何故違う職業のカードを使えるのかは今はそこまで重要じゃない、こっちは勝ってから問い詰めれば済む話だ
だが問題はそのカードの状態だ。
名前の枠には明らかにおかしい"侵食"という字に加えて能力として付与されている《侵食》
俺はこんな能力を聞いたこともない
何をしてくるか不明な以上下手な対応は出来ないな
「ターンエンドと同時に《侵食:守護騎士像》の《侵食》の能力発動!
攻撃力を+1してHPの最大値を−1する!」
『ーーーーーーーーッ!!!』
《侵食:守護騎士像》1/4→2/3《挑発》《侵食》
《侵食:守護騎士像》が声にならない悲鳴を上げながら黒いオーラを纏い咆哮する
その身体に刻まれた黒い罅のような模様は更に全身に広がるように刻まれており、明らかにおかしい状況なのが一目で分かる
俺は一体何に巻き込まれようとしているんだ?
「俺のターン、MPを2消費して後列中央に《潜伏シーフ》を召喚してターンエンド」
『フッ……。』
《潜伏シーフ》2/1《隠れ身》
「ターンエンド時効果発動、《デーモンシャドウ》の攻撃力を+1、そして《潜伏シーフ》の効果発動。
このユニットが《隠れ身》状態ならターン終了時に自分以外の《隠れ身》ユニットの枚数分ランダムな相手にダメージを振り分ける」
『ケケケッ!』
『ーーーーッ!?』
《侵食:守護騎士像》2/3→2/2《挑発》《侵食》
《デーモンシャドウ》1/1→2/1《隠れ身》
現在俺のフィールドにいる《潜伏シーフ》以外の《隠れ身》ユニットは一体、そのため1ダメージがランダムな相手に与えられる。
そしてこのカードの特徴である"ランダムな相手"と言うのはプレイヤーも含めるため、こちらから積極的に攻撃する理由は何一つない
「私のターン、コストとしてMPを3消費し前列左側に《重鎧の闘士》を召喚する」
『ウォォォォオオオオオ!!!』
《重鎧の闘士》2/4《挑発》《勝鬨》
さっそく《勝鬨》持ちのユニットが出てきたか……しかも《挑発》まで持っている辺りかなり面倒なユニットだ。
倒すなら耐えられない攻撃で相打ちに持っていくのが理想か
「《侵食:守護騎士像》でダイレクトアタック」
『ーーーーーッ!!!』
「ぐっ!?」
《浅麦 誠》HP30→28
なんだ今の痛み……!
明らかに今までデュエルフィールドで受ける攻撃は強い衝撃こそあれど痛みは無かった
どう考えてもあの黒いオーラを放つ《侵食》カードが原因としか思えないがどうなっているんだ?
「この《侵食》カードは我々がある御方よりお預かりしているカードを用いて作られた特別なカードだ。
このカードを用いればはあらゆる職業の枠を超えて使えるようになる素晴らしいカードへと生まれ変わるのだよ!」
我々、それにある御方……ねぇ
少なくともこいつらが組織立って動いている事とかなり上の立場の人間がいるのが確定した
それにセリフから察するに《侵食》カードを生み出す事が出来るカードは複数枚あるのは確実だ。
下手にこんなもんばら撒かれれば大混乱がおきてもおかしくない
最悪大規模なカードの奪い合いに発展するだろう
面倒な事をしてくれる……!
「ターンエンドと同時に《侵食:守護騎士像》の《侵食》の効果発動。
攻撃力を+1してHPの最大値を−1する。」
『ーーーーーー!!!』
《侵食:守護騎士像》2/2→3/1《挑発》《侵食》
守護騎士像に入った黒い罅は更に深く入り、元々ボロボロだった身体がさらに崩れている
しかも崩れた箇所は黒く染まっており、まるで消滅してしまいそうな雰囲気がある
「俺のターン、MPを2消費して前列左側に《潜伏シーフ》をもう1体召喚、さらに後列右側に《デーモンシャドウ》を召喚してターンエンド。」
『ククッ』
『ーーーー!!』
《潜伏シーフ》2/1《隠れ身》
《デーモンシャドウ》0/1《隠れ身》
「ターンエンド時効果発動。
《デーモンシャドウ》2体の攻撃力を+1して《潜伏シーフ》の能力発動。
自分以外の《隠れ身》持ちユニットは3体いる為3ダメージを《盗賊シーフ》の枚数分、つまり2回振り分ける!」
『『シッ!』』
『ーーーーッ!?』
『ぐぅ!?』
「ガッ!?」
《デーモンシャドウ》2/1→3/1
《デーモンシャドウ》0/1→1/1
《賭操 闘夜》HP30→28
《侵食:守護騎士像》3/1→消滅
《重鎧の闘士》2/4→2/1《挑発》《勝鬨》
とりあえずこちら側の盤面の準備は殆ど完了し、後はターンを待つだけとなったがそれよりも気になることがある。
《潜伏シーフ》の攻撃によりHPを全損させられた《侵食:守護騎士像》は全身を真っ黒に染めて塵になるように消滅していった
通常の死亡時のエフェクトと全く違う、それに判定も死亡では無く消滅になっている
「チッ、また何処かで調達しなければな。」
「まるで消耗品みたいな言い方だな?」
「事実消耗品さ。
この《侵食》カードは死ねばカードとしてはもう使い物にならなくなって消滅してしまうからね。」
「そんな奴にユニークレアが渡っても宝の持ち腐れだと思うがな。
たった1回の勝負で今後の勝負では使い物にならなくなるカードに何の価値がある?」
「ふっ、ならば死なせないように立ち回れば良いだけだ。
我々は全ての職業のカードが使えるのだぞ?」
はい馬鹿、他の職業使えた所で一撃でやられるような攻撃や即死系の効果は防げないだろうに……
それに無理にそんな立ち回りをした所でどう足掻いても足を引っ張って勝ち目が余計に無くなるのが目に見えている
ユニークレアは確かにどれも強力なカードばかりだがそれだけを守った所で意味がない、時にはそれを捨て駒にするくらいの運用をしなければいけない時もあるのだ
「私のターン。
MPを3消費して《侵食:アイアンナイト》を前列右側に召喚」
『ーーーッ!』
《侵食:アイアンナイト》2/4《被ダメージ−1》《侵食》
前列右側の魔法陣から鋼鉄の全身鎧に黒い亀裂の入ったような容姿のユニットが現れる
やられた、確かに《被ダメージ軽減》はユニット同士のぶつかり合いで有利な能力だ。
この能力持ちは『決闘者』のデッキには基本的に含まれていない為に採用される可能性を捨てていたが別の職業のカードが使えるのなら話は別だ
少々面倒だ、《侵食》による最大HP減少でターン制限があるとは言え《被ダメージ軽減》の能力で1ダメージを指定回数振り分ける《潜伏シーフ》の能力持ち攻撃はダメージを与えることは出来ない
「《重鎧の闘士》でダイレクトアタック!」
「くっ……?」
《浅麦 誠》HP28→26
どうやら異常事態を起こしているのは《侵食》カードのみのようだ
「残りMPをアビリティポイントに変換してターンエンド。
ターンエンドと同時に《侵食:アイアンナイト》の《侵食》を発動する」
《侵食:アイアンナイト》2/4→3/3《被ダメージ−1》《侵食》
「俺のターン。
MPを4消費してアクションカード《眠りの吹き矢》を使用する。
《侵食:アイアンナイト》を指定して1ダメージを与えて次のターンの
『………ッ!?』
《侵食:アイアンナイト》3/3→3/3《被ダメージ−1》《侵食》+《行攻撃不可》
「ターンエンドと同時に能力発動。
《デーモンシャドウ》の攻撃力を上昇させて《潜伏シーフ》の能力により1ダメージを6回振り分ける!」
『ォォォオオオ!?!?』
「くっ!?」
《デーモンシャドウ》3/1→4/1《隠れ身》
《デーモンシャドウ》1/1→2/1《隠れ身》
《賭操 闘夜》HP28→27
《重鎧の闘士》2/1→死亡
《侵食:アイアンナイト》3/3→3/3《被ダメージ−1》《侵食》《攻撃不可》
運が悪いな、ダメージ振り分けはその仕様上死亡してHPが0になったユニットにはダメージは振り分けられない為6回の内4回が《侵食:アイアンナイト》に持っていかれた事になる。
「私のターン、MPを5消費して前列中央に《侵食:重装騎士団長・アハト》を召喚する!」
『ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』
《侵食:重装騎士団長・アハト》2/8《挑発》《被ダメージ−1》《侵食》
相手側の前列中央からかなり重厚な黒い亀裂の入ったフルプレートメイルに全身を包みハルバードと大盾を構え、目の部分が深紅に光った重騎士が現れる
今度は《侵食》持ちのユニークレア、しかも騎士のユニークレアか!
それに加えてまた《被ダメージ軽減》持ち……かなり厄介なのが来てくれたな
「更に《侵食:重装騎士団長・アハト》の召喚時能力発動!
このユニットが召喚された時敵ユニット全ての攻撃力を−1する!」
『ォ゛ォ゛ォ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
『『ーーーッ!?』』
『『ダッリィ……』』
《デーモンシャドウ》4/1→3/1《隠れ身》
《デーモンシャドウ》2/1→1/1《隠れ身》
《潜伏シーフ》2/1《隠れ身》
《潜伏シーフ》2/1《隠れ身》
「ターンエンドと同時に《侵食》の能力発動!
最大HPを減少させて攻撃力を+1する!」
《侵食:アイアンナイト》3/3→4/2《被ダメージ−1》《侵食》《攻撃不可》解除
《侵食:重装騎士団長・アハト》2/8→3/7《挑発》《被ダメージ−1》《侵食》
少々面倒だな、しかも最大HPがかなり高いのもあり、放置しすぎればこっちのHPをとてつもない量減らされてしまう今は3ダメージで済むためを全然許容範囲ではあるのだが5以上まで増えられてしまうと流石に致命的だ
それに《侵食:アイアンナイト》めいい加減放置するには厳しい攻撃力となっているために優先的に倒さなければならない
そうなるとここから先は相手の動き次第だな……とはいえ相手の手札に圧をかけられるユニットといえば1枚しか無い
そろそろ畳み掛けないとだな