「じゃあ行ってくる。火曜日の昼には戻って来るから」
「では行きましょう、
玄関を出ると、すでにスタンバイしていた裕子さんが俺を呼ぶ。
「行ってらっしゃーい」
「お気をつけて」
「お土産、待っているべよ」
倉ぼっこ、
彼女が週末にこちらに来た日は、一緒に東京へ向かう。
当初は飛行機で月曜日の早朝便に……と裕子さんは言っていたが、
さすがに公私混同が過ぎるという事で俺が止めた。
今は日曜日の夕方。このまま新幹線で東京に向かい、そして彼女の家に泊まって
翌日の月曜日に出勤、という形を取っている。
「じゃあ行こうか。忘れ物は無いね?」
車に乗り込むと、彼女が助手席でシートベルトを締めながら、
「あー……妖怪さんの中に空を飛べるコっていないのかしら。
人を運んでくれるような」
「飛行機には勝てないと思うけど」
「だからせめて、駅前まで送ってくれるような?」
「いやー、どちらにしろ絶対人の目につくだろうし」
「姿を見えなくしてくれるコとか―――」
「妖怪というより、便利な能力選びになってる?」
そんな会話を彼女としながら、俺は駅へと車を走らせた。
「おはようございます」
翌朝、俺は出社すると職場のみんなにあいさつする。
初めて出勤して顔を合わせてから、すでに一ヶ月弱。
だいたいのポジションや顔も覚えて来た。
プロジェクトリーダーを裕子さんがやっているだけあり、スケジュールもかなり
余裕を持って見積もられている。
担当者も的確に振り分けられ……日本企業にありがちな、
『今、手が空いているヤツがやればいい』的な仕事が無い。
「あれ?」
サブリーダーとして、俺は一応全員の出席に目を通すが、
「グラフィッカーの人、1人お休み?」
「あー、はい。今朝がた連絡がありまして―――
社員の一人が返事と共に状況を返してくれ、
「そうか、最近寒くなってきたしね。
みなさんも気をつけて。
無理しないで、体調がおかしい時は休んでください」
あちこちから「はーい」「はいっ」と声が聞こえ……
俺は自分の机のPCで作業に入った。