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第12話 楽しい時間 ダート視点

 4人で話していると自然と話がレースへと変わって行った。

彼がカルディアさんと一緒に居た時はどういう感じだったのかを聞かせて貰えて楽しいけれど、私が知らない彼を他の人が知っている事に嫉妬をしてしまう私がいる。


「という訳で、ミントを探してこの国を回っている時にシャルネさんに会ってこの町にいる事がわかったから連れて来た貰ったんだよ」

「ほんとに、逃げてごめんなぁ?……昨日も言うたけどあんたらに合わす顔が無いって思うてたんよ」

「まぁおかげで当時渡そうとしてた指輪は渡せなかったりしたけど、こうやって再開出来たから良いんだよ」


 ジラルドさんはそういうと笑顔を作ってコーちゃんの頭を優しく撫でる。

見ていて羨ましい気持ちになるけど、今迄レースを彼女にもしかしたら取られてしまうかもしれないという気持ちが多少でもあったからか安心している私がいた。

これでもう大丈夫だと思ってしまうあたり……確かに私は拗らせてしまうのかもしれないから気を付けないと。


「とはいえ3年も探す事になるとは思わなかったがな……」

「そこんとこはほんとごめんってクロウっ!……でも探してくれてありがとう」

「クロウもそんな何度も言わないでいいだろ?……それよりもさダート、これから俺もこの家に一緒に住む事になるわけだけどさ、この町で面白い所って何かあったりする?」

「面白い所……ですか?」


 そう言われてもこの町には特におすすめできるような程に面白い施設とかないし困ってしまう。

最近は人が増えて来たおかげで、飲食店とかが出来た位で面白いのかと言われたら違うと思うからどうしよう……。

んー、面白いかは分からないけど栄花騎士団の最高幹部が私達の家に滞在している位かな。


「えっと、場所は思い当たる所が無いんですけど面白いかは分からないんですけど栄花騎士団の方が今この町に滞在してますね」

「栄花の?こんな辺境に来るなんて珍しいな……、気になるからどういう奴か知ってたら教えて貰えるか?」

「アキラさんって方で、レースに魔術の指導と戦闘訓練をする為に来てるんです」


 アキラさんの名前を聞くと顔付きが変わり真剣な顔になる。

いったいどうしたのだろうかと周りを見るとクロウさんも耳を立てて難しい顔をしていて空気が一瞬にして変わってしまった。


「ちょっと、うちの家でそんな雰囲気出すなら出てってもらうよ?」

「ごめんなちょっとその名前の人物と以前Aランク昇格試験の時に戦った事があるんだけど……二人で戦った後一歩の所で勝てなくてさ」

「まぁ、そんな訳でいつか機会があれば栄花に行ってリベンジをしたいと思っていたのだがここで再開する事になるとはな……」

「ちょい待ち、話は分かったけどAランク昇格試験ってBランクの時みたいに元Aランク冒険者のギルド職員と戦うわけやないの?」


 コーちゃんの言うようにBランクに昇格する時は元冒険者でAランクまで行った職員が戦闘能力等を含めた総合的な能力を見て判断するけど、実質最高ランクになるAランクになると同じランク帯の者では判断が出来ないという事で元締めである栄花から幹部クラスの団員が試験官を担当するシステムになっていて、偶々その時に担当したのがアキラさんだったんだと思う。

取り合えずコーちゃんにその事を説明するけど、それをいつも以上に真剣な顔をして興味深げに聞いている姿に冒険者を辞めても、心は冒険者なんだなぁって感じて何となく嬉しくなる。


「って事はうちもあのまま冒険者を続けていたらあの男と一戦交えてたのかもしれん訳かぁ……」

「そうだったら三人であいつを倒せたかもなぁ……」

「なら今から行ってみて三人でリベンジしてみぃひん?冒険者辞めはしたけど最近色々とあって鍛え直してるから問題無く動けるで」

「いいかも知らないな……、ジラルド、ミント、俺の冒険者パーティーの一時的な復活か」


 そうして三人で楽しそうに、あの時はこういう技でやられたから今回はこうすれば優位に立てる筈だと作戦会議を始める。

あの刀を振った後に飛んで来る氷の斬撃は俺の火属性で相殺出来たから前衛は俺がやるというジラルドさんに、なら俺は奴の動きを妨害する事に専念するというクロウさんと、ならうちは得意の水の魔術を使った分身で攪乱するわというコーちゃん達を見て仲間って凄いなぁって思う。

一人で出来ない事も仲間がいるならこうやって作戦を立てて動けるのだから……


「っと……あかんこのままだとダーが置いてけぼりや、詳しい話は後でお昼ご飯皆で食べたらダーを家に送るついでに話し合いしよ」

「だな、そこは後にすっか」

「すまなかったな俺達の世界に入ってしまった」

「そんな……私は大丈夫なので気にしないでください」

「もう、ほんとにダーは良い子やなぁ……お姉ちゃんがぎゅーってしたる!」


 コーちゃんはそういうと椅子から立ち上がり座っている私を優しく抱きしめてくる。

顔に胸が当たって苦しいけど嫌な気はしない。


「でも一人だけ会話に入れないのは流石に駄目やん?って事で話は変わるけどダーの時は誰と戦ったの?」

「えっと、私の昇格試験の時は栄花から来たアンって人が来たよ?……確か武器は大鎌を使っていて死霊術を使う綺麗な女の人だったかな……連れてるアンデッドが変な人だったけど」

「変な人って……何があったん?」

「あのね?ポルトゥスって名前のスケルトンだったんだけど、アンデッドなのに自分の意識をしっかりと持っていて武器は自分が入っていたっていう大きな棺を鎖につなげてぶん回して来る色んな意味で変な人だった……」

「……アンデッドなのに自我があるのは珍しいな」


 ジラルドさんの言うようにアンデッドに自我がある事自体珍しい事で、死霊術で生み出された不死者が術者の元を離れて野生化し他の生物の命を喰らう過程で目覚める事はあれど使役されている状態で意識がある事は基本的には無い筈で本当に変な人だった。


「栄花ってうちが会った中だと一人以外まともなのおらん気がしてきたわ……」

「私もそう思う……」

「まぁ、んな話しとる合間にもう直ぐお昼やし皆でご飯食べよー!その後ダーを皆で送るから残りは道中で話すでーって事でダーも一緒に手伝って?」


……お昼だから簡単に食べれる物を二人で作る中で何個かレースが好きな食べ物の作り方を教えて貰って嬉しくなる。

作り終えて皆で食べている時に早く帰って作ってあげたいなと思っていたらそれが顔に出ていたらしくコーちゃんに弄られてしまったけど、本当の事だからしょうがない……。

そして食べ終えた私達は片づけを終えると皆と一緒に私とレースの家に帰る事にした。


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