「『
それはいったい―――」
それを聞いたリクルートスーツ姿の青年は、アゴに手を当てて、
「まあ簡単に言えば、
しかし候補者が、それも一度に2人もおる場に出くわすとはなあ。
長生きはするものよ」
その提案に対し
「それはいかなる理由でだ?」
すると
「なりたくはないのか?
貴公は人間から
それが何をためらう事がある?」
どうも彼の境遇も知っているようだが、そこで俺は口を挟み、
「いやいや、転職とかじゃないんですから。
そりゃ理由は聞きたいでしょう」
俺がそう言うと青年は目を丸くして驚き、やがてそれが微笑みとなり、
「……はははっ!! 確かにそうだな。
それに
そちらとは違い、『魔』となる事への説明は必要であろう」
大笑いすると、彼はいったん落ち着いて、
「まあ、人に
貴公ら2人にはその素質がある。
もっとも、なる理由やなった後にその力をどう使うかは
当人次第だが」
わかったようなよくわからないような―――
これって結局、『そうなる』素質はあるけど、『そうなる』理由は
無いって言ってないか?
そう思っていると山本さんは苦笑し、
「そういう事だ。
雲外鏡殿には『魔』となる理由も動機もあるだろうが、
貴公にはそれが見当たらぬ。
だが『力』を持つ事そのものは悪い事ではない。
言い換えれば、その『力』を持つ資格がある……とでも言えばいいかな?」
考えが読まれているのか?
やはり、目の前の存在は人外―――
ここはどう答えればいい? と戸惑っていると、
「すぐにどうこうする気は無いし、決断を迫るような事もしないから
そこは安心してくれ。
興味があれば我から出向こう」
彼はスッ、と名刺を渡して来て、困惑しながら2人で受け取る。
「それでは、また……
あ、他の方々にもよろしく」
山本さんは一礼すると、そのまま月夜の闇に溶けていった。