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第41話

「さ、夜はまだまだ長いですよ?」

「……サキ、そろそろ休憩を」

「定期的に入れているではないですか?まだまだ詰め込まなきゃ行けないことがたくさんあるのですから」


 サキの追試対策講座が始まり数日が経過した。予定通りに進み効率の良い追試対策が進む中、蓮は疲労の蓄積により弱音を吐いていた。だが、彼女はそれを許さず口でなくペンを動かすように強要……ではなく促していく。


 睡眠時間は6時間と取れているので大丈夫だ。だが、朝早くから始まり、ほぼ休憩なしで詰め込まれたカリキュラム。

 蓮も勉強の際、自分なりに追い込んでいたものの、ここまで綿密に詰め込まれる流石に限界も近づく。


「なるほど。中間考査でサキに勝てなかったわけだね」

「……どうかされました?」

「いや、すごいと思っただけだよ。ここまで綿密に容量よく詰め込まれている授業受けると差を感じちゃうなって」

「何を言っているんだか……口でなく手を動かしてください。さ、次は問15ですよ」

「……はい」


 蓮はサキの授業を受けて何かを察したようだが、彼女は無駄口と捉えて次の問題を進めていく。

 蓮は黙々問題に取り組み始める。

 彼女は一秒も無駄にしたくないので、蓮の限界ギリギリを見極め組んでいる。


 実際サキ自身、自分の試験対策の計画表は限界ギリギリで組んでいる。慣れているからできるものの、今の蓮を見ると限界に近いのかもしれない。


 夕食に「サバ缶の味噌煮」「ほうれん草のおひたし」をしたりと時々、ほうじ茶を入れたりと工夫はしているが、それでも蓮には限界らしい。


「集中力も切れて、ケアレスミスが」

「ん?なんか言った?」

「いえ別に」


 集中力が落ちたまま、やっても勉強の効率としてはあまりよくない。

 集中力上昇させる、かつ蓮のやる気を出させる方法。

 蓮はとても単純な生き物なのだ。

 ご褒美を用意すればそれだけできるはず。


(そういえば以前、やって欲しいって言っていたことがありましたね)


 サキはそこまで考えると、また蓮が間違えているのを見つける。


「またここ、間違えてますよ。何度目ですか全く」

「あはは」


 疲労も見え始め、そろそろかとサキは結論づけた。


「……オムライス作ってあげますよ」

「え?なにか言った?」


 サキは恥ずかしさのあまり、小声になる。

 オムライスはこの前は揶揄うのが目的でケチャップで流水を描いた。

 今回は蓮の好きなことを描いてあげよう。 

 ついでに、アーンもしてあげなくもない。


「オムライスを作って差し上げると言ったのです!全く、頭も悪いも耳も悪いんですね」

「それは理不尽じゃない!てか、俺頭悪くないし!」

「古典以外ほとんど赤点の劣等生が何を言っているんですかまったく」

「今回だけだし!もう2度とこんなことはないし!」

「どうでしょうね」


 素直になれないのは今更だ。

 だから、サキは恥ずかしい思いを噛み殺して提案を続ける。


「それでどうするのですか?」

「ぜひ頑張らせていただきます!」

「よろしいです。では、これからもっと追い込みしますよ。徹夜でやるので覚悟してくださいね」

「待ってそれだけは勘弁してよ!試験の前に倒れるわ!」

「流石に冗談です」

「君って表情変わらないから」

「は?」

「すいませんでした」


 蓮は疲れているのだろう。いつもならそんな失言はしないのに。

 サキの威圧がかかった笑みに彼はたじろいでしまったのだった。

 だが、オムライスブーストがかかった蓮の勉強効率は大幅に上がった。


「蓮くんおめでとうございます」

「ありがとうサキ。君のおかげだよ」


 結果は言うまでもないだろう。無事に追試を合格することができたのだった。

 そして、蓮はオムライスを作ってもらえる権利を獲得した。





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