俺たちはお金が溜まってきたので、家を借りることにした。カプセルホテルや漫画喫茶を転々とする暮らしも悪くはないが、住む場所がないというのは何かと不便だ。ただ問題は、住所不定無職の俺たちが、家を借りることができるかどうかだが……。
そこで、とある不動産屋で家を探してみることになった。
俺たちがやってきたのは、見た目はごく普通の不動産屋だ。しかし、ここは普通とはちょっとだけ違うところがある。それは、夜の街周辺の賃貸に特化した不動産屋だということだ。
夜の街には、訳ありの者が多く集まる。どんな仕事をしているのか明かせない者や、保証人が用意できない者も多いはずだ。しかし、彼らも夜の街周辺のどこかに住んでいる。そういう者たちに家を紹介しているものが、当然どこかにいるというわけだ。そのうちの一つがこの不動産屋というわけだ。
ここならば家も仕事もない俺たちでも、住める場所が見つかるかもしれない。そう思い探してみると、あっさりと住む場所が見つかった。相場より少々家賃が安く建物は古いが、内装はリホームによって綺麗になっているところだ。思ったよりも住み心地は悪くなさそうだ。
住む場所が見つかると、メイはますます稼ぐようになった。家にパソコンを置き、株やFXトレードを始めたのだ。僅か数日でお金が膨れ上がり、どんどんお金を稼ぐ。
こうなってくると、俺はもはやただのヒモだ。何故メイは俺と一緒にいるんだろう? もう一人でも生きていけるだろう。というか、これほどお金を稼ぐ能力が高いのに、どうして山の中で倒れていたんだろう?
俺はただ、邪魔になっているだけじゃないか? せめてなにか手伝えることはないだろうか?
「なあ、俺にもなにか手伝わせてくれないか?」
「ご主人様のお手を煩わせるわけには……。いえ、一つお願いできますか?」
メイは振り返り、俺の顔を見た。すると意見を変え、手伝ってほしいと言った。
「いいよ、なにをすればいいんだ?」
「とりあえずこちらへ来てください」
俺はメイの座っている椅子のところまで近づく。すると、彼女は自分の膝をポンポンと叩き
「ここに座ってください」
「え?」
聞き間違えか? 膝の上に座れと言われなかったか? なんだ? 彼女は人に乗られるのが好きなのか?
「いや、俺は重いと思うが……」
「手伝ってはくれないのですか……?」
「いや、でも」
「私なら大丈夫ですから。さあ」
俺はメイに促され、ゆっくりと彼女の膝の上に乗った。目の前に置かれているパソコンには、謎のグラフと数字が並んでいる。おそらく株価か通貨のグラフなのだろうが、俺にはよくわからない。
「なあ、本当に大丈夫か? 重くないか?」
「ふふふ、全然重くありませんよ。むしろ心地よい重さです」
「それで、俺は何をすれば?」
「ここにいてくださるだけで充分です」
そういうと、メイは後ろから俺を抱きしめてくる。背中に柔らかい感触が当たる。
「うわ、何を!?」
「お金を稼いでいる間、ご主人様にキスできないのがずっと不満でした。ですが、こうすればキスしながらお金を稼ぐことができまね。とても捗ります」
そういうと、彼女は俺を片手で抱きかかえながら俺の服の中に手を入れてくる。抵抗するが、力が強く敵わない。
「ご主人様、力を抜いてください。何も心配しなくて大丈夫です。私が気持ちよくして差し上げます」
メイは俺の耳にそっとささやいた。そして、首筋に何度もキスを雨のように降らせる。
ちょ、ちょっとまって! あっ。
「ふぅ。エネルギー補充完了です」