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第12話 刑務所の外に


 襲いくるゾンビ達を、賢一たちは見事に撃退して、何とか戦闘に勝利した。



「無線機と地図を、一人一個、一枚ずつ渡す? 私はジョンソン看守長とともに、刑務所内に戻る? 何か問題があったら、無線で連絡を寄越してくれ」


「分かった、俺たちは海を目指して、ボートを探してくる? 途中、民間人を救助したら、ここに来るように伝えるからな」


「ボートね? 何かしら、まだ、ビーチに残っているかもね? 取り敢えず、行きましょう」


 甘は、誰よりも先に、テント内に入ると、六人に携帯式・無人機を手渡していく。


 賢一とモイラ達は、それを受けとると、早速だが、ビーチを目指すべく入口を目指した。



「救助隊から、連絡が全くないんだ…………心配だよ」


「戦闘部隊は、殆どが市内各所に向かったからな」


「お前ら、その話は本当か? 確かめに行かなくては」


「もしかしたら、ゾンビや暴徒化した群衆に殺られたのかもね…………ここは、もう平和なビーチじゃないし」


 M4カービンを持っている、白人兵士や黒人看守たちが困った表情で、会話している。


 それを聞いて、ジャンは行方不明の兵士達を探しに行こうと言うが、エリーゼは険しい顔をする。



 彼女が言った通り、市内では大量のゾンビや、暴徒化しているギャング等が存在しているからだ。


 平和な南国の楽園は、戦場と言う地獄と化しており、最早安全な区域は限られている。



「どうした? 救助隊が何だって? 助けが必要なのか?」


「JSDFと海兵隊かっ? 国連軍が、救援部隊が来たのかっ?」


「残念ながら、私達も本隊とは離れているのよ? これから本隊と合流するべく偵察に向かうところよ」


「なら、救助部隊の生き残りを探してきてくれないか? 彼等が生きているなら、ここの防備を固められるし、連中の方が武器や装備もいいからな」


 賢一が、悩む白人兵士に声を書けると、彼は本格的な救助隊が到着したと勘違いして、笑顔になる。


 しかし、モイラが真実を話すと、黒人看守は困惑した表情を浮かべながらも、捜索依頼を頼んだ。



「そうか? それで、防弾装備のゾンビや、銃を持った兵士が少ないのね」


 モイラは、周囲を見渡し、予備の武器として、ライフルや拳銃が無いか探す。



「メモを渡す、これに書かれた場所が、行方不明の部隊員の居場所だ」


「分かった、ただ、全員を見つけられるとは思わないでくれ、出来るだけの事はするが」


「余計な暇は無いけれど、ビーチまでの道に近いわね? 一応、向かってみるわ」


「そうか、頼むっ!」


 白人兵士が、メモ用紙に、簡単な地図に建物や地名を書いた物を、賢一に手渡す。


 本来なら、モイラは無駄な回り道をする気はないが、次いでに行くなら良いかと考えた。



 市民や味方部隊の救出も、当然軍人として、行わなければ成らないからだ。


 黒人看守は、頼みを聞いてくれた彼女の前で、少しだけ笑みを浮かべながら喜んだ。



「おお…………戦闘が終わったのか? もう安心だよな?」


「そうだと言いけれどね? 電波が繋がらないわ、これじゃ、ママと連絡が取れない」


「はぁぁ? うわっ! 何だよ、人間か?」


「落ち着いて、私は何もしないからっ!!」


 コマンドウ装甲車に隠れていた感染していない民間人の白人男性が、車両側面ドアから出てきた。


 その後ろから、白人女性も車内から降りてくると、スマホを動かす。



 アジア人サラリーマンが、刑務所のドアから黒人女性が登場すると、物音に驚いてしまう。


 彼女も、両手を前に出しながら、叫び声を聞いて、ビックリしてしまった。



「彼女は、ただ病気だっただけだぞっ!」


「いや、すでに死んでいたわっ! 殺らなきゃ成らなかったのよっ!」


「あの? 喧嘩は良くないです」


「生存者同士で、争っても仕方がないだろうによ」


 黒人男性が怒るが、アジア人女性は両腕を組ながら、同じように声を張り上げる。


 そんな二人を、仲裁しようとして、メイスーとダニエル達が、喧嘩を止めに入る。



「よお? お前ら、酷い戦闘だったが、無事に生き残った見たいだな?」


「私たちは、ここに残るわ…………噛まれたくないからね」


「そっちは、噛まれたら、死ぬからな? まあ~~しゃあないわな? 俺たちは街の様子を探ってくるわ」


「準備が整ったら、ボートで脱出するけど、アンタ等は着いてくるかしら?」


 ミュレットは、ズカズカと偉そうな態度で、歩きながら、声をかけてきた。


 ダフネも、M16A2を右肩に担ぎながら、不機嫌そうな表情で呟く。



 二人を前に、賢一は、今から行くべき場所を伝えると、モイラとともに歩きだす。


 彼女も、コルト45を両手で握りながら、刑務所の入口を目指していく。



「ふぅ? ここに、このまま残ってても、仕方がない? 組織、いや会社の支部があるのは、ここじゃないし」


「準備できたら行くわ、その時は頼むわよ…………」


 ミュレットが、仕方ないと言う感じで呟くと、ダフネは溜め息を吐きそうな顔で話した。



「あの? ここは、食料の備蓄は十分なんですか? もし、可能なら、スーパーに行って欲しいのですけど」


「賢一さん、私の親戚もビーチで、中華料理屋に居ますし、スーパーは近いです」


「なら、行く必要があるな」


「お使いじゃないんだからね? あまり、余計な場所には、行かないからね」


 ラテン系の二人が居なくなると、今度はアジア人女性が、依頼を頼み込んできた。


 メイスーも同じような事を言うと、賢一とモイラ達は、渋々スーパーに向かう事にした。



「しかし、補給は必要になるから、立ち寄るのも、有りね? ジュース、食べ物? あと、出来れば弾丸が撃ってれば文句なしね」


「あのな…………ここは、アメリカじゃないぞ? まあ、置いてある可能性が無くもないが」


「もう行くんですね? ダニエルさん、エリーゼさん、ジャンさん? 行きますよーー!」


 モイラは、コルト45を構えながら、弾倉を抜いて、残弾数が少ない事を確認した。


 彼女の話しを聞いて、賢一は疲れたような顔をしながら歩いていく。



 アメリカなら、スーパーやスポーツ店に、銃や弾薬が品物として、置いてある。


 しかし、プルケトに関しては、ハワイやフィリピンのように弾丸を、販売しているかは分からない。



 そんな中、二人の背後から、メイスーが現れると、大声で仲間たちを呼んだ。



「おお、待ってくれっ! 俺を置いていくなっての? 本来なら喧嘩は嫌いだが、スーパーヒーローが必要なら、行くしかないぜ」


「さんは要らないわ、エリーゼと呼んでいいわよ」


「ようやく、出発するのか? はやく、市民と部隊を救出しに行かないとな」


 ダニエルとエリーゼ達は、のんびりと歩いてきたが、ジャンだけは走ってきた。


 六人が目指した入口には、ハンヴィーの前で、看守たちが、二人で見張りをしていた。



 M60車載機関銃を備えている、銃座には黒人兵士が座り込み、外を警戒している様子が見えた。


 さらに、予備の弾薬箱を両手に持ち運ぶ、アジア系兵士も、左側から近寄ってきた。



「お前ら、外に向かうのか? なら、上から街を確認してからにしろ」


「上ね? 上…………」


 アジア系の看守は、背後にある、高い建物を指差して、監視塔を皆に見せた。


 それは、入口から数えて、三階ほどの高さにあり、ガラスが太陽光で輝いていた。



 皆が、そこに向けると、刑務所全体を見渡せる監視部屋が、手摺てすりに囲まれているのが見えた。


 賢一を含む、六人は左側にあるドアに入っていき、監視タワーを目指していった。



「街が見えるわね? 兵隊たちは、やる気が無さそうだけど」


「ここからなら、街を一望できる…………目的地への道もな」


 モイラと賢一たちは、監視部屋の中から、ビーチへと続く、町と道路を眺めた。


 監視部屋を囲む手摺には、看守や兵士たちが、ゾンビと同じ、死んだ目をしながら歩いていた。


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