「どうしました?」
「衣装芸術の先生って、あの、お名前は」
「カメリア・ウッドマンズ…… あらあらあらあら、もしかして。先生ー!」
テレバは音も立てず跳ねる様にして「先生」の元へ駆けて行く。
絶対第一では見られない光景だ。
そして何やら話しかけ、こちらを示す。
すると「先生」がこちらに近付いてきた。
「え? もしかして、あの小さかったテンダー?」
「は、はい。叔母様、お久しぶりです……」
するとカメリア叔母様は私をぎゅっと抱きしめ、がしがしと頭を撫でた。
「やだもう! 久しぶりなんてものじゃないわよ! まあ会えて嬉しいわ! 私が伯爵家から逃げ出して以来だから、もう十年経つのねえ。どう? やっぱりあのひと達とは顔も合わせていない?」
「叔母様…… 一応朝食と正餐だけは合わせてました」
「出発の時は?」
「確かあの時は皆春先の旅行に出ていたような」
「ああ全く相変わらずね! でも学校は楽しそうで良かった良かった」
「あ、夏期休暇は友達のところへ」
「まあ貴女に友達が! もしかしてこの皆さん皆そう? まあ! 私嬉しいわ! まあまあ皆さんこの子を本当によろしくね」
唖然とする皆に向かい、叔母は勢いよく頭を何度も上下に振った。
「カメリア先生の姪御さんでしたのね。確かに少し面影がありますわ。野薔薇と思ったのは私間違い無いですもの!」
ははは、と私は多少引きつった笑いを浮かべた。
白薔薇と紅薔薇はいいが、木香薔薇と浜茄子をたとえに出してくる辺り、本当にこのテレバ嬢は薔薇が好きなのだろう。
棘のない木香薔薇、荒れ地、浜辺にも咲き、香気高い大きな花を咲かす浜茄子。
その中で野薔薇を出してくるとは。
「ちなみに先生を見た瞬間に、白椿を連想しましたのよ!」
そして積もる話もあるのでは、と皆テレバ嬢に率いられ、劇の準備委員会の方へと連れていかれた。
私はカメリア叔母様と二人になった。
「この場はまあ皆に任せておいてもいいわ。ちょっとお話しましょう?」
「あ、はい」
私は叔母に連れられ、第五の食堂へと向かった。
そこはどうも第一のそれとはやはり違っていた。
確かに食堂なのだが、壁が!
元々の建物は同じはずなのに、壁には、レリーフなのか何なのか、立体的な装飾がこれでもかとばかりにされている。
「ああ、これはね、彫刻専攻の生徒がどんどん漆喰細工を足して行くの。あっちはモザイクやフレスコを専門に学んでいる子達が」
「生徒達の作品ってことですか!」
「碌な出来でないと、上からどんどん足されてしまうのよね。だから碌な出来にするべく、挑戦する子達は必死なのよ。漆喰って素手だと大変なのよ? 取り組んだはいいけど、熱中しすぎて手の皮がべろべろになってしまう子も居てねえ」
楽しそうに叔母は話す。
そして待機している厨房に一声かけると、黒茶にミルクを入れたものを出してもらった。
「はいどうぞ」
テーブルもまちまちの場所に置かれている。
大きさもまた然り。
「ああやっとゆっくり話せるわ」
叔母はほっとした顔になった。