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第78話 EP11-5 転入生

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 中学生ちゅうがくせい学校がっこうにいるのだから、制服せいふくている。男子だんしくろ学生服がくせいふく女子じょしあかいスカーフのセーラーふくである。


 狭聖きょうせい教団きょうだん教祖きょうそ喧嘩けんかったアイドル、だいだい アカリの護衛ごえいをすることになった。あれから数日すうじつ、アカリにってすらいない。予想よそうはしてたけど、ちゅう新人しんじんアイドルのプライベートの護衛ごえいなんて、こんなものだろう。


 あさ空気くうき欠伸あくびする。オレと桃花ももかせきあいだ不自然ふしぜん位置いち通路つうろのはずの場所ばしょに、なぜか今日きょうからせきえてる。いや予感よかんがしないこともない。


「はい、全員ぜんいんせきいて」

 あさのホームルームの本鈴チャイムった。担任たんにん谷口たにぐち教壇きょうだんった。いつもながら、あさからつかれたかおをしている中年ちゅうねんおとこだ。

突然とつぜんですが、転入生てんにゅうせい紹介しょうかいします。おどろかない、さわがないようにおねがいします」


 騒々そうぞうしい教室きょうしつが、さらにザワついた。

 廊下ろうかから教室きょうしつはいって、谷口たにぐちよこに、つよそうなポーズで背筋せすじのピンとびた女子じょしつ。

「えーっと、お仕事しごと都合つごうで、短期間たんきかんだけ一緒いっしょ勉強べんきょうします。みな特別扱とくべつあつかいせず、おなじクラスの仲間なかまとして、仲良なかよくしてあげてください」

 谷口たにぐちおもそうに、つかれた口調くちょう紹介しょうかいした。


だいだい アカリよ。よろしく」

 アカリが、微塵みじんこびもない大きデカ態度たいど挨拶あいさつした。


 だいだい アカリは、アイドルである。オレンジいろかみをツインテールにした女子じょしで、つよそうな顔立かおだちで、中学生ちゅうがくせいである。ここのセーラーふくて、こし銀鞘ぎんざや細剣レイピアをさげる。


 教室きょうしつ騒然そうぜんとなる。

 新人しんじんアイドルのアカリを中学生ちゅうがくせいすくなくない。大人おとな物怖ものおじしない同年代どうねんだいは、子供こどもあこがれる姿すがたひとつにちがいない。


しずかにして! 目立めだちたくないの!」

 アカリの一喝いっかつで、しずかになった。テレビのなかそのままの存在感そんざいかんだ。

 静寂せいじゃくにカツカツとかかとらして、アカリがこっちにあるいてくる。たりまえましがおで、オレと桃花ももかあいだせきすわる。

事情じじょういてます。遠見とおみ絢染あやそめ転入生てんにゅうせいまかせます」

 谷口たにぐちおもそうに、つかれた口調くちょうでオレたちを指名しめいした。


 教室きょうしつ騒然そうぜんとなった。こっちに視線しせん集中しゅうちゅうした。

 オレも、目立めだちたくないのだが。


   ◇


 アカリがイスにかえり、オレンジいろ前髪まえがみきあげる。

学校がっこうって、ねらわれやすそうじゃない? 事務所じむしょたのんで、転校てんこうさせてもらったの」

敷地内しきちない関係者かんけいしゃ以外いがい禁止きんしだから安全あんぜんだとおもうぜ。下校げこう送迎車そうげいしゃあるんだよな? 校門こうもんまで同行どうこうすればいいか?」

 オレは、周囲しゅうい視線しせんとヒソヒソばなしにキョドりながらいた。

 十人じゅうにん以上いじょうねたみのあつかんじる。『あのメガネ、みんなのアカリさまれしくしやがって』みたいなこえこえる。錯覚さっかく幻聴げんちょうであってほしい。


 デレデレなんてしてない! たぶん。

 桃花ももかは、魔狩まかり有名人ゆうめいじんになりつつあるから、嫉妬しっと対象たいしょうにはならない。人間にんげんばなれしてつよいし。


護衛ごえいでしょ。学校がっこうにいるあいだは、ちかくにいなさいよ」

「おいおいおい。オレを全校ぜんこう生徒せいとてきにするかよ」

 おもわずこころこえた。


 アカリが横目よこめ桃花ももかる。横目よこめにオレをる。上機嫌じょうきげんはなわらう。

最強さいきょう護衛ごえい生贄いけにえがいて、ようやくきた心地ここちがするわ。一人ひとりでいると、人目ひとめかこまれていても、心細こころぼそくてたまらなくて」


 気持きもちはかる。


「あっ、あのっ! はっ、はじめましてっ!」

 琴音ことねおよごしってきて、勇気ゆうきしぼったようなあかかおで、アカリにいきおいよくあたまをさげた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、クラスメートで、銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


気安きやすはなしかけないでもらえる?」

 アカリがれた対応たいおうで、イスの背凭せもたれにひじをかけ、キツいあげ目線めせんこたえた。

「ごごごっ、ごめんなさいっ」

 琴音ことねがヨロヨロとげるように、前列ぜんれつ自席じせきへともどった。


 オレも桃花ももかも、ほこらしく紹介しょうかいする。

真奉しんほうさんはランクSの『ウィッチ』で、ふたが『白銀のシルバーフレア』だぜ」

「アタシのともだちよ」

「それ、いたことあるかも。仲良なかよくしたほうとくかんじ? あとで紹介しょうかいしてよ」

 アカリが打算的ださんてき口調くちょうで、でも興味きょうみ津々しんしんひとみで、琴音ことねちぢこまる背中せなかつめる。


 おもしたかおで、またオレのほうる。

「あ。今日きょう授業じゅぎょう教科書きょうかしょせてね。せがわなくて」

「やめろ。ころか。桃花ももかたのめ」

 おもわず本心ほんしんた。

教科書きょうかしょ? いいわよ」

 桃花ももかもご満悦まんえつかえって、はなわらった。

 桃花ももか桃花ももかで、あたらしいともだちができたでいそうながする。


 どいつもこいつも気楽きらくなものだ、とおもった。……オレもか。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第78話 EP11-5 転入生てんにゅうせい/END

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