七話
生まれてきた意味が分からなかった。
生きてきてずっと幸せを感じたことがない。
ちょっとした楽しさを感じる時はある。だけどそれも自分と世界の関係を再確認するとすぐに消え去った。
全ての原因はわたしの体にあった。生まれつき左腕と両足がない。
先天性四肢障害。わたしにあるのは指が三本だけの右腕だけだ。
一体いつからだろう。自分と周りの人間に差を感じたのは。
覚えていない。だけど多分最初からなんだと思う。言葉も知らない時からずっとだ。
自分は他人とは違う。そんな空気をわたしは自分を見る大人達の目から汲み取っていた。
気を遣われたり、蔑まれたりするのはいつだって言葉より目が先だから、目線を感じた時からなんだろう。
この体を愛してくれた人がいればまた違っていたとも思う。だけどわたしには両親がいない。生まれた時から児童養護施設で暮らしている。それもきっとこの体のせいだ。
不完全な体で生まれたせいで両親まで失った。だけど今更責めるようなことはしない。そもそも思い出もないのだから責めようがない。
きっと両親は怖かったんだろう。腕と足のないわたしが。そんなわたしを育てていく自信がなかったんだと思う。
それか母親だけだったのかもしれない。もしそうなら益々不安になる。自分一人生きていくだけでも大変なのに、わたしのような子供の世話までしないといけないのだから。
そのことについてそれほど不幸だとは思わない。ここにいる子供達は多かれ少なかれそういった運命を背負っているから。
虐待された子もいるし、そういう子は体に傷なんかもあるからある意味親を知らないわたしよりかわいそうだ。
だけど手足がないのはわたしだけだった。みんな立派な手や足がついている。
それが確率の問題なのなら神様はどうしてわたしに腕と足を与えなかったのだろう。
いくら考えてもそれが分からない。思考の行き着く先はいつも同じだ。
生まれ変われたら一体世界はどんな風に見えるんだろう。そう考えない日はなかった。