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2章…第10話 続き

「…これで来年も、入社希望の新卒は後を絶たないでしょう!」



慎吾先輩がケンゾーに笑顔で話しかけると、その目が私の隣にいる嶽丸に注がれる。



「…今年は特に、嶽丸くんの圧巻のカッコよさが際立っちゃったね。今回の動画、バズっちゃうんじゃないか?」


「…そう、ですね。…すでに再生回数、5桁です」



ケンゾーと慎吾先輩の話が耳に入り、私も目を見開いて驚いた。



「ねぇ!ちょっと聞いた?5桁の再生回数だってよ?…どうする?」


興奮気味に言う私に、たいして興味なさそうに、曖昧にうなずく嶽丸は近くの席に腰を下ろす。



「…ちょっとやり過ぎたかなぁ…会社とか突き止められて、出待ちとかされたら困るんだよなぁ」


「出待ちって会社に来ちゃうってこと?」


「そ。で…騒がれたりしたら、上司に呼び出し食らっちゃうわけ」


そうか…身バレしないように配慮しないと、嶽丸に迷惑をかけちゃうんだ。


私は慎吾先輩に嶽丸のプライバシーの保護を頼みに行こうと席を立とうとした。



「なに?どこ行くん?」


「え?慎吾先輩のとこ。嶽丸のプライバシーを厳重に守ってもらうようにって、言ってくるよ」


「…そんなのいいから、隣離れないで」


「なにその人見知りみたいな発言…人懐っこい大型犬嶽丸はどこ行った…?」


「…人見知りでも大型犬でもないけどな?女たちに狙われるのは勘弁して欲しいだけだわ」


狙われる…?

そっとあたりを見渡してみると、確かに大半の女子の視線が、チラチラとこちらに向いているのがわかる。


今回の打ち上げは、協力企業の担当者たちと各店からの出場者とヘルプスタッフ、そしてモデルたちといった人たちが集まっている。


…ざっくり見て…女子は8割。

そのほとんどが嶽丸を見ているのだから、狙われていると嶽丸が思うのもうなずけた。



「人懐っこい大型犬じゃなくて、俺は美亜にだけ慣れるポチだって、わかってる??」


「…そ、そうなの?」


ちょっと甘いポチ発言の嶽丸を見れば、さっきステージにいた時と変わらずカッコいいポチがそこにいる。



「霧島ディレクターがそばにいれば、俺に近づけないんだろ。…試しに離れてみる?俺もみくちゃにされるかも…」


そう言われると心配になって離れられなくなるんだけど…。


「でも…モテまくるのなんて、慣れてるんじゃないの?女の子は大好物なんでしょ?アプローチされたら…美味しい思いできるとか、思わないの?」


「あのな、人を肉食みたいに言うなよ?」


「…肉食じゃん」


「まぁ…そうだけど、しっかり選んで食う肉食なんだよ!」


言いながら、テーブルの下でギュッと手を握ってきたので、突然のことでビックリしてしまう。



「俺が食いたい肉は、美亜の肉だけだから」



テーブルの下で、手だけではなく膝もコツン…とくっつける嶽丸。


思わず嶽丸を見れば、その目には焦るほど私しか映ってなくて…



「…怖い…食われる」


「怖くない。優しく食う」


「……」


嶽丸の手が、スカート越しに膝を撫で始めたので…ちょっと焦る。


なんなん?!この2人の世界は…?




そこへ、グラスを手にしたゲンゾーがやってきた。


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