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第23話 デッキ公開

俺は1Fに唯一あるデュエルフィールド以外の部屋である講堂へと入る。


そこにはすでに葉風先生とF組の担任の先生、それに加えて実技授業の教師である荒木先生がいた。


講堂に映る映像には俺達が先程のデュエルの映像が映し出されている。


「やぁ、来たね。

いやぁ勝ってくれてありがとう!これで私の給料アップは確実だ!アッハッハッハッ!」

「ん?給料アップって確か俺たちのクラスの白星が多い場合じゃなかったでしたっけ?」

「あぁ、言ってなかったね。

今回のエキシビションなんだがこっちもこっちで勝ったほうに給料アップがかかってたのさ。

いやぁ本当に助かったよ!」


この人よく他の教員がいる中でそんなこと言えるなぁ……。


「それで?俺達だけこっちに呼んだ理由はなんです?

たださっきの件の礼って訳じゃないんでしょ?」

「いやぁ話が早くて助かるよ。

さっきの試合なんだがね、君達のデッキを公開した上で解説をしたいんだが構わないかい?

もちろん君達が断るのであればデッキ公開はしないから安心して欲しい。」


デッキ公開か……金田のような専用デッキはともかくとして俺の今回のデッキは8割以上が共通カードで入れている数少ない盗賊専用カードは他のカードでもある程度は代用可能なものもある


まぁ流石に《文明の破壊神・ロストディザスター》はユニークレアカードだから俺以外に入れられる奴は居ないだろうしその辺は心配し過ぎか


俺は少し考えたがやはりデッキを公開することにした


「構いませんよ、結局ユニークレアありきのデッキなので中身バレてもデッキを真似するのは無理ですし参考程度でしょうから」


とはいえ俺のデッキはフィクスシャッフルがある事を大前提としたデッキバランスをしているかなりリスキーな構築だ


恐らくこのデッキをフィクスシャッフル抜きで運用すればほぼ間違いなくまともに戦うことが出来ないだろう


俺は先生の指示に従って講堂に置いてあるデッキスキャン用のマシンに自分のデッキを入れて中身のカード情報をスキャンする


「ほうほうコレはコレは……ん?このカードは?」


先生は俺のデッキスキャンデータを見ながら考え込むような表情をしていたがある1枚のカードを挿して俺に聞いてくる


これは……俺が入れていたユニットが大量に出てくる時を想定した対策カードだな。


「アクションカード《盗賊の逃げ足》、効果としては単純でユニット1枚を手札に戻してコストダウンさせるってだけですよ」

「成る程……しかしコストが6となるとすぐに再召喚するのは難しいのではないかい?」

「そうですね、コストダウンといってもせいぜい3コストなので7コスのユニットまでしかすぐに再召喚は出来ないです。

コレだけ見れば確かにコスパはあまり良くないんですがロストディザスターで運用するのであれば話は大きく変わってきます。」


ロストディザスターの場合まともに使えるようにするまで結構時間がかかってしまうが準備さえ整ってしまえば一切コストを気にすること無く使える


手札のユニットカード全損に加えてコストアップ効果もあるがアクションカードはロストディザスターの効果対象にはならない為に普通に使える。

これによって導き出されるコンボとしては……


「ロストディザスターに《隠れ身》を付与した最大の理由がこのカードです。

隠れ身で攻撃するまでの間生存させつつユニットの大量展開をするようであればその次のターンに殴れそうなら相手プレイヤーを殴ってから《盗賊の逃げ足》を発動してロストディザスターを再召喚した殲滅を狙う事が出来ます」


2ターン連続でのユニット全滅となるとそう簡単に盤面をリカバリーするのは不可能に近い。


特に除外効果による殲滅の為死亡時効果は一切発揮されないというのもあってこのカードはかなりのバランスブレイカーだ


「これは……なかなかえげつない組み合わせだ。

しかも相手の手札を無理矢理引きずり出すカードまであるなんてね」

「そっちも保険ですよ、ただこのデッキはロストディザスターが倒された時点で俺は負けを認めざるを得ませんね」


このデッキ最大の弱点がコレだ。

短いターンでロストディザスターの準備を完了出来る代わりにやられたら勝ち筋が無くなる、これではネタデッキも良い所だ


「それにしても随分とシビアなバランスだ、フィクスシャッフル前提じゃないか?」

「正解です、基本的に俺のデッキは皆そうですよ」

「成る程、私も教師をやっててフィクスシャッフルを使う生徒は何人か見てきたがここまで特化した生徒を見たのは久しぶりだね」


「久しぶり……他にはどんな生徒が使ってたんですか?」

「ん?そうだね……」


葉風先生は何か思い出すような表情をして答える


「今の世界チャンピオンさ」


葉風先生はイタズラっ子のような笑みを浮かべてそう答える


また随分な大物が出てきたもんだ。


「っと向こうも確認が取れたみたいだね、じゃあ他の皆を講堂に呼ぶから少し待っててくれるかい?」

「わかりました」


葉風先生はそう言うと放送をで生徒達を呼び出しに講堂の外へと移動した


それにしてもデッキ公開されるとなるとこのデッキはもうまともに機能しないな。

後で別物と言えるレベルまで組み替えておく必要が出てきた


この世界におけるデッキ公開は実際の所かなりリスクが高い、ただ金田に関しては俺がやった戦術に近い事をされた場合あのデッキでは同じくリカバリーが不可能になるためデッキの大幅修正は元々避けられない、そして俺は俺でデッキを複数所持していてそのバランスを調整する為に頻繁に入れ替えているからこそその手のリスクは大きく減少する


恐らくだがそれが分かっているからこそ先生達はデッキ公開をしても良いかと言う打診をしてきたのだろう


ただまぁアイツのデッキもバランスが完全に悪い訳じゃなかった、実際1ターンで殲滅するような自体にならない限りは確実にとてつもないスタッツを持ったユニットが片方残っただろうしもし両方とも2ターンかけて倒したとしてもドロー枚数が増えているからこそリカバリーは早かっただろう


今回ばかりは盗むとかデッキ破壊だと少し怪しかったな


盗むはどうしても動きが遅くなりがちで《挑発》持ちばかりを使っていてはこっちの準備が整わないしデッキ破壊は相手の攻撃力を0にすること前提だがあそこまでスタッツが一度に上がるとなるとちょっと厳しい物がある


そんなことを考えながら待っていると外からざわざわとした声と多くの足音が聞こえてきた。

どうやらもう来たらしいな


「あ、浅麦君!お疲れ様でした、とても凄かったです!」

「ありがとう久慈川さん。」

「それにしても本当にユニークレア何枚もあるんですね……それらをいくつも使いこなすなんて凄いです!」


久慈川さんはとても興奮した様子で次々とデュエルの感想を話していく


やっぱり彼女もこの世界の住人らしい所もあるようだ


「はいはい静かにー!

それじゃ荒木先生、お願いしますね」

「結局丸投げですか……葉風先生らしい。

ごほん、それではちょっとした講義を始めさせてもらう」


すると講堂の生徒達から一斉に『えぇぇ?』といった声が発せられる


どうにも生徒全体から高い戦意が感じられるやっぱり全員が戦うというだけあって皆疼いているようだな


「まぁそう言うな、先程戦っていた2人なんだが我々が確認を取り、デッキを公開しても良いという許可を得た。

今回はそれを踏まえながら先程のデュエルの要点についておさらいしていこうと思う」


先生がそう言うと全員の空気が一度に切り替わり、一部の者に至っては驚愕すらしている


「浅麦君、デッキの公開なんてしてよかったのですか?」

「あぁ、どのみち大幅に変える予定ではあったからそんなに問題はないんだ。

それにあのカードを使ってないだけで俺のデッキは全てロストディザスターを入れられるようにバランス組んでるんだよ。

あのカードは合わないデッキが基本無いもあるからな」

「成る程、ある種究極の奥の手なんですね」

「そういうこと、さっきのデッキはさっさと出す為にユニットの数のみを優先したから全体性能は低い、本来は10ターン目以降、0コストで出すとしても15ターン目くらいになってもおかしくないんだ」

「やっぱり低いコストで出さないと割に合わないですか?」

「そりゃね。」


そうでもしないと他のアクションカードが使えない上にユニットカード全部除外される上にコストアップするから割に合わないからな


「あれ、あのカードってあんなにデメリットあったんですね」

「まぁ言わなかったのはそこまで言ってしまえば確実に弱点がバレるからなんだがもう公開してしまったから気にする必要もないか」


周囲の生徒の反応としては若干微妙な物が混ざっている


やはりというべきかこのデッキのあまりのバランスの悪さに疑問を持っている者も多かった


フィクスシャッフル自体は使える者が少ない技術だからこそこのバランスで何故組まれているかがあまり理解されないんだろうな


先生からの解説が終わった後、俺達は講堂を出て隣にあるデュエルフィールドが大量に設置された部屋へと移動する


次は久慈川さんの改良後のデッキがどうなっているか楽しみにさせてもらおうか



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