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第106話・主様視点01


アタイは鬼。この山の、そしてここら一帯のあやかしの主だ。

そんなアタイは今、一つの問題に直面していた。


きっかけは銀にれたという人間の女子の兄、琉絆空るきあから一目惚れ

された事なのだが、


アタイとしても告白は初めての経験であり……

また好きだと言うそやつの感情を無下にする事も出来ず、


一応、念のため、あくまでも『その時』に備え―――

しみゅれーしょん・とれーにんぐを行っていた。


そんな時、琉絆空が人間としての身分証を用意してくれたと、

倉ぼっこと野狐やこが伝えに来てくれた。


これはますます本気かと、アタイとしても覚悟を決めなければ

ならないと思っていたのだが……


「何が問題なんですか、ぬし様」


「確か裕子さんと加奈かなさんから―――

 殿方とのがたを落とす方法を伝授されたと聞いておりますけど」


そう、人間である彼女たちから、殿方を満足させるいろいろな

やり方が記録されているDVDをもらい、


アタイもそれを見ていめーじとれーにんぐしていたのだが、


「足りぬ……足りぬのじゃ、この体では」


アタイの言葉に彼女たちは首を傾げるが、


「むっ胸が―――足りぬのじゃあああ!!


 めぬ!

 挟めぬ!!

 揺れもせぬ!!!


 こんな貧相な体では、どうあがいてもあのDVDにあった技の習得は

 不可能なのじゃ……」


理奈と詩音が横目になって視線をそらす。


「いやあ~……

 ぼ、僕にしてみればその若い外見がうやらましいと思いますが」


「あ、アタシは男なのでその、胸はもともとありませんけど―――

 でも手とか口とかで? いろいろ? 他に方法はあるかと」


どうにか言葉を選んでアタイをなぐさめているのであろう。

アタイもついこ奴らに当たってしまった事を反省する。


「ど、どうでしょうか。

 週末になればあのお2人もまた、この里に来るでしょうから」


「その時にまたご相談なされたら……」


2人の提案にアタイはうなずき、


「そうじゃのう、あのDVDをアタイにくれたのは両人であるし、

 何か策を授けてもらうとしようか」


アタイはそう言うと、2人をいったん帰らせた。



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