デュエルフィールドの置いてある闘技室へと移動した後、俺と金田以外の生徒全員は事前にくじで決められたデュエルフィールドの場所へと向かい、お互いの対戦相手と向かい合っている
久慈川さんは相手から侮られているようだが特に緊張はしていなさそうだ、とはいえあの態度から察するにある程度久慈川さんの事は悪い意味で噂になってしまっているようだな
俺は事前に戦ったというのもあり好きに感染して良いとの事だったので久慈川さんのデュエルに注目する事にした
全員がデュエルフィールドにデッキをセットして意識を移したのを確認して俺も観戦側として先生達の見ているモニターの場所へと移動した。
「浅麦、お前が今回注目している試合はどれだ?」
「個人的に気になってるのは6番デュエルフィールドでの試合ですね」
「6番……というと久慈川か、確かにアイツもユニークレア持ちだが実力の方はお前も知っての通りからっきしじゃ無かったか?」
「先生は最近の久慈川さんの戦績を見てなかったですか?」
「ん?最近?ちょっと待て」
葉風先生は恐らく教員用と思われるタブレット端末を取り出すとそれを操作してある画面を見ている。
恐らく生徒全員分のデュエル記録が教員用の端末に記録されているのだろうな
「っ!こいつは驚いた、お前と良く話すようになった辺りからすこぶる戦績が良くなってるじゃないか!
さてはなんかしたなぁこのこの」
「うざ絡みやめてください」
「うざい!?」
なんか先生がショック受けてる……意外と繊細なのか?
…………荒木先生に丸投げしたりしてる辺り違うか
「んで、実際の所どうなんだい?」
「まぁ間違っては無いですが強くなったのは久慈川さんの実力ですよ、俺は持っていたユニークレアの中から俺が使えない職業のカードを渡しただけですから」
「あー、お前はそっちのタイプもあったのかぁ……。」
「やっぱり前例は結構あるんですね」
「そりゃこの学園に居れば結構見つかるのもだよ、ただでさえ世界中から実力者がこの学園に集まるんだ、自然とユニークレア持ちも使える使えないを抜きにしても集まってくるのさ。
だとしてもお前は例外中の例外だけどな」
俺としては心外だと言いたいところだが事実俺がこの世界において色々と特殊である自覚がある分なんとも言えないな。
『『デュエル!』』
「っと始まったな。
先攻は……久慈川からだな」
久慈川さんが先攻となったか、彼女のデッキコンセプトの事を考えるとそれなりに大きなアドバンテージになりそうだ
彼女の職業は僧侶であり、白を基調としたシスターの衣装にも見えなくない神官服を来ている。
対する相手の服装は鎧のない軽装に鞭、あれは『魔物使い』だな
「魔物使いは基本的に種族同士でのシナジーを強化するタイプだがあまり相手を攻撃しないスタンスを取ってる久慈川には相性は悪いんじゃないか?」
「まぁ普通ならそうですね、ただ今の彼女には相手を攻撃する理由があまりありませんからね」
先生は俺の言葉に首を傾げるがこれ以上のネタバレは面白くないからな
『私のターンです、前例左側に《プチゴーレム》を召喚してターンエンドです』
『ーーッ!!』
《プチゴーレム》0/2《挑発》
「ほう、これまたお前と同じような序盤の動き方じゃないか。」
「まぁ元々久慈川さんは攻撃力があまり高くないユニット主体の耐久型でしたからね、俺の使った《ゴーレム》系列のカードは元々相性が良いんですよ」
『俺のターン、MPをアビリティポイントに変換してターンエンド。』
『私のターンです、MPを2消費してアクションカード《生命の祈り》を発動します。
《プチゴーレム》の最大HPを+3します』
『ーーッ!』
《プチゴーレム》0/2→0/5《挑発》
久慈川さんのデッキを見て実は俺は一種の恐ろしさを感じていた
久慈川さんのデッキは最大HPを増やし、削れた体力を回復する事を主体としたデッキだがあまりにも序盤からこのムーブがしやす過ぎたのだ
コレにより先攻を取った現在、相手が《プチゴーレム》相手に日和見を決めていたこともあり対象が大きく遅れてしまい2ターン目の時点ですでに用意に攻撃を通すことが難しい壁が出来上がる
この壁を早期に落とせない場合その最大HPは更に上がり続け、削ったHPも様々なユニットやアクションカード、職業アビリティによって回復し続ける。
この情報で"例のカード"が出せる状況になってしまえばその時点で相手の詰みが確定するのだ
『面倒な……!俺のターン!コストとしてMPを2消費して前例中央に《アシッドスライム》を召喚してターンエンドだ』
『ゴポポッゴプァ!』
《アシッドスライム》2/2
相手の前列中央から黄色の泡立つ粘性生物が現れる
どうやら相手のデッキら《スライム》を軸にしたタイプのデッキのようだ
確かスライムデッキは数で攻めることを主体としているタイプのデッキだったな、分裂なんかで同じ個体を増やす効果もあったはずだ
『私のターン、MPを3消費して後列中央に『サプライズフェアリー』を召喚してターンエンドします』
『フフフッ♪』
《サプライズフェアリー》0/3
「また攻撃力のないユニットか実際どうなのかねぇ」
「いや、久慈川さん今恐ろしいくらいに理想的な立ち回りしてますよ」
《サプライズフェアリー》は確かに攻撃力は無いしHPも3しか無い、ただこの程度であればコストの方が強いカードが普通にある
だがこの状況下では回復時に効果を発揮する《サプライズフェアリー》は恐ろしい程に状況に噛み合っている
『俺のターン、MPを3支払い前列左側に《ポイズンスライム》を召喚する』
『グププププ……!』
《ポイズンスライム》1/4
今度は紫色に光るスライムが現れ、《プチゴーレム》に毒々しい液体を吐きかける
『《ポイズンスライム》の召喚時効果発動、《プチゴーレム》を指定して《毒》状態を付与する』
《プチゴーレム》0/5《挑発》《毒》
『《アシッドスライム》で《プチゴーレム》を攻撃してターンエンド』
『プギュァアア!』
『ッ!?ーーー!!』
《プチゴーレム》0/5《挑発》《毒》→0/3《挑発》《毒》
ターンエンド時効果発動
《プチゴーレム》0/3《挑発》《毒》→0/2《挑発》《毒》
「《毒》か、中々面倒な状態異常をもらったね」
《毒》状態の面倒くさい部分としてお互いのターン終了時に1ダメージを与えるという単純なものではあるが実際の所結構恐ろしいくらいの耐久型キラーとも言えるカードだ
だが久慈川さんのあの表情か、察するにまだ何か仕込みがありそうだ
『私のターンです、MPを3支払い《プチゴーレム》にアクションカード《ディスポイズン》を使用して《毒》含む悪い状態異常を回復してHPも1回しちゃいます』
『ーーー!』
『サプラーイズ!』
《プチゴーレム》0/2《挑発》《毒》→0/3《挑発》
更に《プチゴーレム》を回復した事により《サプライズフェアリー》の効果が発動して久慈川さんは山札から1枚ドローする
『更に残りのMPを使ってアクションカード『デュアルヒール』を使います!
これによって《プチゴーレム》はHPを2回1回復します』
『ーー!』
『もっともーっとサプラーイズ!』
《プチゴーレム》0/3→0/4→0/5《挑発》
更に久慈川さんは手札を2枚ドローする
出たよインチキドロー加速……。
自分で教えといてなんだが恐ろしい効果だよほんと……
『更に職業アビリティ《神々の加護》で次のターンが私とユニット達が受けるダメージを-2します!
ターンエンドです!』
「…………なんか今の一種だけで凄く嫌な予感がしたんだけど?」
「正解ですよ、もうここまで回っている以上あれ崩すの無理ですね……」
正直あの職業アビリティが発動した以上はあの《プチゴーレム》をそのターン中に倒し切るのはほぼ無理であり、《挑発》持ちである以上他のユニットを狙うことは出来ない。
そしてもしダメージを与えることが出来たとしても次のターンで回復されてまたドロー加速、更に最大HPが上がるオチが俺には見えた
『俺のターン!MPを4支払い後列中央に《バーンスライム》を召喚してターンエンドだ』
『ゴポポポ!』
《バーンスライム》5/3
『私のターンです!MPを4消費して《メタルゴーレム》を前列中央に召喚します!』
『ーーーーッ!!!』
《メタルゴーレム》0/3《アイアンボディ》《挑発》
《アイアンボディ》……3以下のダメージを1に抑える代わりに回復することが出来ないという特性を持った効果だ
だが何事にも例外というものは存在しており、回復でさえなければ効果は受け付ける為に最大HPの上昇という効果は普通受けるのだ
そしてこの盤面となると前衛のどちらかは倒されるが確実に片方は残る状態となる
中々えげつない……
『のこりのMPをアビリティポイントに変換してターンエンドです!』
「なぁ浅麦、これもし《メタルゴーレム》の方が残ったらどうなる?」
「俺もまともに相手したく無くなる化け物が完成します」
「うわぁ……」
先生すらも若干引き気味だ
正直どっちが倒されるかでこの後の動きが大きく変わってくるがどうでてくるか……