…………戦葉会長が生徒会室入り口で転んでから凄まじく気まずい空気が流れる
俺は桜木先輩に視線を向けるが彼は肩を竦めるだけだ
どうやら割とよくある事っぽいなコレ……
「あいたたた……」
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。
それにしても格好つかないなぁ……」
「むしろ君が格好ついたことなんて一度でもあったかい?」
「ちょ!?流石にそれは心外だぞ桜木!?」
どうやら桜木先輩と戦葉会長は結構仲が良いらしい
「さて、君達を我々が呼んだ理由は聞いているね?」
「はい、会長が俺とのデュエルを望んでいるとか……」
「本題はそっちだね、ただ一応建前としての理由ではあるが我々生徒会は君が今年入学した1年生の中でも一番の有望株だと思っている。
早い話未来の生徒会候補を実際に見てみたかったと言うのが建前としての理由だ」
「補足しておくと生徒会と言う組織は確かに最強の証でもあるけど強ければ良いというだけじゃない。
入るにはその人物の人格なんかも重要視されるんだ。
下手な人物になられて機密だのなんだのバラされる訳にはいかないからね」
今さらっと言っていたが機密と言っていたな……って事は少なくとも生徒会は俺達他の生徒が知らないこの学園の情報を知っていると言うことか……そしてその情報には守秘義務があると
「それで本音は?」
「私が戦いたかったから」
「色々台無しっス……」
本当にバトルジャンキーなんだな……
「さ、御託は良いわ。
勝敗後の賭けは特に何も設定しなくて良いから早く始めましょう」
そう言って戦葉会長はデュエルフィールドに自分のデッキをセットする
俺も今回の戦葉会長に合わせて組んできた専用のデッキをセットした
「桜木が言っていたこの学園の異端児……盗賊の職業の持つポテンシャルを誰よりも引き出している人……フフッ」
俺は桜木先輩を再度見るが今度は顔をそらされる
異端児て……いやまぁこの世界での盗賊の扱いがアレだから仕方ないっちゃ仕方ない……のか?
「胸をお借りします!」
「全力でぶつかってきなさい!」
俺達はデュエルフィールドを起動して意識をフィールドへと取り込ませた
コロシアムへと入場し、対面にいる戦葉会長を見ると全身を青をベースに金や赤といったアクセントが施された軽鎧を身に着け、頭部には羽飾りのような物をつけ、豪華な装飾の施された剣を腰に携えている
実際の映像記録で見た通りだな……
「本当に盗賊なんだな」
「選んだ理由は色々とありますがね、俺のスタイルに一番合っているんですよ」
「なるほどね……私は盗賊とのデュエル経験は全くないからお手並み拝見と行かせてもらうよ!」
やっぱりか……そう考えるとやはりこの学園で盗賊系の職業で入学出来たのは俺のみらしい
そのうち盗賊に対する偏見なんかも緩和されてくれりゃ良いんだがな……
「「デュエル!!」」
天秤の傾きは……よし、こっち側!
つまり今回は俺が先攻だ
正直助かった、戦葉会長相手に後攻で後手に回り続けてしまうと下手したらそのまま会長のペースになられてアッサリとやられかねなかった
流石にこの人を後攻でこっちのペースに持っていくのはかなり難しそうだからな
「俺のターン!
MPを1消費して前列左側に《デーモンシャドウ》を召喚してターンエンド」
『…………ッ!』
《デーモンシャドウ》0/1《隠れ身》
「ターンエンドしたことによって《デーモンシャドウ》の能力発動。
このユニットは自身の《隠れ身》が継続している間にターンエンドした場合攻撃力を1上昇させる」
『………!』
《デーモンシャドウ》0/1→1/1《隠れ身》
「ふむ、中々見ないカードだ。
それに加えて私への対策として見てもかなり面倒なカードだね」
俺が戦葉会長へと見出しました会長への勝ち筋、それこそが《隠れ身》だ
この能力を持っユニットは攻撃するまでの間相手の攻撃や能力の対象として選ぶ事が出来なくなる。
攻撃してしまえばのその能力も無くなるが無くなったとしても1ターンであれば盗賊の職業スキルを使って付与が可能だ
とは言え対象ランダムや全体攻撃、範囲指定が相手では意味がない為その辺の警戒は必須だがな
「私のターン。
MPを1消費して《旅立ちの聖剣》を装備する」
《旅立ちの聖剣》1/2
戦葉会長は特に装飾も殆んど入っていないシンプルな長剣を装備して攻撃を仕掛けてくる
「《旅立ちの聖剣》で浅麦君にダイレクトアタック!」
「ぐっ!?」
《浅麦 誠》HP30→29
《旅立ちの聖剣》1/2→1/1
「更に《旅立ちの聖剣》の攻撃時効果発動!。
攻撃時に私は《アビリティブースト:3》を得る!
《戦葉 優希》AP1→4
「ターンエンド!」
一気にアビリティポイントを稼がれた……!
やっぱり勇者のカードはどれもコレもコストの割に効果がやたらと大きい……!
「俺のターン。
コストとしてMPを2支払って後列中央に《卑劣なストーカー》を召喚してターンエンド」
『ヒッヒヒヒヒ!』
《卑劣なストーカー》3/1《隠れ身》
《デーモンシャドウ》1/1→2/1《隠れ身》
「ふむ、私のターン。
MPを2消費してアクションカード《聖剣へと続く道》を使用する。
デッキから聖剣と名の付くウェポンカードを1枚ドローする」
戦葉会長の目の前に水晶球のようなの物が出てきては強い光を放ち、大きな宝箱を生み出した
その宝箱から1枚のカードが現れていた戦葉会長の手へと渡っていった
「更に《旅立ちの聖剣》でダイレクトアタックしてターンエンド!」
「くうっ!?」
《浅麦 誠》HP29→28
《旅立ちの聖剣》1/1→破壊
「俺のターン。
コストとしてMPを3消費してアクションカード《盗まれた宝物》を使用する。
手札にランダムな宝物カードを3枚加える。」
俺の目の前に中身が入りきっておらず蓋が全く閉まっていない宝箱か現れ、その中身のうちの3つの宝物がカードとなって俺の目の前を浮遊し、手札に加わった。
加わったカードは3コストの《守護の宝物》、2コストの《封印の宝物》、1コストの《強化の宝物》だ
このカードはコストこそ低いが出てくるカードにもそこそこコストがある為にあまり好まれない盗賊カードだが、このカードの真骨頂は"デッキに入っていないカード"を手札に加えるという点にある
このタイプのカードであっても俺の盗むデッキはシナジーを発揮する為に盗む系のカードを全く入れていなかったとしてもこの手のタイプのカードで手札を増やすだけで
「《卑劣なストーカー》でダイレクトアタックしてターンエンド」
『ひひゃひゃひゃひゃひゃ!!』
「うっ!?」
《戦葉 優希》HP30→27
《卑劣なストーカー》3/1《隠れ身》→《隠れ身》消去
《デーモンシャドウ》2/1→3/1《隠れ身》
「私のターン。
コストとしてMPを3支払い《勝利の聖剣》を装備する!」
《勝利の聖剣》2/2
戦葉会長は今度は赤を中心として金の装飾の入った剣を装備する。
このカードも中々厄介な部類のカードだ。
「《勝利の聖剣》で《卑劣なストーカー》へと攻撃する!
ハァァァアアア!!」
『ヒャァァァァアアアア!?!?』
《戦葉 優希》HP27→24
《勝利の聖剣》2/2→2/1
《卑劣なストーカー》3/1→死亡
「敵ユニットを撃破した事により《勝利の聖剣》の能力発動!
カードを1枚ドローして《アビリティブースト:2》を得る!」
《戦葉 優希》AP12→14
「ターンエンド」
「俺のターン。
コストとしてMPを4払い《メタルゴーレム》を前列右側に召喚する。」
『ーーーー!!』
《メタルゴーレム》0/3《挑発》《アイアンボディ》
いい加減全体や範囲指定のカードが飛んでくるリスクが増えてくる。
仕掛けるなら今だろうな
「《デーモンシャドウ》でダイレクトアタック。」
『ーーーー!!』
「きゃっ!?」
《戦葉優希》HP24→21
《デーモンシャドウ》3/1《隠れ身》→《隠れ身》消去
「アビリティポイントを10消費して職業アビリティ《隠れる》を使用する。
《デーモンシャドウ》を
《デーモンシャドウ》3/1→3/1《隠れ身》
《デーモンシャドウ》3/1→4/1《隠れ身》
「私のターン。
MPを4消費してアクションカード《勇者の光》を発動。
敵ユニット全員を《封印状態》にする!」
《デーモンシャドウ》4/1《隠れ身》→0/1《封印》
《メタルゴーレム》0/3《挑発》《アイアンボディ》→0/3《封印》
戦葉会長からかなり眩い光が放たれ、光で出来た鎖が《デーモンシャドウ》と《メタルゴーレム》を雁字搦めにして捕らえた
《封印》……ユニットに付与された能力、元々持っている能力、強化含めあらゆる能力を消去して能力無しになる状態
なるほど……案の
「《勝利の聖剣》で《デーモンシャドウ》を攻撃!」
『ーーーーッ!?!?』
「《デーモンシャドウ》を撃破した事により《勝利の聖剣》の効果発動。
カードを1枚ドローした上で《アビリティブースト:2》を追加!」
《デーモンシャドウ》0/1《封印》→死亡
《勝利の聖剣》2/1→破壊
《戦葉 優希》AP18→20
「ターンエンド」
一応戦葉会長の場にはカードは何も存在していない状態ではあるがアビリティポイントが既に20も溜まっている為にいつ職業アビリティが飛んでくるか分からない
俺の場は
HPは今の所俺が上だが確か会長のデッキには強力な回復能力を持ったカードが何枚かあった為にまだ全く油断できない
こっちの準備が終わるまで耐久しきれるかかなり怪しいなこれ……