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52.倒れた南部所長

========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。小柳と一時不倫をしていた。

友田知子・・・南部家家政婦。本来は、芦屋グループ社員。

幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

花菱綾人刑事(巡査部長)・・・大阪阿倍野区の刑事。南部興信所所員。

横山鞭撻刑事(警部補)・・・大阪府警の刑事。南部興信所所員。

倉持悦司・・・南部興信所所員。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。

デビット・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。


=====================================

= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


午前9時。EITO大阪支部。会議室。

「熱中症って名前を最初に聞いた時は、ゲームみたいな依存症のことかと思ったけどなあ。」

「あんた。総ちゃん達、大丈夫なん?いつも思ってるンやけど。」

「ああ、ユニフォーム?EITOエンジェルズもEITOガーディアンズもユニフォームには、特殊な作りになっていて、あまり暑さを感じへん。」

2人の会話にヘレンが割って入った。

「ウチの失敗が生かされたんやね。」と、ヘレンは自嘲気味に言った。

ヘレンは、東京本部の応援で出張した際、路地でマスクを脱ぎ、汗を拭いた。

運悪く、週刊誌記者に撮影されてしまい、暫くは身を隠す羽目になった。

だから、皆、暑くても我慢している。その分、闘いは必死で早く終らせる。

自分の為と言うよりは、皆の為である。

「ヘレンは、まだ後悔してんのか?」「ううん。コマンダーやチーフのお陰で立ち直れた。通信士にも慣れたし、パソコンを自由自在に使えるようになった。ウチが抜けた後もみんな頑張ってるし。」

「じゃあ、もうひと踏ん張りする為にも、『身を固め』る?」と、笑いながら、三美が入って来た。

今日の会議は10時からだ。プライベートの話をするのは、いい機会かも知れないので、大前は三美に報せておいた。

ヘレンの前に、『釣書』が置かれた。

紀子が「男前やな。」と言うのと、ヘレンが「か、課長?」と驚くのが同時だった。

ヘレンは、身を隠していた間、三美の好意で、芦屋グループのビル内で、OLをしていた時期がある。課長とは、その時の、芦屋物産総務部の課長、すなわち、ヘレンの上司だった。

「急がなくてもいいよ。」と、三美は言ったが、「コマンダー。結婚したら、寿退社せんといけませんか?」とヘレンは言った。

「話、早いな。紀子。皆が出勤したら、婚約式や。イクで、まめたん。」「はいな、あんさん。」

大前夫婦は、アニメのような掛け合いをした。

午前10時。会議室。

EITOエンジェルズメンバーが集まった。

マルチディスプレイに小柳警視正が映っている。

「おや?チーフはどうした?大前コマンダー。」

「南部さんが救急搬送されたらしいです。こちらに構わず、行かんかい!と怒鳴ってやりました。追って、連絡があると思います。」

「そうか。それは、心配だな。実は、タレコミがあった。オタクロード、って誰か知ってるか?」

「警視正。堺筋西側の日本橋西商店街辺りの、ゲームとか同人誌・フィギュアの店が幾つかあって、所謂『オタク』が好むエリアなので、『オタロード』って、呼ばれています。」と、真美が発言した。

「真美隊員は詳しいな。今日、そのオタロード辺りで路上ライブが行われる。先日の道路交通法違反と違い、ちゃんと許可申請が通ったライブだ。ところで、そのバンドのメンバーが、偶然、半グレの伊東商会の取引のことを恵美須町駅付近の、中古パソコン屋で聞いてしまった。半グレに狙われるのではないか、と保護を求めている。取引も押えなければいけないが、ライブも警戒は必要だ。よろしく頼む。」

画面が消えると、小町は、『あかんべえ』をした。

「よし。ジュンのグループは、ライブの方に行け。ぎんのグループは、半グレの様子を探れ。小町は、ぎんのグループに入れ。」

皆が出て行った後。、「あんた、何してんの?総ちゃんいやへんねから、手伝いに行かないとアカンとちゃう?」と言って、百均の『火打ち石』を鳴らした。

「あ。そやな。」大前が出て行こうとすると、三美がフルフェイスヘルメットとキーを渡した。「表に駐車してあるわ。」

大前は、そそくさと出て行った。

「三美さん。あんな風でいいんですか?」「上出来よ、紀子。『おかみさん』だからね。母にもなるし。」

「『母は強し』、ですよね、総帥。」と、ヘレンが言い。3人は笑った。

まだ、未発表だが、紀子は妊娠していた。

大前は、三美が用意した三輪バイク『ヤマハ トリシティ125』に跨がり、フルフェイスヘルメットを被ってスタートした。

正午。敦賀屋オタクロード店。

私服警察官の振りをして、佐々ヤンこと佐々刑事と合流した大前は、バンドのメンバーの琵琶宗佑という芸名の人物と事情聴取した。

「時々、掘り出し物のパーツがあるから、ジャンク品コーナーで探してたんです。俺がいた場所は、ちょっと死角になっているんですね。俺、イヤホン着けてたし、聞こえた確証はないと思うんですが、その目つきが恐いおっさんが、店の主人に声かけられて精算している隙に店を出て、路地に逃げ込んだんです。そしたら、店から出てきたオッサンはキョロキョロして。」

「詰まり、あんたに聞かれたかも、と思って探した、ちゅう訳やな。」と、大前が言い、EITOエンジェルズが、それとなく護衛してくれる。あんたらは、予定通り演奏してくれ。但し、半グレのその男は、現れるかも知れんから、これで合図してくれ。」と、佐々ヤンは、先ほど大前から渡した連絡用ガラケーを琵琶メンバーに渡した。

「ガラケー?もう使えないんじゃないの?」「それは、一般のガラケーの話。後でちゃんと返してくれよ。『備品』だから。」

正午。黒門公園近く。伊東商会自社ビル。

デリバリーの寿司屋、ピザ屋、弁当屋が次々と入って行く。

ドラマなら、宅配食の容器に盗聴器を仕掛けるところだが、チラシ配りの振りをした小町が、そっと階段の隅に置いてきた。

午後12時半。

男が2人だけ、出て行った。

やはり、とぎんは思った。

取引が午後1時らしいことは、盗聴器で判明していた。

午後1時。オタクロード。

特設の櫓に上がり、ライブは始まった。

ボーカルに合わせて演奏中、ドラム担当の琵琶は、ステップを踏む振りをして、ガラケーを踏んだ。

午後1時。黒門公園。

黒塗りの車が数台止まった。中から出てきた伊東商会の面々が出迎えた。

「おんなッケがないのは、淋しいナア。」と、コスプレのナース服を着た今日子が現れた。目には、アニメでよく見かける、とんがった黒いサングラスをしていた。

「サービスがええな。伊藤さん。これは、『デザート』ですか?」

「頼んだ覚えはないな。どこのメイド喫茶や。」と、伊東は今日子に言った。

「ひ・み・つ。」後から来た、ぎんが言った。

伊東商会には、お馴染みのユニフォームのようだった。

「EITOエンジェルズ?」

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと我らを呼ぶ!参上!正義の戦士、EITOエンジェルズ、満を持して。」ぎんは、総子が日頃言っている口上で名乗った。

午後1時。ライブ会場近くの、ビルの屋上。

「成程。目つき悪いなあ。自分、おんなにモテヘンやろ?」その声に、ライフルを持った男が振り返ると、用賀がライフルを押えた。弾みで1発、弾は屋上の床に跳んだ。

男がしまったと思った時は、大前がボディーブローを叩き込み、うつ伏せになった。

「コマンダー。ボクシングの経験が?」「ああ、ちょびっとな。」

午後1時。ライブ会場。

銃声に驚く聴衆。

オタクは、元々気が小さい。今日はアニメの挿入歌を歌ったバンドが来ると聞いて集まったが、右往左往し始めた。

そこで、二美が、ボーカルのマイクを取って、言った。

「今の音は、EITOエンジェルズの仲間が悪党を倒した合図です。」

すると、聴衆の外にいた、黒いスーツの男達が、改めて拳銃で威嚇しようとしたが、EITOエンジェルズの行動の方が早かった。

ジュン達は、あっと言う間にバトルスティックとバトルロッドで倒した。

そして、何故か弥生がマイクを取り、言った。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと我らを呼ぶ!参上!正義の戦士、EITOエンジェルズ、満を持して。」

ジュンは、鼻の周りを擦りながら思った。「まあ、ええか。ウチ、花粉症やし。」

そして、ジュンは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、EITOの簡易通信機で、犬笛のように、サイレントホイッスルだ、主に警察に被疑者を引き渡す合図に用いる。

EITOは、警察と違い、逮捕は出来ても、それ以上は出来ないから、待機して貰っている警察に引き渡すのだ。

午後2時。黒門公園。

小町が吹いた長波ホイッスルの合図で、恵美須町警察署の警察官が一美や真壁と共に連行に現れた。

警察官の1人が、ぎんに尋ねた。

「1人だけ、股間が濡れていますが・・・。」「き、緊張してたんと違います?気イ小さいねんやわ。」と、ぎんは、ぎこちなく言った。

警察官が指さしたのは、伊東商会の会長、伊東大介だった。

取引とは、「拳銃の取引」だった。現行犯逮捕として、有無を言わせず警察官達は連行した。

「ぎん。小町か?」と、一美はそっと、ぎんに尋ね、ぎんは黙って頷いた。

「真壁。報告書は、私が書くわ。」と、一美は真壁に言い、真壁は頷いた。

上空に、デビッドが操縦するオスプレイが近づいてきた。

午後3時半。日枝病院。南部の病室。

南部興信所の面々が廊下に来ていた。

「熱中症ですか?」と、花ヤンこと花菱が院長に尋ねた。

南部は、点滴を受けていた。

院長は、花ヤンに尋ねた。「虐待は受けてないでしょうね?高齢者は隠したがるから。」

「虐待は受けてませんが・・・。」と花ヤンが口を濁すと、「夜の接待は忙しいようですよ。」と横ヤンこと横山が応えた。

「ものは言い様やナア。、倉持。」「そうですね。まあ、『過労』には違いないですね。」

その『原因』が、病室から出てきた。

「ああ、お嬢。さっき大前さんから電話があってな。ジュン、ぎん、小町の活躍で事件は一件落着らしい。」幸田が、短く『報告』をした。

「みんな、ごめんな。五回は多いから、明日から三回にするわ。」

やって来た、三美と知子がクスクスと笑った。

「ほな。明日の朝、退院な。普段は藤島病院で診てるらしいから、電子カルテ、送っておきましたから。」と、院長は言い、去って行った。

午後5時。EITO大阪支部。会議室。

「ということや。皆、ようやった。解散!紀子。南部さんに『お中元』送っといて。精力剤ゼリーはアカンで。」

皆が爆笑し、二美は、その様子を一美にテレビ電話で中継した。

―完―




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