴ教授の指示で約40億年前の地球にいました」


「よ、40億ゥ?!」


 祝馬、仰天。


「40億年?」発言は聖奈。「……そういうことね」

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