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21.天才的な、ボケツッコミ

========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

本郷弥生2等陸佐・・・陸自からのEITO大阪支部出向。

友田知子・・・南部家の家政婦。

大文字伝子・・・翻訳家。EITO東京本部エマージェンシーガールズ隊長。アンバサダーと呼ばれることもある。総子の従姉。

大文字学・・・小説家。伝子の大学翻訳部後輩。伝子の婿養子。エーアイと呼ばれることもある。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。二美とは旧知?

村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。

久保田嘉三・・・警視庁管理官。

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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


午後8時。EITO大阪支部。会議室。

「籠城?立てこもり事件って?人質は?」総子は、勢い込んで言った。

淀屋橋にある、老舗の銀行仙波銀行本店がジャックされたのだ。

「本店。店に残ってた店員全員や。」「何人?」「約50人。事件が起こったのは午後5時。小柳警視正が交渉しているが、交渉が上手く行って無い。」

総子と大前に二美が割り込んだ。

「要求は?コマンダー。」「100万ドル。それと、逃走用オスプレイ。」

「無茶苦茶やなあ。明日、日曜とちゃうん?」と総子は言った。

「全国的に日曜やな。幾ら銀行でも、外国の金、ホイホイ出てくるかいな。人質の本店店長が日本円なら支店の金とかと足して渡せるって言うたんやけど、帰ったら、すぐに使うからドルの方がええ、って言うてる。小柳さんも日本円で何とかって交渉してはる。」

「帰って?外国人??」「ああ。外国人の犯罪は増えてるが、今回のパターンは初めてや。」

「コマンダー。オスプレイ、どうするの?」二美が言った。

「一応、中部方面隊に打診してる。」「あ。一味の人数は?」「10人。もう、頭痛いわ。」

いずみが言った。「コマンダー。本店には、1枚もドル札ないんですか?」

「そんなことないやろう。銀行なんやから。」と大前が言うと、「混ぜて渡すことにしたら、隙が出来るかも。」と、一美は言った。「隙?」

「支店からのドル札と本店のドル札を足して、残りは本店の日本円札。これで、きまりね。」一美は事もなげに言った。

「それで、総ちゃんが支店の行員に化けるんやな。」と、紀子も簡単に言った。

「ちょっとお。それって私が、その辺の銀行員に見えるとか言うてるのん?」と総子が言うと、紀子は黙って鏡を総子の前に突き出した。

「ほんまや。」

「天才的な、ボケツッコミやな。」と、幸田が入って来ながら言った。

「コマンダー。リーダーらしき男の素性割れたで。」「ホンマか。幸田さん。」

「アメリカ村。通称アメ村でTシャツとか雑貨とか売ってる奴や。目撃者が、いたんや。丁度、帰宅途中淀屋橋駅に行こうとしたら、男がこっそり目出し帽被るのを見付けた。何度かTシャツ買ったことがあったから、何で?と思ったらしい。今、所長と倉持がアメ村の同業者当たってる。」

「コマンダー。何か急ぐことが出来た、本国に帰りたいってことかな?」とジュンが言った。

「よし、大阪府警に繋いでくれ、ヘレン。」「はい。」

「コマンダー、中部方面隊に知り合いいるから、確認してみるわ。」と、二美は言った。

「ああ、頼むわ。」

大前は、ディスプレイに出た真壁に、説明した。「小柳さんに、繋ぎ取ってくれ。」

「了解しました。」

5分後。大前のスマホに小柳から電話があった。

「コマンダー。いいアイディアだ。全ての金がドルでなくても、優先度が高い使い道にドルを使い、後は本国で両替すればいいじゃないか、と交渉してみる。オスプレイでフィリピンまで飛べるかどうかは知らないが、空自で用立ててくれるのなら、有り難い。全ては、向こうが『要求通りになった』と思ってくれればいいことだ。」

「今、オンを返せ!」と、二美は乱暴に電話を切った。

「大丈夫か、二美。」「え?ああ、大丈夫よ。上の者にかけあってくれるって。」

「そうか。総子。段取り組もうか?」と、目をやれば、女子銀行員がいた。

午後9時。

マルチディスプレイに、村越警視正と久保田管理官が映った。

大前が現状を報告した。「そうか。銀行の頭取と話がついた。現場から一番近い心斎橋支店から5万ドルならドル札を用意出来るそうだ。それと、本店なら20万ドル分はあるそうだ。頭取の指示で、心斎橋支店長から、所用がある振りで本店に電話させる。本店店長が相談する形で、本支店25万ドル用意出来る、と犯人に話す。後は日本円でも文句は言うまい。小柳警視正から、既に札を混ぜることは伝えてある。EITOから隊員が行ったら、運搬だけして、後はEITOに任せるよう、頭取にお願いしておいた。」

「了解しました。すぐに、EITOエンジェルスを向かわせます。」

大前が返事をした時、EITO大阪支部のオスプレイ発着場に、空自のオスプレイが到着し、隊員が走ってやって来た。

「空自の用賀哲夫です。以前、複座戦闘機F-15Dで離着陸させて頂きました。今はオスプレイを担当しています。」と、用賀は、大前に敬礼した。

「チーフの南部です。」とスーツ姿の総子は一歩進み出て、作戦を簡単に説明した。

「成程。無血投降させるのですね。」「用賀。催涙カプセルは持って来てくれたか。」

納得した、用賀に二美は声をかけた。「ああ。持って来たよ。人使いの荒い同級生だ。」

「同級生?」大前と総子は異口同音に言った。

「中学の同級生です。自衛隊入りを勧めてくれたのも、芦屋でした。」

午後10時。仙波銀行本店従業員通用口。シャッターが開き、総子達を乗せたワゴン車が入って行った。

警備員と本店行員が出迎えた。

総子は、警備員に声をかけた。「他の警備員さんは?」「警備員室です。施錠されました。私は連絡がかりで残されました。」

「さ、こちらへ。」本店行員は、現金のケースを乗せた台車を押す総子とジュンを案内した。幾つかの廊下を渡り、1F窓口のフロアに出ると、隅に行員が固まっていた。

ロビーにいた目出し帽の10人のフィリピン人らしき外国人の1人が何か言い、「ロビーのソファーに並べるんだ。」と、横の男が言った。

ソファーには、既に日本円の札束があった。

どうやら、日本語を話せるのは、通訳の男だけのようだ。この男がジミーか。ジミーとは、幸田所員が調べてきた、普段Tシャツを売っている男だ。

10数分。一団の男達は、札を確認し終えた。

男達は、また、台車にドル札のケースと日本円札のケースを乗せ、エレベーターで屋上に上がった。総子達は人質としてついて行った。

誰が指示する訳でもなく、男達は、3機のオスプレイにケースを乗せ、自分たちも搭乗した。操縦してきた、用賀、二美、弥生は操縦席から降ろされた。パイロットは3人確保出来ていたのだ。そして、ジミー以外のフィリピン人はオスプレイに分乗した。

「ここからが勝負ね。」どこからか現れた、一美が二美に言った。

「お手並み拝見、と行くか。」と、用賀が笑った。

オスプレイ大阪1号機に乗った、フィリピン人は、EITOエンジェルス姿の祐子、悦子、真知子、今日子に催涙カプセルの蒸気を嗅がされて、むせ返った。

オスプレイ大阪2号機に乗った、フィリピン人は、EITOエンジェルス姿の真美、智子、ぎん、稽古に催涙カプセルの蒸気を嗅がされて、むせ返った。

空自のオスプレイに乗った、フィリピン人は、EITOエンジェルス姿のあゆみ。みゆき、真子、いずみに催涙カプセルの蒸気を嗅がされて、むせ返った。

離陸体制に入っていた、オスプレイ3機は、何故か、再びヘリポートに着陸した。

パイロットのフィリピン人3人は、オスプレイから出ようとしたが、ロックがかかって出れない。

「あのカプセルって何なん?」と、総子は二美に尋ねた。「催涙カプセル。1時間位は、目をあけることも出来ないし、鼻水垂れっぱなし。」

「空自が開発したんだよ、チーフ。」と用賀は言った。

「EITOエンジェルスの武器でも何とかなるけど、面白いと思ったから採用したのよ。」

「さて、お片付けと行きますか。」と、総子はガラケーで小柳警視正に連絡した。

このガラケーは、通信傍受を防ぐことの出来る大文字システムの、臨時連絡用通信機だ。

「終りました。逮捕連行願います。」

横から、一美が言った。従業員通用口付近に手錠かけられた女子行員がいます。その女が手引きした女です。連行願います。」

30分後。フィリピン人達は逮捕連行された。

「ジミー。あんたは、通訳しただけよね。」横山警部補が連行しようとしていた、ジミーに一美は声をかけた。

ジミーは頷き、言った。「ありがとう。僕も、トミー達も助けられた。」

頭を下げ、横山と去ったジミーを見送った後、二美は「用賀。今夜どうするの?」と尋ねた。

「どうする、ってEITO基地に帰るんだろう?」「おんなの私に恥かかせる積もりか?ついてこい!!」そう言うと、二美はオスプレイ大阪2号機に乗り込んだ。離陸するのを見て、慌てて用賀は空自オスプレイに乗り、離陸した。

「乱暴な口説き方だなあ。まあ、二美らしいか。」「え?」と驚く総子に、「お友達っって言ったけど、それ以上ってことね。総子よりカカデンになるな。」と一美は言った。

「チーフ、オスプレイおらんようになったけど・・・。」と、ぎんは言った。

「あゆみといずみと総子は私の車に乗りなさい。後はオスプレイ大阪1号機とホバーバイクに分乗ね。」と、一美は言った。

ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造した、運搬及び迎撃用マシンである。

「私ら、ホバーバイクに乗ってええの?」と、ぎんは目を輝かせた。

「地上走れば、ナナハンと変わりないわ。弥生に特訓して貰った者なら空中も走らせることは出来るよ。」

翌日。午後1時。EITO大阪支部会議室。

「準備出来ました。」と言うヘレンの声がスピーカーから流れた。

マルチディスプレイに、小柳警視正が映っている。

「みんな、よくやった。大前君が言った通り、フィリピン人達はビザが切れていた。強盗犯で刑務所入らない代わりに強制送還だ。ジミーは、タダの通訳だし、私が交渉に入ったとき、こちらに人数をわざと教えてくれたからな。潜入捜査官扱いだ。金は1円も流出していない。奴らは銃を持っていなかった。変わったナイフを持っていたから、脅すのには充分だった。これがそうだ。」

画面には、成程変わったナイフが映っている。「クレバーナイフというそうだ。安物だから、そんなに殺傷能力はない。さて、肝心な動機だが、トミーはある日、闇サイトで、自分に警告する動画を観た。故郷の村が暴漢に襲われる動画だ。以前にもあったが、一種の『洗脳サイト』だ。アメリカの若者が自爆テロに走った、あれだ。」

「警視正。闇サイトから、ピンポイントでトミーにアクセス出来るんですか?」

大前の疑問に、「うん。ジミーに確認したんだが、本名は、ごくありふれた名前らしい。日本で言えば、『山田太郎』程度だ。ジミー本人は夢中になっているから聞き入れなかったが、呼びかけてきた名前が自分と同じ名前だから錯覚したのだろう、と言っている。念の為、外務省とICPOを通じて調べたが、トミーの村には、何も騒動が起こっていないらしい。スマホ持っているのだから、確認出来た筈だが、所謂オレオレ詐欺のような心理状態だったのかも知れない。手引きした女子行員はトミーの愛人だった。検察は不起訴にしたが、銀行は懲戒免職だ。ジミーは日本人の女性と結婚して帰化した、立派な日本人だ。ジミーを何度も止めようとしたと言っている。でも、故郷に帰って何とかする、の一点張り。銀行強盗は、愛人の女子行員の入れ知恵。因みに、残りの8人も同じ村の出身らしい。」

ここで、マルチディスプレイに高遠が映った。

「大阪支部の皆さん、今日は。事件解決おめでとうございます。大事なお知らせです。みんなが帰った後、伝子は急に具合が悪くなり、流産しました。具合が悪くなった時にお知らせ出来ず、済みません。」

高遠の横から、三美が顔を出した。「私が知らせるな、って言ったの。総子。伝子さんや理事官を恨んじゃダメよ。恨むのなら、私にしなさい。コマンダーにも、さっき知らせたばかり。コマンダーにも当たり散らしちゃダメよ。分かった?」

「流産は・・・無理に闘いに参加したからか?三美。」「それは、否定出来ないわね。」大前の問いに三美は淡々と言った。

画面に、伝子が大きく映った。「聞いた通りよ。子供はまだまだ作れるって、池上先生も言ってくれている。心配ないからね、総子。大前さんを困らせちゃダメよ。」

「みんなで、寄ってたかって、ダメよ、ダメよって・・・ウチは大丈夫や。」

胸張って言う伝子に「そらそうや。ウチの所長夫人は強いんや。なあ、花ヤン。倉持。」と、幸田は一緒に入って来た花菱に言った。

2人とも黙って頷いた。

午後6時。総子のマンション。

知子が言った。「旦那さん、こんなに湿布使う位なら、病院行った方が・・・。」

「いや、まだ、怪我はしてへん。これから、SMプレイして怪我すんねん。」

「ちょっと、あんた。腹いせにウチが暴力振るうと思うてんのか?」「ちゃうんか?」

「ちゃうわ。ちょっと、可愛がったるけどな。」それを聞いた知子が笑いながら、「ほんなら、総帥が用意してくれた、こっちの方が・・・。」と、ある箱を出した。

箱の中は、明らかにビタミン剤と精力剤だった。「子作り、頑張って下さいよ。私は『乳母』もするように、業務命令出ていますから。」

知子は、笑いながら、玄関を出て行った。

「今日のめざし、ちょっと辛いな。」と総子が言うと、「うん、塩振りすぎやな。」と南部は言った。

2人とも、涙をこぼしながら、食べていた。

―完―


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