お客様用の寝室に招かれ.....。
言い方で誤解されそうなので説明すると、数分前にアイリスから聞いていた私と話したい人が数名。
その人達が今、客室にいる。
一人はアレン殿下らしいけど、なんの話なんだろう？
客室に入ると窓辺にはノア先生とオリヴァーさん、それにキースさんが姿勢を正して立っていて、ソファには殿下とイアン様が座っている。
部屋に案内してくれたアイリスは軽くお辞儀をして部屋を出ていく。
私はどうすれば.....。
悩んでいるとノア先生が「どうぞこちらへ」って、声をかけてきてくれた。ノア先生に誰も座っていないソファに案内された。
私は殿下とイアン様が座ってる向かいのソファに座った。
多分、聞かされてないのは私だけだと思う。
ここに居る全員が真剣な面持ちでイアン様を見ていた。
それはイアン様に関わる話だからなのだろうが、私も呼ばれたということは私にも関係がある話？
「さて、話をしようか。イアン殿」
殿下が口を開くと、イアン様が一息ついてから口を開いた。
「アレン様、この度は大変なご迷惑をおかけして申し訳ありません。全てお話し致します」
迷惑.....？
どういうこと？ 殿下に迷惑かけたのなら、なにもここじゃなくても。
「ソフィア様は知らないんですよね。イアン・クリスタ様は最近まで行方不明になっていました。私も探してたんですが、昨日見つかったと報告受けまして、状況がわかってないのもありますから、場所を移動するのは難しいと判断しました。なので、イアン様が見つかったこの屋敷で話を聞こうと思いまして」
ボソッとノア先生が耳元で教えてくれた。
「それなら、お義父さまは？」
「今は殿下の屋敷でしょう。イアン様をどうするのか話し合いされるそうで」
「それってどういうこと？」
イアン様が行方不明になってて、昨日見つかった。
状況がわからないのにイアン様を連れて国王陛下がいるお城にまでは行けない。
普通なら皇帝のところに向かわないと行けないだろうが、見つかった場所がミットライト王国。
国王陛下に状況を説明して、それから皇帝陛下に状況説明。
イアン様が屋敷に帰れるのはその後。
ただ、どうするのかという言葉に引っかかる。
屋敷に帰すんじゃないの？
「.....ソフィア様が思ってるほど、単純な話ではないということです」
ーーっ！？
聞きたいことが山ほどある。が、今はイアン様の話を聞く方が先だ。
私はノア先生からイアン様の話に集中した。
あれ？
殿下がいるのに声を潜めて話すのは宜しくないような.....。
そう思って不安になった私はアレン殿下を見る。
殿下と目が合うと彼はクスッと笑った。
ノア先生を見ると微笑みながら軽く頷いていた。
殿下がいる前で声を潜めて話すのは罪になってもおかしくない。
殿下は笑って、ノア先生は微笑んでるし.....。
同意の上ってこと？
どうして殿下は私にそこまでするのだろう。
「俺が騎士の家系なのは知ってるだろ。俺は色んな人からの期待を背負って生きている。それは今も変わらない。だけど俺は.....いや」
イアン様はなにかを言いかけてやめた。
私はゲームでイアン様を攻略してるからなにを言いたいのかすぐにわかる。
その言葉は口が裂けても言えない。それがイアン様の重みになっている。
わかっていても、イアン様のフォローが出来ない。
例えフォローしたとしても、
「今後のことで悩んでいたら、これを飲むと気持ちが楽になると言われたんだ。ある男から」
『ある男』と聞いた途端、その場の空気が変わった。
「誰なのかは分からないが、体が勝手に動いて薬を飲んでしまったんだ。俺の意志とは関係なしに」
「体が勝手に.....？」
「なにか知ってるのか？ キース」
イアン様の言葉に反応したキースさんに問いかけるようにオリヴァーさんが口を開いた。
「あっ、えっと.....。ありえない話だと思いますので」
「いいよ。話を聞こうか」
戸惑っているキースさんに殿下は頷くと、キースさんも頷き返して話を続けた。
「
カース.....！？
カースって、闇堕ちした.....あの！？
ゲームだと登場はしてないものの、魔界と人間界を繋げ、空間を歪めたとされる人物。
歪めたことによって悪魔召喚が可能になった。
なら、そのカースさんを止めれば悪魔召喚は出来なくなる。
一つ、死亡フラグから遠ざかる。
けど、私の期待はキースさんの言葉で一瞬にして崩れた。
「ですが、カースさんは三年前にこの世から去りました。ですからありえないんです」
