ん……何だ?
確か俺は、女子高生3人組に誘われて、それでホテル街の方へ……
その後の記憶が……
しかし何だ? 誰かの声が聞こえるが―――
「ああ。確かにこちらに引き渡してもらった。
以前も実験体として使ったんで、途中から引き続き検証出来る」
引き渡した……何の話だ?
実験とか検証とか、何を言っている?
「あ、どうやら目を覚ましたようだが。
何か話す事は……そうか。
ではこれで、失礼を」
目を開けるとそこには、どこかのマンションの一室のような光景が
広がっていて、
「お目覚めかな、
細面の、まだ若い青年が両手を広げて俺に語り掛ける。
「んだテメェ……っ!?」
俺が立ち上がろうとすると、後ろから誰かに取り押さえられ、
「ほら、やっぱり縛った方が良かったんじゃないか?」
「しかしコイツが安武さんの兄とは……世の中狭いものです」
首だけ後ろに振り返ると、そこにいた1人の顔を見て驚く。
「お、お前はあの廃ビルにいた―――」
「覚えておいででしたか?
いやー、たいしたケガじゃなくて良かったですねえ」
気弱そうなその男は、申し訳なさそうに笑顔を浮かべ、
「誰なんだよテメェらは? それにここはいったい……」
「まあまあ。おい、放してやれ。
何だその名前は? と思い後ろに振り向くと、
「っ!?」
烏天狗と呼ばれたボサボサ頭の男の背中には、黒いカラスのような羽が生え、
そして煙羅煙羅はゆらりと煙のようにゆらめく。
「なっ、な……っ!?」
「ああ、自己紹介が遅れたかな。
俺の名前は
あなたの弟さんに少々縁のある者だ。
兄に、実入りのいい仕事を紹介してくれとの事で」
弟……
何でアイツがこんな連中と―――
「まあまあ、ボス。
そんなにいじめちゃ可哀そうでしょ」
「そうそう♪
私たちはあくまでも、合法的な存在なんですから―――」
そこへ、眼鏡をかけたセミロングの秘書風の女性と、ショートカットの
ボーイッシュな同性が加わる。
そこで俺は強制的にソファに座らせられ、『話し合い』に応じる事となった。
「投薬試験だぁ?」
雲外鏡と名乗る男と対面で『交渉』はスタートした。
「ああ、以前のものはまだ未完成でね。
それに実験対象もランダムだった。
だが君は結構いい線を行っていたからね。
探していたんだ」
道場の者と名乗るヤツにドラッグをもらった事があったが、
それはコイツらの仕業だったって事か。
おかげで酷い目にあったが……
「じゃあ、あの女子高生3人組もアンタらの仲間か?」
「
ま、狐に化かされたと思ってくれればいい」
化け猫の次は狐かよ―――と俺がうなだれていると、
「改めて君にお願いがある。
あの薬の投薬対象になってもらえないだろうか。
もちろん報酬は弾む。
金額はこれくらいでどうかな?」
彼はスマホの電卓アプリでその金額を提示して来た。
えーっと、ゼロが1,2,3,4……
「……は? 億?」
思わず俺が口にすると、
「新薬完成の
そのくらいどうという事は無いさ。
だが危ない橋だ。渡るも渡らないも君次第―――」
「……いいぜ。やってやろうじゃねぇか」
そして俺は、彼らに『協力』してやる事にした。