ダート達と分かれて暫く歩いているけど、王城という割には何ていうか質素な気がする。
商王が治める国だから豪華な美術品とかが並んでいるんじゃないかなって思っていたのだけれど、何ていうか必要最低限の物だけしかない気がした。
「レースくん何か気にしてそうな顔してるけど大丈夫ー?」
「何か王城っていう割には質素だなぁって気がして変な感じというか……」
「あぁそれかぁ、先代は贅の限りを尽くしていたらしいんだけどね?クラウズ王が即位して以降はそれらを全て売り払って出た利益を国民が過ごしやすくなる為に使ったらしいよー、例えば国内で商売をする時に一年間の間税金の免除とか色々としてるみたいだけど俺は興味ないから詳しくは分からないかな」
今迄税金を使って好き勝手していた王様から、皆の為に色々としてくれる人に変わったという事だろうか。
政治に詳しく無いから難しい事は分からないけどそれで上手く行ってるなら良い気がする。
「でもさ、王城に絵画などの美術品が無いのは正直良くないと思うんだよねー、他の国から王族の来賓があった時に良く思われないからさ、考えてみてよ偉い人が安物の服を着て一般人と同じ物に囲まれて居たらどう思う?」
「別にいいと思うけど……」
「国民からしたらそうだと思うけど、貴族や王族からしたらそうではないんだよー、贅沢をするのは貴族や王族の特権で彼等が国のお金を下に降ろしてくれるというのは
必要な事でもあるんだ、何でかっていうとね?外国に我が国はこれ程の贅沢が出来る力があるという一種のステータスなんだ」
「それがステータスになるの?」
「なるよ?国が潤って言うという事は、それだけ国民の生活も豊かという事だからね……、現にこの国は他国と比べて貧民の数が極端に少ないんだけど変わりに王様が贅沢をしないから他国から見たら力の無い王様に見られてなめられてしまうね……、さてそろそろ彼等の場所に着くよー」
ソラがそういうと一つの扉の前に立ち止まる。
そしてゆっくりとドアノブを回して開くと……、そこには椅子に座っているジラルドと周囲を警戒しているクロウがいた。
「お、やっと来たかっ!遅いから心配してたんだぞ?」
「ごめんねー?色々と話し込んでたら遅くなっちゃってさー」
「ならいいけどさ……、ダート達は作戦通り別行動か?」
「だねー、……あぁ、そういえば疑問なんだけど何か騎士達の気配が無いんだけどおかしくない?」
「あぁ、それなら耳を澄まして聞いていたが……、どうやら教会の方で【教皇】が何者かに誘拐されると同時に火災が起きたらしくてな、その対応の為に殆んどの騎士と兵士が出払っているらしい」
ミコトさんが誘拐された……?昨日の感じたあの人の強さ的に簡単に捕まるような人では無いと思うんだけど……、それにもしかしてなんだけど王城に行く前にすれ違った人ってやっぱり彼女だった?。
「ミコトさんなら多分、カエデ達とここに向かう時にすれ違ったかもしれない……」
「なん……だと?それは本当なのか?」
「あぁ、多分あってると思うよー?俺が日頃チームを組んでる二人がいるんだけど彼等がアキラくんにお願いされて救出しに行ったからねー……、でも一人で動いてた理由は分からないかな、でもまぁあの二人が任務をしくじるとは思わないから大丈夫な筈だよ」
「まぁ、結果的に俺達が動きやすくなったから良いだろ……、取り合えず行こうぜ?ソラさん幻影の方お願い出来るか?」
「いいよー、じゃあ皆行こうか―」
ジラルドが立ち上がると同時にその姿が消えて行き、次にクロウの姿が消える。
「じゃあ次はレースくんだね、その後に俺も幻影の中に入るから俺から離れ過ぎないようにねー、距離が空き過ぎると範囲外に出てしまうから気を付けて?」
「……わかりました」
ぼくの姿が消えると同時にジラルドとクロウの姿が見えるようになり、そこにソラが歩いて入って来た。
どうやら同じ幻影の中にいる人同士なら姿が見えるらしい。
「じゃあ行くけど、大きい声を出さないようにね?ある程度は俺の魔術で外に聞こえないように出来るけど限度があるから」
ソラが音を立てないように扉をゆっくりと開きながら出て行くと、こちらを見て手招きをする。
「それにしても本当に誰ともすれ違わないな、俺がミントと来た時は騎士や兵士が結構いた筈なんだけど……」
……ソラについて部屋を出て皆で通路を歩いているけど、確かに人とすれ違う事は無い。
ミコトさんの事もあると思うけど、ダート達が陽動をしてくれているおかげだろうか。
もしそうならこのまま上手くコルクを救出出来そうだ。
そう思いながら通路の角を曲がると、そこには壁に寄り掛かる様にして意識を失っている騎士や床に倒れて気を失っている兵士達の姿があった。
「……姿を消す術は見事だけど風の魔術で周囲に巻いている毒を散らしてしまうのは良くなかったわね、これじゃ私に見つけて欲しいって言ってるようなものね」
「……これはまずいねー、どうやら相手の方が一枚上手だったみたい」
「姿を現したらどう?、それともこのまま逃げる?」
……誰かの声が聞こえたかと思うと通路の奥から紫色の髪の女性が現れる。
その姿はジラルドに聞いていた女性に雰囲気が似ているけど、顔にモノクルを着けていた。
魔力の感じ的に心器だと思うけど、どんな能力を持っているのか分からないから警戒をしてしまう。
この場合、未知の戦闘力を持つ相手と戦うよりも逃げた方が良いと思うけど……ぼく達の背後からいきなり毒々しい色の液体が噴き出して通路を塞いでしまう。
どうやら戦うしかなさそうだ……。