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第77話 EP11-4 護衛

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 狭聖きょうせい教団きょうだん教祖きょうそ喧嘩けんかったアイドル、だいだい アカリの護衛ごえい依頼いらいされた。『贄印にえいん』をえて。


冗談じょうだんじゃないっす! かえらせてもらうっす!」

 オレは、ビビりのままにイスからちあがろうとした。


 狭聖きょうせい教団きょうだん本当ほんとうに、狭魔きょうま人間にんげんおそわせることができる。

 あのときは、桃花ももかだったからかえてた。オレがおなじことをされたら、どうなるかかったもんじゃない。


勇斗ゆうと実戦じっせん経験けいけん二回にかいあるから、問題もんだいないわ」

遠見とおみくん適任てきにんだ。実力じつりょく保証ほしょうする」

 桃花ももか片桐かたぎりに、かたさえられた。ちあがれなかった。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


 この二人ふたりめられると、さすがにわるはしなかった。


   ◇


「つべこべわずに、さっさと護衛ごえいしなさいよ。こっちは、いつおそわれるかからないのよ? こわくてこわくてじゃないのよ?」

 アカリが、つよそうな口調くちょうで、よわそうなことをう。正体しょうたいよわ一般人いっぱんじんなら、気持きもちはかる。


 だいだい アカリは、アイドルである。オレンジいろかみをツインテールにした女子じょしで、つよそうな顔立かおだちで、中学生ちゅうがくせいである。ちょっとオシャレなかんじの私服しふくこしには、銀鞘ぎんざや細剣レイピアをさげる。


 オレは、アカリはアイドルで魔狩まかり、だとおもってた。実際じっさいは、魔狩まかりギルドに登録とうろくしてるだけの一般人いっぱんじんアイドルだった。

 アイドルになりたい魔狩まかり、の七海ななみとは真逆まぎゃくだ。


 でも、オレもこわい!

「オレじゃ無理むりっす。オレだって、ランクD、よわ一般人いっぱんじんわらないっすよ?」

 オレは、もう一度いちどちあがろうとした。かたさえる二人ふたりは、ピクリともうごかなかった。


遠見とおみくんらしくないな。ランクDでなければ、『贄印にえいん』で代理だいりになれない」

一般人いっぱんじんまもるのが魔狩まかり本懐ほんかいだろう? はらくくりたまえ」

「はい、これ、契約書けいやくしょあととおしといて。くれぐれも内密ないみつにね。情報じょうほう漏洩ろうえい損害そんがい賠償ばいしょうだから」

 オッサン三人掛さんにんがかりで、オレになにをさせようというのか。……アイドルの護衛ごえいか。


 意図いとは、かる。

 まず、ランクDの魔狩まかりすくない。守秘義務しゅひぎむまもって、狭聖きょうせい教団きょうだんっていて、なにきるか予想よそうできて、そなえと対処たいしょができる。

 けられたランクD相当そうとう狭魔きょうまたおすだけなら、武道ぶどう心得こころえがあるガードマンとか、武器ぶきあつかえるスポーツマンとかで十分じゅうぶんだ。そうしないのは、てき野良のら狭魔きょうまではなく、あくまでも主動しゅどう人間にんげんだからだ。人間にんげん同士どうし頭脳戦ずのうせんになるからだ。


「なるほどね、その、アカリって? たぶん、勇斗ゆうとより、戸塚とつかさんよりよわいわよ。『贄印にえいん』でも、勇斗ゆうとくらいしか許容きょよう範囲はんいはいれないでしょうね」

 桃花ももかが、納得顔なっとくがおうなずいた。

「オレがえらばれた理由りゆうは、そっちか~」

 オレも納得なっとくした。


   ◇


二人ふたりには、だいだいくんのプライベートの護衛ごえい担当たんとうしてもらう。狭魔きょうま襲撃しゅうげき遠見とおみくん対処たいしょ人間にんげん襲撃しゅうげき絢染あやそめくん対処たいしょする。もちろん、ほかのランクの魔狩まかり交渉中こうしょうちゅうだ」

 片桐かたぎりが、オレのかたさえたまま、説明せつめいはじめる。

仕事しごと現場げんばへの移動中いどうちゅう仕事中しごとちゅうは、警備員けいびいん狭魔きょうまけの御札おふだ対処たいしょする」


「それって?! 襲撃しゅうげきされるタイミングがオレたちってことっすよね?!」

 オレはビックリした。

 アイドルの仕事中しごとちゅうなんて、人目ひとめとカメラがおおいから、バレしてこま教団ヤツラおそってこない。移動中いどうちゅう襲撃しゅうげきは、おもいつきでやるには、調査ちょうさ段取だんどりに手間てまがかかりすぎる。

 おそってくるなら、プライベートにまってる。一人ひとり人間にんげん日常にちじょう生活せいかつ人目ひとめのない瞬間しゅんかんなら、ちょっと粘着ねんちゃくすれば素人しろうとでもつけられる。


「それこそ、プロなり警察けいさつなりに警備けいびをおねがいすればいいじゃないっすか。中学生ちゅうがくせいにじゃなくて」

一日中いちにちじゅうオッサンどもにかこまれてらすなんて、絶対ぜったいいやよ! んでもいやよ! んだほうがマシよ!」

 オレの渾身こんしん提案ていあんは、アカリ本人ほんにん全力ぜんりょく拒否きょひされた。


「ワガママだなぁ」

「ワガママねぇ」

 オレも桃花ももかも、おもわずこころこえた。

「かっ、勘違かんちがいしないでよね?! おな中学生ちゅうがくせいでも、プライベートをウロウロされるのは目障めざわりなのよ! いのちにはえられないから、仕方しかたなくオーケイしたんだからね?!」

 アカリが、なぜか赤面せきめんして、つよそうな口調くちょう反論はんろんした。


「まぁ、いいっすけど……」

 どうやら、観念かんねんするしかないらしい。

 オレのみでは、狭聖きょうせい教団きょうだんがアカリをおそうことはない。たかが口喧嘩くちげんかひところすほど、教祖きょうそってじじいもバカじゃないだろう。


 オレのやることなんて、教団きょうだん襲撃しゅうげきはないと確信かくしんできて、アカリが安心あんしんできるまで、アカリのちかくにいてののしられるだけ、だとおもう。

 期間きかんは、一週間いっしゅうかんか、いっげつか、ながいようでみじかかった、くらいか。いざわるとなると、ちょっとさみしい、みたいな感傷かんしょうひたったり。


 それはそれで、たのしそうだ。アイドルと仲良なかよくなれるかもれないし。普通ふつう中学生ちゅうがくせいをしていても、絶対ぜったいにありないシチュエーションだ。


かったっす。オレも魔狩まかりっす。護衛ごえいけんけさせていただくっす」

 オレは、そうなみを我慢がまんして、自分じぶん史上しじょう最高さいこう真顔まがおめた。めたつもりだった。

勇斗ゆうと口元くちもとゆるんでるわよ」

 桃花ももかに、不機嫌ふきげんこえ小突こづかれた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第77話 EP11-4 護衛ごえい/END

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