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第275話・『魔』との邂逅04


「しかしまあ、俺たちへの勧誘の動機はともかく―――

 そんなに強いのか?」


ふと俺の疑問を口に出したところ、


くらいが違うのう」


鬼娘の舞桜まおさんが答える。


「位?」


「格が違う、という程度であればの。

 番狂わせや格下が勝つ、という事もある。


 だが位が違う、というのはどうにもならん。


 必ず勝つ方が勝ち、負ける方が負ける」


俺が聞き返すと、彼女は続けて語り……

あやかし全員と弥月みつき兄妹がうなずく。


「あーねー、アレだよ。

 例え最低レア度の中の一番強いカードであっても、

 最高レア度の一番弱いカードには絶対勝てない。


 って言えばいいのかな」


加奈さんの言葉に、女子高生3人組がウンウンとうなずき、


「それだけ差があるという事ですか」


「確かにRは、SSRに勝てないわね」


「……それは不可能、絶対の壁……!」


何ていうかそれで納得出来てしまうようだ。

かく言う俺も業界の人間だから理解出来るけど。


「しかし、何で俺なんでしょうね?

 この中から言ったら琉絆空るきあさんの方が先にスカウトされるような」


俺が彼に話を振ると、


「一応、妖を狩る一族ですからね……

 『』とは無関係ではありませんが、相手にされていないというのが

 本当のところでしょう」


「そのへんは安武やすべ殿や雲外鏡うんがいきょうと五十歩百歩であろう。

 基本、あやつらは気まぐれかつ興味のある者にしか手を出さないから」


琉絆空さんと舞桜さんが微妙な表情で語る。


「どうして満浩みつひろさんは目をつけられたんでしょうか」


裕子さんが心配そうな表情で問うと、


「いやまー……」by理奈


「フツーに人外であるオラたちを受け入れて、

 フツーに一緒に暮らして」by銀


「そういう事を自然に出来て、しかも全く変わらずにいる人間って」by詩音


持ち上げられているのか落とされているのか、よくわからない

感情になる。


「しかし、『魔』にならないかとは言われても。

 『魔』って何をするんですか?」


すると琉絆空さんが両腕を組んで、


「弥月一族もその存在は知っておりましたが、正直情報量が

 足りません。


 ただ、『魔』になれば―――

 人間はおろか、ここにいる妖たちが束になっても勝てない

 『力』を得る。


 それだけは確かな事かと」


「いやいったい何と戦わせるつもりなんだか……

 雲外鏡さんは?」


細面の青年は眉間にシワを寄せて、


「あの妖力ようりょくの高さは確かに魅力的ではあるが―――

 オーバーキルもいいところだからな。


 少し考えたくはある」


その後、みんなを交えて議論したものの結論は出ず……

相手の出方待ち、という事になった。




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