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第76話 EP11-3 ニエイン

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、土曜日どようび午後ごごに、キレイなホテルの一室いっしつにいる。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 魔狩まかりギルドの片桐かたぎりたのみで、れてこられた。


 片桐かたぎりは、オレの所属しょぞくする支部しぶえらひとだ。くろいスーツ姿すがたの、おやよりも年上としうえくらいのオッサンだ。たかがたで、サングラスとととのったひげと、ひだりまぶたたて傷痕きずあと特徴的とくちょうてきな、哀愁あいしゅうただよしぶいオッサンだ。


 部屋へやには、オレと、桃花ももかと、片桐かたぎりと、べつ支部しぶ支部長しぶちょうと、だいだい アカリと、そのマネージャーがいる。

 ちなみに、支部長しぶちょうは、小太こぶとりでかみうすいオッサンだ。マネージャーは、横柄おうへいそうな大柄おおがらのオッサンだ。オッサンりつ五割ごわりだ。


「うぉーっ! すげぇ! リアルのだいだい アカリだ!」

 オレは感動かんどうして、おもわず、琴音ことねみたいなよろこかたをしてしまった。

 アカリが怪訝けげんそうにオレをて、舌打したうちする。

「このうるさ子供がきがそうなの? たよりになるの?」

 アカリだ! テレビにてるときと、表情ひょうじょう態度たいど一緒いっしょだ! プライベートだから、ちょっとオシャレな女子じょしってかんじの私服しふくだ!


 桃花ももかも、怪訝けげんそうにアカリをて、舌打したうちする。

「ガキって、おなどしでしょ? 勇斗ゆうとは、よりたよりになるわよ」

 こいつは、アイドル相手あいてでもこうだ。もともと、アイドルにはしゃぐタイプでもない。

「あなたはってるわ! バイオレンス絢染あやそめ! 光速こうそくのライトニングと共闘きょうとうたした超新星ちょうしんせい!」

 アカリが歓喜かんきひとみで、桃花ももかふたをコールした。


「キュートなスーパールーキーってんでくれる?」

 桃花ももか不服ふふく気取きどりながら、れてほおあからめて、自慢じまんげにかえる。相変あいかわらずチョロい。


   ◇


 アカリのマネージャーのオッサンが、ちいさな四角しかくいテーブルを部屋へやなかく。ちいさなイスも二脚にきゃく、テーブルをはさんでく。自分じぶん一方いっぽうすわり、もう一方いっぽうしめす。

遠見とおみくんだったか。まぁ、すわれ」

「え? オレっすか?」

 オレは困惑こんわくした。指名しめいされるとはおもってなかった。桃花ももかいくらいの気分きぶんだった。

すわりたまえ」

 べつ支部しぶ支部長しぶちょうにも、テーブルのかたわらにってうながされた。


「は、はい」

 すわる。そなえつけのまるイスで、クッションがうすくてかたい。

「これを、けてもらう」

 テーブルに、指輪ゆびわはいった小袋こぶくろかれた。指輪ゆびわは、ヘビみたいななにかが螺旋らせんからみつくかんじの、禍々まがまがしいデザインだ。


 たことある。ピ……雷獣らいじゅうのときに、桃花ももか代理だいりになるために、光速こうそくのライトニングがつけた指輪ゆびわおなじものである。

「……『贄印にえいん』っすね」

 オレは、困惑こんわくのままにいた。


 この物騒ぶっそう名前なまえの『贄印にえいん』とは、そのまま、『まがつ』にねらわれたにたくないひとが、わりにころされる生贄いけにえてるために使つかった、とむかし記録きろくにある。


 代理だいりは、一人ひとりたたかわなければならない。共闘きょうとうようの『刻印こくいん』よりは、力量りきりょうおおめに許容きょようしてくれるらしい。おおめにといっても、ランクがひとちがえば許容きょよう範囲外はんいがい間違まちがいない。


 当然とうぜんながら現代げんだいは、相性あいしょうわる狭魔きょうまのときに交代こうたいするとか、負傷ふしょう体調たいちょう不良ふりょうのフォローとか、普通ふつう使つかわれかたをする。


「だって! 本当ほんと狭魔きょうまけしかけられるなんておもわないじゃん!」

 ベッドにすわるアカリが、バツがわるそうに赤面せきめんした。

遠見とおみくんだったか、には、それをつけて、アカリの護衛ごえいをしてもらう」

 マネージャーが、えらぶった口調くちょうげた。


「……え? はなしえないっすけど」

 オレは、さらに困惑こんわくした。意味いみからない。『贄印にえいん』をつけて護衛ごえいっても、アカリはランクBで、オレはランクDで。

さっしがわるいな。頭脳派ずのうはじゃなかったのか?」

 マネージャーが、えらぶった口調くちょう苛立いらだった。

魔狩まかりギルドにおねがいして、ランクBってことにしてもらってるの。そのほうが、たちわるいのにからまれにくいから」

 アカリが、いよいよバツがわるそうに、かおにした。


「……っ!」

 オレは、さっした。さっしてしまって、蒼褪あおざめた。

 アカリは、オレや古堂ふるどうおなじランクDなのだ。トラブル対策たいさく一環いっかんとして、うそのランクBで魔狩まかりギルドに登録とうろくしてるのだ。

 で、ワイドショーで狭聖きょうせい教団きょうだん教祖きょうそ喧嘩けんかってしまったから、オレに『贄印にえいん』をつけてわりに狭魔きょうまおそわれる生贄いけにえになれ、ってことか。


「……それって! むかし使つかわれかたじゃないっすか!」

 オレはおもわず、抗議こうぎこえをあげた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第76話 EP11-3 贄印にえいん/END

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