空の高いところにいる(それとも、ある?)半透明のうごうごしたものに弾き飛ばされて行方が分からなくなった
月見サンの空飛ぶ竹ぼうきは、闇空のどこかをフラフラ飛んでいたフラワーのところへ飛ばされちゃったみたいなのだ。ということは、もしかしたら、ほうきを失くした月見サンは地面に落ちちゃったかもしれない! と思って、あたしたちは一度、地面に降りてみることにした。
それから、三人で手分けして月見サンを探してみたのだけれど。
「それらしき穴は、見つからなかったけれど」
「フラワー、探すのは穴じゃなくて、本体の方だって分かってるんだよね?」
「私の方も、穴も本体も見当たりませんでした! 三人で手分けして探しても見つからないなんて!? いくらなんでも、そんなに遠くへ飛ばされたとは思えないんですけど!?」
「そうだよね? これがあたしなら、みんなのところに戻ろうとして、逆に遠ざかっちゃったりしちゃいそうだけど。月見サンはそんなことにはならないと思うし……」
「妖魔に丸呑みされたなら、跡形もなくなるんじゃない?」
「いえ、でも! それらしき妖魔すら見当たりませんでした!」
「いやいやいや! 何言っちゃってるの、二人ともー!?」
月見サンが妖魔に食べられちゃったなんて、そんな。そんなこと。
「あ、ああ! 泣かないでください、
べ、別に、泣いてないからね?
ただ、ちょっと。目から水が出ただけで。
ちょっと。ほんのちょっとだから。
「仕方ないから、もう一度そこらを回って来る。今度は、本体の方を探してみるから」
ため息とともに囁いて、フラワーはふらっと空へ舞い上がり、そのままいなくなる。
って、さっきは本当に穴しか探しとらんかったんかーい!?
最初から、本体の方をさがせっちゅーの!
「それでは! 私たちは、ここで待っていましょう! あ、そうです! 目印になるように、魔法で花火を上げてみるっていうのはどうでしょう!? あのうごうごに当たらないように、ほどほどの高さで!」
「妖魔の方がやってきちゃったらどうするの?」
「大丈夫です! その時は、私が殲滅しますから!」
「………………分かった。何にもしないより、いいもんね」
「はい! やりましょう!」
しかし。殲滅、好きだよね、君。
まあ、てなわけでー。
二人きりの花火大会を開催することになった。
「じゃあ、まずは、私から行きますねー!」
「オッケー」
コホンと咳払いをしてから、心春は人差し指を天に向かって突きつける。
「愛の蜜よ、夜空に舞い踊れ!」
よく分からん掛け声とともに、指先からいくつもの光の筋が空へと昇っていき。
そして。
闇空に、色とりどりのキノコが咲き乱れた。
それはもう、盛大に。
キノコの森が闇空にも出来ちゃったみたいだ。
いや、確かに、そういう花火、あるけどさ。
キャラものとか、ちょっと顔が崩れちゃてるのがご愛敬だったりするよね。でもさ。一番、最初に上げるのは、もっとスタンダードなやつじゃない?
こういう色物は、もっと中盤当たりじゃない?
あと、やりすぎ!
森が出来そうなくらいのキノコを空に浮かび上がらせちゃうとか。さすがに、キノコ愛が過ぎるよ!
まあ、花火の下に誰がいるのか、とってもわかりやすいとは思うけどね?
あー、それに。月見サン、こういうの好きそうだな。
あたしも混ぜてーとか言いながら、ひょっこり出てきそうな気がする。
…………やるな、心春。別に、そういうつもりじゃなかったんだろうけどさ。
一面に咲いたキノコたちは、やがて小さなキノコとなって、ぱらぱらと闇空から落ちてきた。綺麗だけれど、キノコなところがなんか微妙。あ、でも、今となっては、花びらとかが落ちてくる方がもっと微妙かも。もちろん、フラワー的な意味で。
心春は、最後のキノコのカケラが消えるまで見届けてから、うっとりとしたため息をもらした。
キノコ愛だね。
それから、心春は。
さあ、と言わんばかりにあたしに向かって片手を差し出した。
「さあ! 次は、星空さんの番ですよ! 月見サンへの思いを込めた盛大でロマンチックな一発をお願いしますね!」
え? この後に?
てゆーか、これ以上に盛大に? おまけにロマンチック? 月見サンへの思いって、どういう思い?
も、もうこのままキノコ連打でよくない?
きっと、その方が、月見サンが釣れると思う。
だって、今の以上に、月見サンの興味を引く花火が思い浮かばないよ!
あたしは一体、どんな花火をあげればいいの?
な、難易度が高すぎる!