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2章…11話 続き

「…オーナー、こんなところにいたんですか?」




必死に手を振る私に気づき、慎吾先輩も私たちと同じテーブルについてくれた。




若干空気が緩んだ気がして…ホッとする。






「嶽丸くんにどうしたらモテるか聞いてたんだよ」




すると慎吾先輩、私に突然爆弾を投下してきた。






「そうだ…俺も聞きたかった!美亜は嶽丸くんと付き合ってるのか?」




「…え?」




酔ってすわった目線を向けてくるケンゾー。




どう言ったらいいだろう。


付き合ってないなんて言ったら、ケンゾーの変なアプローチが始まるかもしれないし…それは遠慮したい。




付き合ってるなんて言ったら、自分からセフレ認定したのに、嶽丸になんだコイツって思われる。




「ええっと、その…」なんてモゾモゾしていれば、まるで簡単なことのように、嶽丸が返事をした。






「今は、俺が美亜を全力で口説いてるところです」




「へぇ…そうなんですか?…さっきステージでは、完全に恋人っぽかったけどね?」




慎吾先輩…なんだか楽しそう。




するとケンゾーが、少し姿勢を正しながら言う。




「じゃあ俺は…それを全力で阻止しようかなぁ…」




「おいおい?!なんだよ美亜…お前モテ期来てるじゃん?」




ケンゾーの宣戦布告とも取れる言葉を聞いて、慎吾先輩は更に楽しそうだ。




「いや…その、どういうことでしょう…?」




困る…。


嶽丸はともかく、ケンゾーからのアプローチって、それは…私を女性として見てるってこと?




わぁ〜…仕事がやりづらくなる、としか思わない。


そこでハッと思いついた。




「あの…オーナーに憧れてるスタッフ、たくさんいるの知ってます?」




それこそ私よりずっと若くてピチピチで、可愛い女性スタイリストたち。




銀座店だけでなく、他の店舗にだって、ケンゾーのファンは多い。




「…そうなのか?」




「はい!名前を出すのは避けますが、実際ケンゾーはカッコいいし仕事ができるしお金持ちだって…皆言ってますよ?!」




「ケンゾーが金持ち…」




あ…!本人にケンゾー呼びしてしまった…と、気づいたときにはもう遅い。




「す、すいません…。ケンゾーなんて呼び捨て…」




「いいよ」




「…は?」




「美亜にだけは許す。これからはケンゾーって呼んで」




えー………。


今までの私の努力っていったい…。








そこで大きなため息が聞こえて、私はふと顔を上げた。




「そろそろ行くか」




仏頂面の嶽丸だった。


…とりあえずここは、帰ったほうがいいかも。




私は立ち上がる嶽丸に続いて、何か言いたそうなケンゾーを無視し、笑い出しそうな慎吾先輩に目で挨拶して、店を出た。




それにしても…


ケンゾーが私に特別な思いを抱いているというのは、間違いなさそうだ…



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