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第129話・瑠奈視点01


「ああもう、びっくりしたぁ~。

 いきなり瑠奈るなちゃん、全力で地雷を踏み抜くんだもん!」


「だからごめんってば」


メイド喫茶からの帰り、秋葉原駅構内で―――

水樹みずきちゃんが頬を膨らませながら怒る。


「……確かにアレはバッドジョブ……

 でも、お姉さまの男の方の声が聞けたから、それはグッドジョブ……!


 あの美声、脳が溶ける……!

 今日は絶対録音リピートしながら寝る……!」


一花いちかちゃんがもともとジト目の目を、より妖しく暗く光らせ、


「え? 録音なんていつの間に―――」


「な~に言ってるのよ。あの後詩音お姉さま、店内を巡りながら

 挨拶してたじゃない。

 そのチャンスを逃すようじゃまだまだね」


あたしが聞き返すと、ショートヘアーの細目の友だちが人差し指を

振り子のように揺らす。


確かにあの時、私があまりの綺麗さに目を見張ったのは事実。

でも質問してしまった原因はそれだけじゃない。

そして本当に質問したかったのも、性別の事じゃない。


本当はこう聞こうとしたのだ。


『その耳とシッポは?』と―――


まるで某カップ麺のCMのごとく、詩音さんには狐耳とシッポがあり……

耳はピコピコと、シッポはふさふさと揺れ、


寸前で質問内容を変え、あんな事になってしまったのだ。


「えっと、あそこコスプレもしているんだっけ?」


「ん? やっている日もあるんじゃないの?

 確か和装とかアニメキャラとか」


「……ほう……それはぜひ、見ておかねば……

 次の詩音お姉さまの勤務日は……?」


この反応を見るに、やはり水樹ちゃんや一花ちゃんには

見えていないんだろう。


でもなんだかなあ、私にそんな霊感とかそんなものあったかな?

いやそもそも詩音さんって何者なのか―――


一人でモヤモヤしたものをかかえつつ、私は2人と一緒に

電車に乗り込んだ。




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