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24.極秘調査

========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

本郷弥生2等陸佐・・・陸自からのEITO大阪支部出向。

友田知子・・・南部家の家政婦。

吉本博文・・・一心の会副代表。大阪府知事。

中村英一・・・一心の会代表。

=====================================


= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


【前回までのお話】

午前9時。東京。物部の店がある、モール入り口付近の空き地。

「ありがとう、総子ちゃん。大阪支部は早業だなあ。」と依田が代表して言うと、「何のこれしきオギノ式・・・って、分からんか。ウチの旦那がたまに言うねん。依田さん、福本さん、慶子さん、福本さん、南原さん、文子さん、山城さん、蘭ちゃん、服部さん、コウさん。名残惜しいけど、堪忍やで。大阪でもまた事件や。ゆっくり出来んのは悔しいけど、しゃあないわな。物部さん、栞さんによろしゅうにな。ほな。」

総子がオスプレイに戻ると、オスプレイはすぐに空に消えた。

「どうやって帰る?」と言う福本に、「たまにはタクシーもいいさ。」と依田が返すと、何台ものタクシーがやって来た。

「実は、叔父さんに頼んでおいた。皆、分乗してくれ。」と言う福本に、「感謝します。」と文子が言い、皆は福本に頭を下げた。


午後2時。EITO大阪支部。会議室。

「みんな、オスプレイと、支部の仮眠室で仮眠しただけやから、眠たいやろ。事件のおさらいだけして、また仮眠室に帰ってええから、辛抱してくれ。実は、一心の会の代表の中村英一氏が誘拐された。一心の会大阪本部に脅迫メールが来たのが、午前3時。総子達が出発した後や。とんぼ返りして貰ったのは、この事件の為や。今の所、極秘調査やさかい、南部興信所で、不審車の聞き込みをした。幸田さん。」

ディスプレイに現れた幸田は、「これを見て下さい。」と、画面に一覧表を映した。

「不審な車の情報ですが、ここ1ヶ月、場所も時間もまちまちですが、目撃情報があります。不審な者がうるついていたかどうかは、不明。」

「ここ1ヶ月って・・・。」「お嬢の言いたいことは分かる。その通り。道頓堀水門連続殺人事件の時も不審な車は目撃されている。小柳警視正からの、秘書の話では、自家用車は車検に出されていて、ここ1ヶ月は、タクシーで事務所に往復していたらしい。ところが、昨夜は後援会の会合に出席した後、後援会の事務長が送って帰宅した。で、日付が変わって帰宅しないところに、メール。一心の会宛のメールは、吉本知事にも転送されることになっている。吉本知事は、自宅に連絡。誘拐が発覚した。大阪府警にも連絡したんやが、知事の希望もあって、EITOにも連絡が来た。」

幸田の横から、花菱が言った。「誘拐の基本は24時間が勝負。まずは、犯人の出方を見んといかん、ということで、我々の見解は一致しています。」

「というのが、あらましや。犯人の要求の電話とかは、ひょっとしたら、メールかも知れんが、何時間後というパターンがない。動きがあったら、対策を練る。みんな、寝れるもんは、もう一回寝ていい。眠れん者は、トレーニングルームに行け。解散。」

大前は、一気に言い終えた。紀子は、大前にお茶を出した。大前は日本茶党だ。コーヒーを飲むこともあるが。

皆は、会議室を出て行った。「成程な。」と総子は呟いた。

「あっちは、どうやった?」と聞く大前に、「10分でいてもうたった。」と総子は言った。

「早業やな。」「油断してたし、夜明けやし。ウチも、ちょっと横になってくるわ。ヘレン、起すとき、サイレン流してええで。」と、ヘレンに声をかけ、総子も出て行った。

進展があったのは、午後5時だった。吉本知事の定例会見の時間を狙ったのだろう。吉本知事は、Linenのメッセージを盗み見て、「あ。資料に間違いがあったようなので、後の話は明日に延期します。」と言って、記者会見を早めに切り上げた。

犯人の要求のメールの中身は、こうだった。

大阪市役所の美術品、公に処分したのは、ごく一部で、まだ残っている筈だ。

公にされたくなかったら、また、代表の命を助けたいなら、美術品持って、午後9時に通天閣に来い。来たら、また連絡する。ああ、運び屋は、3人の秘書だ。アルフィーズより

午後6時。EITO大阪支部。会議室。

「もう一回寝るか?」と悦子が言うと、「悦子、笑える冗談言いや。」と、真知子が注意した。「ゴメン。」

「ほな、早めに晩ご飯食べて、はどう?」「そうやな。そうしよう。『腹が減っては戦が出来ぬ』やな。」と、紀子の提案に、大前は言った。

大阪市役所の美術品とは、前の前の市長の平田が、自分の趣味で集めさせ、公費で購入してしまった、美術品のことである。今の府知事、今の市長は一心の会の会派で、その公私混同も追求し、結党僅かでダブル首長を実現した。全て処分させた筈だが、まだ残っているという噂はあった。

以前、小柳警視正からの依頼で、南部興信所でも中津興信所の応援を得て調査したが、見つからなかった。一心の会は、「二重行政からの脱却」を謳い文句で、水道局、図書館、美術館を整備し直し、大学も「市立大学」と「府立大学」を「公立大学」として統合した。

平田は、何かと言うと選挙妨害などをし、コロニー流行時も散々誹謗中傷をしてきた。

平田の「隠し財産」は税務署も追求を諦めた。吉本知事は、誘拐に関連することもあり、再調査させたが、結果は芳しくなかった。

午後7時。EITO大阪支部。司令室。

吉本知事から、ホットラインに電話がかかってきた。吉本知事は、以前、自身が誘拐されて以降、EITOにホットラインを開設させたのだ。

「大前さん。やはり、見つからなかったよ、申し訳ない。」と、電話の向こうで吉本知事は情けない声で言った。

「ひょっとしたら、犯人、アルフィーズの残党は、噂を信じきっているのかも知れませんな。税務署もよう見付けんかったんやから、仕方無い。大阪府警が用意した、レプリカを持って行かせましょう。ところで、通天閣は8時閉館と違いましたか?」

「そうか。受け渡しが出来ませんね。急いで臨時に延長させましょう。ただ、観光客には8時に出て行って貰い、関係者通用口だけ開けておいて、職員にはどこかに待避するよう指示します。」

電話は切れた。

「他の場所やったら、あかんかったんかなあ。」と、紀子が呟き、「よしっ!!」と二美が膝を叩いた。

午後9時。通天閣。展望台に、中村代表の秘書3人が、大きなトランク、小さなトランク合計5個を運び入れた。

誰もいない。不審に思いながら、3人はクルッと見回った。すると、通称『ビリケンさん』の足に手紙が貼ってあった。

ビリケンさん、とは、尖った頭と吊り上がった目が特徴の子供の姿をしている幸運の神の像で、足を掻くと御利益がある、と言われている。3人は、手紙を読む前に、ビリケンさんの足を掻いた。

手紙の内容は、こうだった。

よく勇気を持って、運搬した。だが、まだレベル1だ、ゲームーオーバーには程遠い。

エレベーターを降りて、恵美須町駅に向かえ。地下鉄に用はない。恵美須町駅の近くで、裸になれ。そして、日本橋駅まで走れ。靴と靴下は勘弁してやる。僅かな距離のストリーキングだ。撮影をしているから、『代走』はNGだ。代表の命を思えば、簡単なことだ。恥ずかしくなんかない。まだまだ熱帯夜だったりする。人通りの少ない時間だ。感謝しろ。道行く人は、暑さで気が変になったと思うだろう。警察官が邪魔しても、我々のせいじゃないからな。日本橋に着いたら、浴衣を用意してあるから、着ろ。その浴衣に次のヒントがある。浴衣がホームレスに盗られても、我々のせいじゃない。ああ。若くはないだろうから、全速力で走る必要はないぞ。アルフィーズ。

秘書の1人で、古参の鳳は、持たされたEITO開発の盗聴防止機能付きガラケーで電話をし、手紙のことを話した。電話の向こうで、大前は言った。

「分かりました。恥ずかしいでしょうが、犯人の要求に従って下さい。府警と所轄には連絡をしておきます。よろしくお願いします。」

電話を切った鳳は、ため息をついて、こう言った。「生きて帰れたら、辞職するよ。」

後の2人も黙って頷いた。

15分後。3人は、衣類を脱いで、『全速力』で、日本橋駅まで走った。

頭上を何故かパラグライダーが飛んでいた。まるで、3人を追いかけているようだ。撮影とは、このことか、用意周到だな、と3人は思った。

10分後。心臓が口から飛び出そうな感覚の3人は、日本橋駅の出入り口付近の公衆電話に乗っている衣類を見付けた。

すぐさま、浴衣を身に着けた3人は、紐を締めて、紙片を見付けた。次の指示か。しかし、裸で走った訳で、通信手段がない。公衆電話は目の前だが、鳳は、110番はいつも通じることをすっかり失念していた。

南出染め工場で待ってるぜ。助け出せれば、ゲームーオーバーだ。

ふと、気が付くと、3人の後ろから覗き込む女がいた。先ほどのパラグライダーの女だ、と鳳は思い、言ってみた。「あんた、一味か。」「一味?ああ、こっちの一味だな。」

芦屋二美は、EITOの方の身分証を出した。EITOエンジェルズの格好ではないので、ゴーグルはかけたままだった。

「え?撮影していたんじゃないのか?」「詳しい事は省くけど、撮影していたんじゃなくて、妨害していたの。」二美は、ガラケーを出して、連絡した。

「南出染め工場跡よ。後は任せる。」二美は電話を切ると、長波ホイッスルを吹いた。

長波ホイッスルは、犬笛のような笛で、通常の人間の耳では聴き取れない。簡単な『段取りOK』的な合図を送る時もあるが、救急信号としても使える。今回は、パラグライダー飛行中に吹くことで、通りのどこかのビルから撮影しているに違いない相手のワイファイ信号の邪魔をした。二美は、通天閣に潜んでいて、手紙を盗み読んで、展望台の外に出てパラグライダーで飛んだのだ。

間もなく、警官隊がやって来て、3人を保護した。

10分後。南出染め工場跡。

黒門市場と言えば、魚市場で有名な場所だが、色んな工場もある。南出染め工場は業務拡張の為移転をし、廃工場になっていた。

一味は、そこに侵入していた。高速道路に緊急着陸したオスプレイから降りた総子達は、工場に走った。

「お前ら誰だ。」「正義の味方に決まってるやろう、おっさん。」「おっさん?小便臭い小娘が何人かかっても・・・。」

いきり立った男の言葉は、誰にも届かなかった。あっと言う間にEITOエンジェルズに倒されたからである。椅子に縛られた代表は、猿ぐつわをとられ、捕縛は開放された。

総子に次々と連絡が入った。

「お嬢。電気屋の隣のビジネスホテルから出てきた男がやたらスマホを振り回してたから、警察官に捕まえてもろたで。」と、幸田から総子のスマホに電話があった。

さっき、連絡して来た二美がガラケーで「3人は保護して貰った。」と言って来た。

「3人の衣類は回収した。」と横山がメールで連絡してきた。

Linenで、伝子からメッセージが届いた。「お疲れさま。今夜こそ、ゆっくり寝て。」

工場に一美が警官隊を率いてやって来た。

「漆原商事の漆原会長。あんた、やりすぎたわね。取り調べの時はオムツ着けさせたげるわ。」

小柳警視正と真壁も到着した。

「代表。お迎えに上がりました。車で知事がお待ちです。」と、小柳は挨拶をした。

小柳は、出て行く時、総子に言った。「共犯の通天閣警備員2人も逮捕したよ。」

「さあ、撤収や。」と、総子はEITOエンジェルズに声をかけた。

午後11時。総子のマンション。

おにぎりを食べ終えた、総子に南部は言った。「さっき、ドリンク剤とビタミン剤飲んどいたで。」「よっしゃ、ややこや!!」

「露骨やなあ。戒名考えとこうかな?」

―完―





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