「はあ、そんなにあっさりと契約書にサインしたんですか」
数日後、俺は東北の家で―――
『そうだな。こちらは金を払い、彼は実験対象として肉体を提供する。
実際に金も振り込んだし、それを見たら勝ち組だ何だとわめいていたよ。
こちらも思う存分やれるってワケだ』
彼の話からすると、
軟禁状態になるらしい。
「しかし、契約内容って……
『新薬の完成および副作用の完全な安全性の確認まで』でしたっけ?
それまでずーっと外に出られない生活って、わかっているんでしょうか?」
『さてなあ。
あちらさんの頭の悪さまでは知った事ではないからな。
まあ、副作用の完全な安全性の確認はこちらで決めるので―――
下手をすれば一生かも知れんが」
昔からアイツは自分が頭が良いと思い込んで、それで結構痛い目に
あっているはずなんだが。
目先の金に釣られて、深く考えずにサインしたんだろうなあ。
『それと、
実家のご両親にもお伝えするようにと彼に言ったからね。
お2人とも、やっと定職に就いてくれたと泣いて喜んでいたそうだよ』
アイツが行方不明になったと知ったら、まずあの
騒ぎ出すだろうからな。
そこでそちらも手を打っておく必要があったのだ。
「ま、これであのバカも少しは―――
世のため人のため、
今アイツはどうしていますか?」
『一応、身の回りの世話は
ご機嫌のようだよ。
まあ真相を知って暴れたりしたところで、あの2人には敵わんだろう。
しばらくはいい夢を見させてやるつもりだ』
それを聞いた後、お互いに2人で笑い合い……
俺はスマホでの通話を終えた。