「く……っ!!」
「ど、どうしたんですか?」
俺が慌てて介抱するために近付くと、
「やれやれ、ようやく去ったか」
「しかし
よく平気でしたね」
そこには、赤い肌のナイスバディの鬼娘、
その恋人である
「お2人も夜風に当たりに来たんですか?
今まで、山本さんという方がいて……」
「
この目で見るのは初めてじゃが」
「自分や加奈、あと妖たちは全員気付いていたよう―――
舞桜さんがそれとなく『知らぬフリをしておけ』と指示を出した
おかげで、宴会はそのまま進んでいるけど」
2人の言葉からすると、あの山本五郎左衛門という人物の存在は
どうも認識していたようで、
「有名なんですか? あの山本さんって」
俺がそう言うと俺以外の3人がそろって大きく息を吐き、
「ともかく、その事については宴会が落ち着いてから話そう。
旅館の人間にも知られてよい話ではないでな」
と、舞桜さん主導で―――俺たちはいったん宴席に戻る事になった。
「さて、どこから話したものか」
宴会が終わると、俺たちは詩音&女子高生3人組が泊まる部屋に
集まっていた。
人数の関係上、ここが一番宿泊部屋の中で大きかったからだが、
それでもぎゅう詰め状態でみんなが座る。
「帰ったべか―――良かった」
「アレ何!?
今まで生きてきた中で一番意味不明過ぎる妖力を感じたんだけど!」
日焼けしたような褐色肌の青年・銀と、まだ高校生くらいに見える
黒髪ロングストレートの女性、理奈が吠えるように話す。
「万が一の時はこの子たちをどうやって逃がそうとするかで、
正直頭がいっぱいでしたわ」
「あれが『
いやぁガチでお母さん並みの恐怖を感じたわ」
長い銀髪の女性のような外見を持つ詩音と、ポニーテールの弥月兄妹の
妹の方の加奈さんが身震いしながら語る。
「シャレにならねぇな、アレは」
「舞桜さんが気付かないフリをしろって言っていたけど……
確かにスルー一択しかなかったよ」
ボサボサの短髪の青年・
気弱そうな同じ年くらいの男性・
「私たちはすぐさま、雲外鏡様の元へ行きたかったんですけど、
舞桜さんに止められて」
「今思えば、それで正解だったのでしょうが……」
眼鏡の女性、
ショートカットのボーイッシュな雪女さんは悔しそうな表情になる。
「ありゃあ役者が違いやす、仕方の無い事かと」
「無理無理! 絶対無理にゃあんなの!!
このメンバーでも全力で戦って、誰か1人でも逃げられれば
御の字にゃ!!」
ざんばら髪の青年・
姫カットの髪型の女性、
一方で片目を髪で隠している少年……
一つ目小僧の
「敵対では無かったのでしょうね。
もっとも、敵対するほどの戦力とも認められていたかどうか。
しかし、雲外鏡様と
勧めて来たとはいったい―――」
一通り妖怪たちの評価が終わると、今度は人間側が顔を見合わせ始めた。