都内の寂れた場所にある、五階建ての古びたビル。
そこに一人の男が訪れていた。
男はエレベーターに乗り込むと、そのまま最上階に向かう。
扉が開くと、そこにはビルの外見には似つかわしくない、最新鋭の
研究機関のような光景が広がっており―――
「
今日はどんな用件で?」
アラフィフの眼鏡の会社員らしき男性は、質問をしてきた中肉中背の
二十代後半の青年と向き合う。
「妹の
「ああ、確かある男性の居住地を突き止めて欲しい、という事でな。
東北のとある山奥という事だったが……
結局、狐や河童、座敷童がいただけだと聞いておる。
特に実害も無かったので放置したと。
まさか、戻っていないのかね?」
初老の男性の質問に彼は首を左右に振る。
「いや、戻って来ている。
『表』の仕事である会社員も充実しているようだ。
相変わらず『裏』の方は甘いようだがな」
「はあ。それで何か問題でもあったか?」
すると琉絆空様と呼ばれた男は、備え付けのソファに腰かけ、
「……ある男の住所を調べた。本当にそれだけか?」
「と言うと? 何か不審な点でも―――」
青年の方は両腕を胸の前に組み、会社員ふうの男は眼鏡の位置を直す。
「いや、加奈が最近、土日にどこかへ泊りがけで出かけるように
なってだな。
どこかで彼氏でも出来たんじゃないかなあ、って」
「……加奈ちゃんだってもう立派な大人だろう。
彼氏の1人や2人くらいいるわい」
初老の男性が呆れながら答えると、
「やだやだやだー!!
妹に彼氏が出来るなんて、お兄ちゃん絶対に認めない許さない
容認出来ないいぃいいい!!」
「仕事の邪魔だから帰ってくれんか」
ジタバタと子供のように暴れる二十代後半児を前に、
初老の男はため息をついた。